超距離射撃
すいません、かなり遅くなりました…。
これまで放置し続けてきた課題ややるべき事がどんどん私を追い詰めています…(力ない笑み)
なんだかんだ天職を十三個まで得た俺は、《超距離射撃》のフリムトがいる地点へと向かっていた。
空中要塞やマリンドラゴンに乗って近づけば目立ちすぎるので、今は従魔であるワーウルフの背中に乗せてもらっている。
「ワーウルフだけずるいにゃあ、私もご主人様を背中に乗せたかったにゃ」
「私もです……。ってあれ? なんかワーウルフ異様に速くないですか?」
スフィとニアを背中に乗せて運んでくれているケットシーとサキュバスが、疑問の声を上げた。
それもその筈だ。騎士になった俺はワーウルフの背中に跨がっただけで【騎乗】スキルを習得し、そのレベルは走っている今も伸び続けているのだから。
「ちょっ……。私、段々と自分のスピードに目が追いつかなくなってきたんですけど!?」
「大丈夫だ。俺が体の傾き具合で動きを制御してるから、どこかにぶつかったりはしないよ」
「動きを完全にコントロールされてる時点で大丈夫じゃないっ……!」
ワーウルフが何やら悲鳴を上げていたが、心配しなくても、俺はPIOでドラゴンレースという竜を乗り回すレース大会でも上位を維持していた。
光速竜を乗り回す奴が増えてからは流石に安定して勝つことは出来なくなったが、それでも矢をばらまきながら走る俺の妨害戦術は数多のレーサーを撃墜してきたのだ。
「【騎乗】lv50……純派生スキル【自在騎乗】」
過去を思い出している内に、【騎乗】スキルが純派生した。【自在騎乗】というスキルを使うことで、俺はワーウルフの上に立つようにして騎乗する。
「ええっ!? なんでこのスピードの中で立ち上がって、振り下ろされないんですか!?」
「【自在騎乗】のお陰で、これでも騎乗してることになったからな。そんで、ちょっと足を遅めてくれ」
俺が頼むと、ワーウルフは少しだけ減速した。すると四足歩行で俺達を追っていたケットシーが追い付いてきたので、俺はワーウルフの上で横に寝そべるように倒れ、ケットシーの上に頭を乗っける。
それから二足歩行でスフィを背負ってきたサキュバスの肩にも、自分の足を乗っけた。
「よし、これでワーウルフとケットシーとサキュバスに騎乗したぞ! 【騎乗】の効果が皆に乗ったから、スフィ達も楽々運べるな!」
「いやいやいや、その姿勢のどこが騎乗してることになるんですか!? 私達の上で倒れてるだけじゃないですかっ!」
ワーウルフが突っ込んでくるが、実際みんな加速してるのだから文句はあるまい。俺達はもの凄い勢いで≪超距離射撃≫の元へと向かっていく。
「む、気付かれたか」
そんなスピード感で近付いていると、遠くの山の一点がピカリと光った。あれはフリムトのスキル【聖弾化】の光で間違いない。
俺は皆を守るために懐から空中要塞を出し、【守護術】を付与しながらぶん投げた。空中要塞はフリムトの攻撃によって砕けたが、空中要塞を盾扱いに出来たようで【盾術】を習得する。
「射程を伸ばしてる分、相変わらず威力は低いな」
「威力が低いってどこが!? 空中要塞が一撃で粉々になってるんだけど!?」
俺が今の攻撃を評すると、周りの皆が大声で叫んだ。
でもPIO民にしては威力が低いのは確かだ。フリムトのレベルなら、息を吹き掛けるだけでオリハルコンが砕ける域に達しているのが普通だし。
「でもだからこそ、今の俺でもなんとかなる……」
問題なのは、距離を詰めきれるかどうかの一点のみ。そのために、俺は騎士の天職を得たのだ。
「今行くぞっ、フリムト……! 【騎乗】スキル純派生、【物体騎乗】……!」
俺はこの短時間で二回目の純派生を達したスキルを使いながら、フリムトがいる方向に向かって弓を構えた。そこに一本だけ矢を番え、【千弓術】から純派生していたスキルを使う。
「【幻壁弓術】……!」
それは番えた矢を実体ある幻によって無数に横へと増やし、面を攻撃するスキル。
番えられる矢は一本だけに制限される代わり、その矢に付与した効果はコピーしたものにも適用される。
……つまり、無数の矢に簡単に効果を付与することが出来るのだ……!
「【強制装填】・【空術】・【強制装填】・【獣装術】・【強制装填】・【重力制御】・【強制装填】・【炎術】・【強制装填】・【過剰研刃】・【強制装填】・【空腕】・【強制装填】・【風転撃】!」
俺は一本に無数の効果を付与することで、その効果までもコピーした無数の矢を山に向かって放つ。
同時に俺は【物体騎乗】と【自在騎乗】を使い、その内の一本に「騎乗」した。
自分の放った矢に騎乗する射手、ここに誕生せり。
「≪やたらと前のめりな射手≫とは……俺の事だああああああっ!」
俺は以前の二つ名を叫びながら、無数の矢の上に現実ではあり得ない角度で立ちながら移動した。
フリムトは自分に向かってくる壁のような矢に向かって光線を放ちまくったが、俺の放った矢はどれも【空術】や【重力制御】をかけているので攻撃を弾き続ける。
「……っ! 【生命集約砲】!」
ただの攻撃では矢を防げないと分かったか、フリムトが周囲の生命をパワーに転換する大技を放ってきた。
だが、それも一発だけなら問題なかった。
「【中継矢】・【緊急回避】っ!」
【緊急回避】は、【中継矢】を使ったとしても本来は一回しか使えないスキルだ。しかし【幻壁弓術】によってコピーされている今なら、全ての矢が攻撃を避ける事も出来る!
山の生命力を軒並み吸い付くして放たれた極太の光線は、無数の矢がそれぞれ異常な軌道を描くことで避けきった。
「ばっ、馬鹿な……! だが、矢を撃たれたところで俺だって防御スキルくらい……」
「キュオオオオオオオオオオッ!」
フリムトは矢が俺ごと近付いてきても諦めなかったが、残念ながらここまで近付かれたところで相手に打つ手はなくなっていた。
俺が放った矢は【獣装術】でマリンドラゴンを纏わせていたので、彼を取り囲む矢は全てマリンドラゴン級の強さがあるのである。
「マリンドラゴン、【水流撃】だ」
「全ての矢が竜になってるだと!? その無茶さ……まさか≪やたらと前のめりな射手≫、いや≪千弓流≫、いや≪魔弓帝≫……」
「俺の二つ名全部言おうとしなくて良いよ」
俺の命令に合わせて、無数の矢から水流が放たれる。それはフリムトの魂を縛り付けていた魔物の肉体を破壊し、彼の魂を解放した。
「ふう、いっちょ上がり……」
「お、お前が……噂の子供か……?」
PIO民を倒せて安心していると、後ろから女性の声がかかる。
振り向くと、黒っぽいローブを着た女性が立って俺を見ていた。
「? あなたは……?」
「私は魔王。お前に軍を半壊させられた」
あぁ、俺が戦っていた魔王は女性だったのか。
魔王なら下手に力を貯められる内に第八形態くらいまで削っとこうと思いながら俺が弓を構えると、彼女は叫んだ。
「お前に恨みはあるが、それは後回しだ……。えらいことしちゃった、助けて……!」
迂闊にもPIO民という災厄を呼び出してしまった彼女は、目に涙を浮かべながら俺に懇願するのだった。




