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登録試験ってもともと三分で終わるものなんですよね?

 冒険者見習いは、ギルド登録試験という特殊な試験を突破することでようやく冒険者として認められる。


 その試験を受けるかどうかは本来自分で決めるものだが、マスタースライムを倒した俺は何故かギルドの職員達から試験受けろと詰め寄られていた。


「マスタースライムなんて、並の冒険者じゃ倒せない相手なんだよ? 君はとんでもなく優秀だ、是非冒険者になってくれ!」

「その通りです! 冒険者ギルドは昨今人手不足で、あなたのような人を待ち望んでいたのですよっ!」


 十歳に詰め寄る大人達に熱が入りすぎて、ちょっとというか大分怖い。前世の記憶があるとはいえ俺十歳だし、勢いに呑まれて泣いちゃいそうなんですけど……。どんだけ人手不足なんだ。


 だが俺が大人に褒められまくっている様子が羨ましく映ったのか、パーティーメンバー達はいきなり口を出してきた。


「あのっ! 大きなスライムを倒したのはレインだけじゃないですよ!? 俺達もちゃんと戦いました!」

「あ、やっぱり君達も一緒に戦ったのね?」

「その通りです!」


 ずっと気絶してた彼らが、一緒に戦っていたと強く主張する。まぁゲイルは毒矢として活躍してくれたし、俺はわざわざ否定しないけど……。


「素晴らしいわ! 優秀な子供が五人も登録試験を受けてくれたら、冒険者ギルドは安泰よ!」

「えっ」


 そりゃそうなるだろ。


 というわけで、嘘をついたパーティーメンバー達もギルド登録試験を受ける事になってしまった。




「どうしよ……。なんで俺、あんな事言っちゃったんだろ……」

「本当よ。あんたのせいで私達まで試験を受ける事になっちゃったじゃない!」


 登録試験会場では、パーティーメンバー同士の醜い争いが行われていた。ゲイルが嘘をついた時に「やるじゃない!」みたいな顔をしていたファムも、めっちゃ怒ってる。


 ニアだけは相変わらず怖いくらい静かだけど、まぁ怒ってこない内は気にしなくて大丈夫かな……? ちなみに、レールはまだ寮で寝てます。


「まぁまぁ、五人で受けられるようになったんだから力を合わせて頑張ろうよ」

「はぁぁぁ? 一番の足手まといが何言ってんのよ! あんたがマスタースライムの死骸なんか拾わなきゃこんな事にならなかったでしょお!?」


 どうやらマスタースライムの死骸は拾い物だと思われてるらしい。あんな落とし物あるかよ。


「はい、そろそろ試験開始ですよー!」


 そんな風にギスギスしている俺達とは裏腹に、ギルドの受付嬢がめっちゃ上機嫌で声をかけてきた。皆が強いと思い込んでる顔だなこりゃ。


「あの……レイン君」

「ん、なんだいスフィ?」


 会場に二人の試験官がやってくると、スフィが緊張した様子で俺に声をかけてくる。

 彼女を危険に晒さないためにも、俺は試験を敢えて負けるつもりだったが……。


「一緒に、頑張ろうね!」


 目に力を込めてそんな事を言うスフィを見たら、そういうわけにもいかなくなった。

 大人の実力も正確には分かってないし、俺も本気で頑張りますかね。


「では試験、始めっ!」

「うおおおおおおお!」


 試験が始まると同時、俺とスフィを除いたパーティーメンバー全員が試験会場の中央に立つ冒険者に向かっていく。


 相手の実力も把握せずに突っ込むのは、あまり得策とは言えない。案の定、突っ込んでいった彼らは試験官の【爆速風】というスキルで吹っ飛ばされていた。


「スフィ、【盾膜】頼む!」

「うん、分かったよ!」


 俺がスフィにスキル発動を頼むと、彼女のスキルによって周囲に光の膜が張られる。これにより、内側での動きは鈍くなるが外からの攻撃を緩和できるのだ。


「ありがとう、これで安心して弓に集中出来る! 【技能装填】・【空握】・【弓術】!」


 守りが固まった俺は、皆が向かっていった試験官に向かって【空握】を付与した弓を放った。だがそれを見た試験官は不敵に笑う。


「へっ、俺に矢なんかが通用すると思うなよ? 射手が不人気職なのは何でだと思ってやがる! 【爆速風】!」


 どうやら先程使ったスキルで、矢を飛ばすつもりのようだ。でも……。


「既に見た攻撃の対策を、射手がしてない筈ないだろ?」

「うぎゃあっ!?」


 【空握】を付与した矢は試験官がスキルで吹き飛ばそうとした空気をも握って固定したため、そこまで影響を受けずに相手の体に刺さる。

 え、こんな簡単に刺さると思ってなかったから、手加減とかしてないぞ!?


「刺しちゃって大丈夫だったのか……? まさか試験官に初心者が選ばれてるとは思ってなかった……」

「調子に乗ってるようだが、後ろががら空きだぞ小僧?」


 そんな事を思ってると、後ろから鋭い声が聞こえてきた。もう一人の試験官は、どうやら【気配遮断】スキルを持つ忍者だったらしい。


「まぁ、気が付いてましたけど」

「何ぃっ!?」


 後ろから迫ってきた試験官に、俺は【背後射撃】・【散弓術】で同時に三本の矢を当てた。後ろをとって油断したのか、前ががら空きですよ試験官?


「今何が起こったの!?」

「嘘だろっ!? 背後射撃すら使いこなせる奴は少ないのに、三本の矢を同時に当てるとか意味分かんねぇ!」

「そもそも、【索敵】じゃ人は見つからないのにどうして当てられるんだ?」


 今の様子を見ていた観衆達が、驚きに目を見張る。確かに【索敵】では位置を特定出来ないが……。


「【盾膜】の空気の乱れで、位置くらい分かるさ。スフィ、ナイスだ!」

「バカなっ!? だが、射手ごときに俺の近接攻撃を捌けると思うなよ!」


 矢に刺された忍者は、気丈にも剣を振るう。だが、近くに寄れば射手は無力なんて初心者の発想だ。


 俺は【回し蹴り】で振り返りざまの攻撃をかましつつ、【風転撃】や【足払い】を付与した矢も使って相手の剣を弾き続けた。

 矢を腕のように使った俺に普通の攻撃が当たる筈もなく、彼は無数の矢に()()()()()()倒れる。三分もかからない試験だったな。


「そんな。中級冒険者二人が、こんなにあっさりと!?」

「というかあの射手、普通に近接戦してたぞ!? 射手の戦い方じゃねぇ!」


 なんかまた驚かれてるけど、射手だって近接戦くらい出来るだろ。

 え、というかこいつらが中級冒険者だと……?


 俺が受付嬢に目を向けると、彼女は目を伏せて答えた。


「今の、中級冒険者だったんですか?」

「はい……。そもそもこの試験、試験官を倒す事を想定されてないです……」


 どうやら試験内容を勘違いしていた俺は、倒せる筈のない相手を倒していたようだった。



レイン・エドワーズ

射手lv.5

【弓術】lv.198

【散弓術】lv.33

【高速装填】lv.53

【強制装填】lv.8

【技能装填】lv.20

【背後射撃】lv.22

【近接射撃】lv.25

【緊急回避】lv.15

【投擲】lv.70

【空握】lv.11

【投擲許容量増加】lv.15

【索敵】lv.98

【索敵範囲拡大】lv.17

【砥ぎ師】v.47

【足払い】lv.12

【回し蹴り】lv.15

【風転撃】lv.15

【浮遊】lv.30

【単独撃破】lv.3

【並行作業】lv.10

【鷹の目】lv.38

【消耗品再利用】lv.25

【強制収容】lv.17

【愛撫】lv.31

【創造】lv.1

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