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唯一の癒し担当

 【並行作業】スキルを覚えた翌日。血気盛んな俺のパーティーは、またも冒険者見習い用のクエストを受けることになった。


「えー! 今日レールいないのぉ、レインがいてもつまんなぁい!」

「何でおめぇが代わりに風邪ひかなかったんだよ、このクソが」


 しかし昨日の夜にレールをぼこして動けなくしまったので、パーティーメンバーには彼は風邪で寝込んだと偽って伝えた。皆の反応が悪くなるのは分かってたけど、代わりに風邪ひけとか無茶すぎない?


 レールがいない理由だけ聞くと俺の言葉には誰もが興味を失い、皆クエストの目標地点に向かって歩いて行く。まぁ俺は前世の記憶があるから、嫌なガキだなぁとしか思わないんだけども。……思わないんだけどもっ!


「あの、レイン君……。昨日はごめんね、森に置いて帰っちゃって……」


 とか思ってたら、隣から控えめな声が届いてきた。

 そっちを向くと、青い髪の小柄な少女スフィが俺の隣で申し訳なさそうな顔をしている。


 俺達のパーティーは総勢7人いて、スフィもその内の一人だ。他のメンバーは俺の事をゴミか何かだと思っているが、彼女だけは良心的で俺の事を気遣ってくれる。


「スフィは謝らなくていいよ。俺を置いていこうとしたのは、あくまでニア達だし」

「で、でも、私も残れば良かったなって、後から思って……。ほんとごめんね、レイン君」


 俺がかぶりを振ると、スフィは泣きそうになりながら謝ってくる。どうやら俺を置いていこうとしたニア達に反抗できなかったのを、今でも凄く気にしているようだ。良い子だわ……。


 てかなんで悪くないスフィが謝って、ニア達が平然と俺よりレールが良いなんてほざいてんだよ。もうあんまり気にしてなかったけど、なんか腹立ってきたな。


「もう気にするなって。ニア達に逆らうのが怖いのは分かるし、俺も無事に帰って来たしな」

「あ、ありがと。……ねぇレイン君、ちょっと雰囲気変わった? あ、あの……格好、いいね」


 俺が微笑みかけるとスフィの不安そうな表情は和らぎ、それどころか頬を若干赤く染めてそう言ってくれた。


 ぐっ。か、可愛い……! 32歳だった前世の記憶があるのに、ちょっと9歳児の笑顔にときめいてしまった。

 俺の体は10歳だし、心も10歳と32歳の間くらいになってるのか? いやどちらにしてもロリコンだよな……。


 俺はちょっと複雑な気分になりながらも、スフィは危険から守ってあげたいなと思うのであった。




「着いたわよ、ここがスライムの狩場ね」

「へへっ、腕が鳴るぜぇ!」


 鉱山のような場所に辿り着くと、ニアや他のパーティーメンバー達が活気づいた。小学生だけでこんな鉱山に出向くとか、ほんとPIOの世界ならではって感じするよな……。


 前世で寂しい子供時代を送っていた俺は子供同士での探検とかいう青春の在り方に憧れていたので、ちょっと感慨深い。だが俺の気持ちとは裏腹に、ニアは俺に向かって言った。


「んで、あんたは足手まといだからついてこないで」

「は、はぁ!? 足手まといってどういうことだよ!?」

「あんたの足に合わせてたらたくさん狩れないのよ。あんたみたいな役立たずに報酬を分けるのも嫌だし、私達だけで行くわ。戦いたいなら一人で戦って」


 酷い言い分だ。てか射手なんか要らないって思ってるかもだけど、いないと結構大変だからな?


「わ、私もレイン君と残るよ……!」


 俺が顔を顰めていると、突然隣から意を決したような声が上がった。


 昨日俺を放置していたことを本当に気にしていたようで、スフィは怯えながらもニアに進言したのだ。良い子すぎる……!


「そう。まぁあんたも愚図だからいらないわ」

「レールがいないのは痛手だけどなぁ……」


 だがスフィの言葉を聞いたニア達は何を思うでもなく、たった4人で鉱山の中へと入っていった。10歳前後なのに自信ありすぎだろ。

 好き勝手言うニア達に怒りを覚えながらも、俺は一緒に残ってくれたスフィに感謝した。


「ありがとなスフィ。俺のために残ってくれて、凄く嬉しいよ」

「う、うん……!」


 あまりにも愛らしかったので、身体年齢はほぼ同じなのに思わずスフィの頭を撫でてしまう。するとスフィは顔を真っ赤にしながらも、ニヘへと嬉しそうな笑みを浮かべた。可愛い……!

 

「でも私、ニアちゃんが言ったように愚図だから。私だけ残っても、ちゃんとスライムと戦えないかも……」

「あぁ、それについては心配しなくて良いよ。スフィは愚図なんかじゃないし、それに……」


 俺はそう言いながら、【索敵】と【弓術】と【散弓術】を同時に使った。すると敵の位置が正確に分かるので、俺は鉱山の外から同時に何本も矢を放って中にいるスライムを何体か倒す。【弓術】のレベルが高いから出来る芸当だね。


 ゲーム時代から鍛えた弓の技術が高かったお陰か、【鷹の目】という命中率UPスキルも手に入れる事が出来た。


「今の俺なら、スライムなんかに引けをとらないさ」

「す、凄い……!」


 ダンジョンの外から敵を倒すという荒業あらわざを見せると、スフィの目からは不安の色が薄まっていたのだった。



レイン・エドワーズ

射手lv.4

【弓術】lv.132

【散弓術】lv.15

【高速装填】lv.30

【近接射撃】lv.23

【緊急回避】lv.15

【投擲】lv.52

【空握】lv.5

【投擲許容量増加】lv.15

【索敵】lv.85

【索敵範囲拡大】lv.12

【砥ぎ師】v.47

【足払い】lv.10

【回し蹴り】lv.7

【風転撃】lv.5

【浮遊】lv.1

【単独撃破】lv.3

【並行作業】lv.10

【鷹の目】lv.1

次回は19時辺りに投稿予定です。

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