技能と魔物と装備と仲間
「こいつ、フェニックスだったのかっ! 通常種と見た目が違うから抜かった……!」
吹っ飛ばされた俺は慌てて要塞の中央部に戻ろうとしたが、フェニックスは【翠炎】という固形化する炎を使って道を塞いできた。
この威圧感、これまでの魔王軍幹部とは一味違うぞ――!?
「我は魔王軍四天王が一人、スカイロードフェニックス。空の生命を司る天命そのものなり」
フェニックスはそう言い、【紫炎】を放ってくる。これは防御系スキルを無効化する炎だ。
「ぐっ、防御頼りのスキル構成だったら今ので死んでた……!」
俺は六刀流で使う剣それぞれに【高速振動】と【風転撃】を付与し、扇風機みたいな風で炎を掻き消すという荒業でなんとか事なきを得る。
だがどう考えても人間の体が耐えられる動きじゃないし、攻撃一つ一つにここまで体力を消費していたらジリ貧にも程がある……!
「一体、どうすれば……」
「レイン君っ! 今助けるっ!」
態勢を立て直す事も出来ない俺は少し動揺してしまっていたが、次の攻撃が来る前に明るい声がかかってきた。
同時に固形化していた【翠炎】が不可視の攻撃によって砕け、その奥から死神のような格好をした九歳児が飛び出してくるっ!
「てええええええいっ!」
ニアは自分に支援術をかけまくりながら、その余剰魔力でどんどん鎌の火力を増していく。
そして巨鳥のすぐ側まで来ると、スポーッン! と躊躇いもなく首を切った。
「ふがあ! ちょっ、汝に容赦はないのか……ぐぼっ!」
またも再生した首は、先ほど【翠炎】を壊してくれたニアのオリハルコンエアが地面に押しつけて潰した。
うわこの九歳児達、本当に容赦がない。
「う、嘘だろ汝ら……。やべぇよ、我の不死性見てここまで容赦なく殺してくる奴初めて見たよ……。児童の純粋さ故なのか!?」
さっきまで堅苦しい口調だったフェニックスが動揺のあまり砕けた口調になり、それを見て俺の心も落ち着いた。
こいつは空の王を名乗るだけあって回避力には優れているが、耐久力はそこまで高くない事が落ち着いた事でようやく分かる。
なら要塞に閉じ込めた時点で、俺達の優勢は揺るがない。
「ありがとう二人とも。君達のお陰で、俺も我を失わずに済んだ……」
「そう言いながら弓構えるのやめてもらってい……ふげぼっ!」
俺に弓で射られて、フェニックスが絶命する。
弓が効きづらいなら、千本くらい一気に叩き込めばいいだけなの忘れてたわ。
「フェニックスは長いこと経験を積んできた奴が多いし、何よりこいつは魔王軍の四天王らしい。大量の経験値が見込めるぞ」
「殺しても死なないなんて、最高の狩り場だねっ!」
「じゃあ時計回りにローテーションで倒していきましょうか」
「ひ、ひいいいいっ! つ、付き合ってられるか!」
倒す順番を和気藹々と話す俺達を恐れ、フェニックスが空中要塞から出ていこうとする。
だがさっき放った矢に【中継矢】で【空腕】を中継させる事で、フェニックスを空中要塞の中へ縛り付けた。逃がさないよ?
「そういやフェニックスって経験値の稼ぎの定番だったな。お世話になったのはPIO序盤だから、ちょっと忘れてたぜ」
「ひいいいいっ!? 定番って何!?」
言いながら、俺達は順ぐりにフェニックスを倒していく。職業レベルも一気に上がっていき、スフィもニアも大変満足そうだった。
【不死狩り】スキルのせいで、あと何回か倒したら死んじゃうのが寂しいところだ。
「くそおお! 不死鳥なのに死んでたまるかっ! 【黒炎】!」
【蒼炎】は相手の能力値を下げる炎だが、【黒炎】は純粋に火力の高い炎だ。防御力に不安がある現状、この至近距離で撃たれたら防ぐのは厳しい。
……だが、それはさっきまでならの話だった。
「腹減っただろ? あの炎を食いな、跳炎剣」
「ほえ?」
俺がファイアラビットの素材から作った跳躍剣をポイと投げると、スカイロードフェニックスの渾身の炎は剣に飲み込まれた。
黒炎の力を得て元気になったのか、跳炎剣は凄い勢いで飛び跳ねて要塞を飛び出ていく。
お調子者だなあの剣。お空に飛んでったけどわざわざ回収してあげないぞ?
「な、何だ今のは……!?」
「魔剣だよ」
狼狽えるフェニックスに、俺は丁寧に教えてあげる。
「【魔剣術】を使えばどんな剣も魔物と化し、成長性まで得るんだ」
「魔剣……!?」
「ああ、お前のお陰だよ。ありがとうな」
俺はフェニックスを弓や剣や魔物で倒しまくった事で各職業がlv.10を越え、それによって新たな職業を得たのである……!
「幻銃士。魔銃と魔弾が使用可能になり、魔弾は実体ある幻として一時的に増殖する」
「ぐああああ! 一発撃たれただけなのに体の中で弾が増えているうううう!?」
「もちろん魔剣士でもある。そういや知ってたか、この空中要塞って聖剣なんだぜ?」
「脚が……空中要塞に飲み込まれている……!?」
「調教師は獣装士に派生させた。従魔と一時的に合体できる」
「メタルスパイダーと合体したから糸状に分散することが出来、尚且つそれによって炎を避けているだとおおおお!?」
すげぇなこいつ、全職業の特徴を口で説明してくれるじゃん。最後とか疲れすぎて完全な説明口調じゃん。
四天王として律儀に役目を果たすフェニックスの勇姿に感動していると、スカイロードフェニックスは叫び始めた。
「【過剰炎】っ!」
このままでは死ぬと身に染みたスカイロードフェニックスは、とうとう自分に継続ダメージを与える大技を使って空中要塞の拘束を抜けた。
そのまま【空腕】も振り払い、空中要塞を脱する!!!
「はあっ、はあっ、この我が……ここまで追い詰められるなど……。今度こそ必ず、最高の空中部隊を作って復讐を……!」
「逃げられるとでも?」
呻きながら飛ぶフェニックスの隣に立って、俺は笑顔で尋ねた。
「汝……どうやって飛んで……」
「マリンドラゴンと合体して、空中の水分を泳げるようになってんだ。飛んでるように見えるなら、そりゃ俺の泳ぎが上手すぎるからだな」
「意味が分からないっ!!!」
俺の泳ぎ自慢が不快だったのか、スカイロードフェニックスが叫ぶ。
でもどんなに加速したところで、水泳をかじってた俺からフェニックス如きが逃げる事は出来ないっ!
後ろからは巨大なオリハルコンエアアーマーを纏ったニアが、スフィを手に持ちながら歩いてこちらを追ってきている。
「ううううううう、だがっ! 泳ぎながらであれば弓は撃てまい!」
「【空腕】使えば撃てるけど……まぁ、精度が落ちるから微妙だな」
「ふふ、そうだろう! ならば空において無限の持久力を持つスカイロードの私が逃げ切れると……」
「だから、もっと良い手段がある」
俺はそう言って、ポケットから凝縮された空間を取り出した。
【強制収用】の純派生スキル【空間圧縮】により、色々なものを詰め込んだ空間を圧縮して持ってきていたのだ。
俺はそれを無造作に投げてから、【空間圧縮】の効果を解除した。
「ふあっ、……ふあっ」
「空中要塞が一つだって、誰が言った?」
フェニックスの進路を遮るように現れたのは、十二基の空中要塞。魔剣化したそれぞれの空中要塞が、フェニックスをすりつぶすためにどんどん近付いてくる。
前には要塞。後ろからは空を歩く幼女。隣には俺。
完全に絶望したフェニックスに向かって、俺は言ってやった。
「ありがとうな、フェニックス。お前がくれた経験値、決して忘れない」
「あわっ、あわっ、あわわわわわわっ!」
俺が囁くと、フェニックスは恐怖のあまり首を高速で振った。
恐怖により【魔王の血脈】が純派生し、【王位継承】を習得。このスキルがある状態でこいつを倒せば、俺もスカイロードになっちゃうね。
「お礼に見せてやるよ」
【強制装填】を使うと、自作の魔銃に空中要塞の一つがスルスルと入り込んだ。それから銃口をフェニックスに向けて、俺は引き金をひく。
「これが……パワーインフレだ」
空中要塞を撃たれた不死鳥は空中要塞に激突し、そのあと空中要塞にすり潰されて爆散した。
レイン・エドワーズ
幻銃士lv.3/射手lv.12/魔剣士lv.3/剣士lv.11/獣装士lv.3/調教士lv.12/魔人lv.5/絶空王lv.1
【幻銃術】lv.22
【弓術】lv.281
【散弓術】lv.102
【爆散弓術】lv.4
【千弓術】lv.58
【幻壁弓術】lv.1
【高速装填】lv.57
【自動装填】lv.30
【強制装填】lv.46
【技能装填】lv.39
【背後射撃】lv.22
【音速矢】lv.19
【中継矢】lv.12
【近接射撃】lv.25
【魔剣術】lv.11
【剣術】lv.128
【遠隔剣術】lv.50
【剣域拡張】lv.17
【閃光剣】lv.6
【剣防御】lv.8
【瞬突】lv.15
【回転斬り】lv.38
【加重剣】lv.2
【大剣術】lv.4
【超大剣術】lv.5
【獣装術】lv.13
【調教】lv.41
【魔物保有数向上】lv.48
【従魔覚醒】lv.37
【従魔活性化】lv.42
【魔人化】lv.15
【空術】lv.1
【緊急回避】lv.38
【投擲】lv.93
【空握】lv.51
【空腕】lv.17
【投擲許容量増加】lv.24
【索敵】lv.135
【索敵範囲拡大】lv.31
【弱点捕捉】lv.27
【砥ぎ師】v.51
【過剰砥刃】lv.35
【足払い】lv.28
【回し蹴り】lv.39
【風転撃】lv.48
【浮遊】lv.58
【浮動】lv.1
【単独撃破】lv.34
【並行作業】lv.43
【鷹の目】lv.26
【消耗品再利用】lv.25
【強制収容】lv.62
【空間圧縮】lv.31
【愛撫】lv.72
【高速振動】lv.37
【創造】lv.98
【素材調合】lv.42
【魔王の血脈】lv.56
【王位継承】lv.15
【狙撃】lv.27
【頑丈】lv.18
【一極集中】lv.10
【熱耐性】lv.3
【魔物合成】lv.43
【俊足】lv.9
【威圧】lv.32
【夜の声】lv.5
【魔力流】lv.12
【恐怖吸収】lv.48
【闇属性攻撃力上昇】lv.2
【水泳】lv.45
【剛腕】lv.43
【不死狩り】lv.22
これにて三章完結&一章から三章までで一編完結となります!この回を書きたくて一章から三章まで頑張ってきました…!
少しでも面白いと思っていただけたら、下からブックマークや評価ポイントをお願いします!…お願いします!(切実)




