魔王軍vs魔物軍団 後編
「狼狽えるなっ! まだ勝機はある!」
襲い来る恐怖は止まらず、何一つ希望はない。
――絶望的な状況にあった魔王軍だったが、一匹の魔物だけは気概を失っていなかった。
自分の首を小脇に抱えた騎士、デュラハン。彼は首を斬られても生を諦めない程の根気強さからか、まだ折れていない心で仲間を鼓舞した。
「街を偵察していた先見隊の情報によれば、奴はマリンドラゴンを従えていた。しかしここは陸地で、マリンドラゴンは戦えない!」
「そうかっ! ドラゴンがいるよりはマシと思えば、かなり気が楽になるな!」
「我々は戦場選びの時点で相手の主力を潰していたのか! 流石はデュラハン様!」
気休めではあるが、戦場においてはそれも大事な事だ。一人だけ馬に乗っていたからそうだとは思っていたが、周りの反応からしてあのデュラハンが魔王軍幹部なのだろう。
彼の言葉で気概を取り戻した魔王軍が、再び反撃を始める。
「あー、でも……。それは間違ってるぞ」
やる気を出したところなので申し訳なかったが、俺は真実を教えてやることにした。
――ゆっくりと、俺は空を指差す。
見上げると、視界の四隅にはスケルトンの頭が見える。だが視界の中央には……竜の姿があった。
「え、な、なんっで……」
「俺は一回、マリンドラゴンに空中の水を伝って移動させたからな。【従魔覚醒】したら、空気中の水分を泳げるように進化しちゃった」
俺が言うと、魔王軍の一人が口を開く。
「それってただのドラゴ……」
空気の読めない事を言った彼は、空からの【水流撃】によってこの場から消滅した。
「ふぇっ、マリンドラゴンいた……」
不屈のデュラハンが空を見上げ、さっきまでとは比べ物にならないほど弱々しい声を出す。
心の折れた音が聞こえた気もするけど、まさか首が切れてても諦めない奴がこんなところで諦める筈もあるまい。ここからが俺達の正念場だ。
「ケットシー! サキュバス! ワーウルフ! 【従魔覚醒】だ!」
「どんな壁でも歩けるようになった上に身体能力が10倍アップにゃ! ついでに【魚類特効】も得たにゃ!」
「目を見ただけで相手の精気を吸えるようになりましたよ! 雑魚は勝手に乾き死にます!」
「太陽が満月扱いになりました! ついでに遠吠えが空気砲になったので遠くの敵も倒せます!」
経験を溜めていたケットシー達に【従魔覚醒】を使うと、元から強い彼女達もワケわからんほど強くなっていく。
固まっている敵も上空からマリンドラゴンに狙撃され、平野にも関わらず溺れ死んだ。前回の五倍いた筈の魔王軍はあっという間に殲滅され、残るはしぶといデュラハンただ一人となる。
「お前を倒すのは、もちろんこいつだ……」
俺はそう言って、目立たないところでめちゃくちゃ相手を倒していたスライムを呼び寄せる。
しかも相手がデュラハンただ一人になったので、デメリットが多いあのスキルを解禁した。
「【一極集中】……」
「なっ、まずい……!」
こちらに秘策があると見たのか、デュラハンが馬を使って逃げ始める。弓だと当てられなかった時のリスクが大きいが、今から一極集中するスキルならその心配もない。
「【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】・【調教】っ!」
【調教】lv.134×18=【調教】lv.2412!
【調教】の効果で一時的に強化されたスライムは、まず下半身と地面が一体化した。
柔軟性を極めた結果、自他の境が曖昧になったのだ。もっとレベルを上げればこの魔物は空間そのものとなるが、そこに至るにはもう少し時間がかかるだろう。
「フィッ、フィイイイイイイイイッ!」
スライムが鳴くと、体に纏う鎧が顔に集中して砲塔の形を成す。それから砲塔をデュラハンのいる方向へと向けると、スライムは叫んだ。
「【岩石凝縮命塊秘境】っ!」
「しゃ、喋ったあああああああああ!?」
スライムが人語を操るのと同時、俺達の立っていた平野の草木が一瞬にして枯れ果てる。これは、地面に宿っていたエネルギーを全てスライムが掌握した証拠。この地平は今や、スライムそのものなのだ……!
「うがああああああっ! なんっ、だこれはっ!?」
馬で全力疾走していたデュラハンは、地面が唐突にぬかるんだ事でバランスを崩した。
そうして足止めされている間に、スライムのように滑り気のある地面が何本もの拳を形作ってデュラハンを殴り続ける。
「やめろっ! 一体俺はっ、何と戦っているんだっ!」
剣で地面を切ろうとしても、ぶよぶよのそれを切り刻むことは出来ない。しかも地面の攻撃を受ける度、デュラハンはかなりの勢いで石化していった。
魔王軍幹部は状態異常への耐性も高いはずだが、自他の境界すら壊すスライムにとってそんなものないも同然なのだ。デュラハンはとうとう、全身を石にされてしまった。
「これで、チェックメイトだ」
地面に埋まったような姿のスライムが、イケボで宣言する。その途端、頭の砲塔が揺れ動き……。何かが発射された様子もないのに、石となったデュラハンが大きな音を立てて木っ端微に砕けた。恐らく、凝縮したエネルギーを撃ちだして攻撃したのだ。
首を斬られて死なないデュラハンでも、命を石にされた上で粉々にされれば復活はしないだろう。
「スライムって育てたらあんな事になっちゃうの……?」
「レインの魔物軍団、普通に魔王軍より強いじゃない……」
魔物軍団を見たスフィとニアが、驚きを隠せない様子で言った。どうやら俺は、魔王軍より強い魔物軍団を作ってしまったようだな。
レイン・エドワーズ
射手lv.6/剣士lv.5/調教士lv.6/魔人lv.2
【弓術】lv.273
【散弓術】lv.102
【爆散弓術】lv.4
【千弓術】lv.49
【高速装填】lv.57
【自動装填】lv.30
【強制装填】lv.46
【技能装填】lv.39
【背後射撃】lv.22
【音速矢】lv.19
【中継矢】lv.12
【近接射撃】lv.25
【剣術】lv.123
【遠隔剣術】lv.35
【閃光剣】lv.1
【剣防御】lv.8
【瞬突】lv.15
【回転斬り】lv.38
【加重剣】lv.2
【大剣術】lv.4
【超大剣術】lv.5
【調教】lv.41
【魔物保有数向上】lv.48
【従魔覚醒】lv.37
【従魔活性化】lv.42
【魔人化】lv.15
【緊急回避】lv.38
【投擲】lv.93
【空握】lv.51
【空腕】lv.12
【投擲許容量増加】lv.24
【索敵】lv.135
【索敵範囲拡大】lv.31
【弱点捕捉】lv.27
【砥ぎ師】v.51
【過剰砥刃】lv.35
【足払い】lv.28
【回し蹴り】lv.39
【風転撃】lv.48
【浮遊】lv.58
【浮動】lv.1
【単独撃破】lv.34
【並行作業】lv.43
【鷹の目】lv.26
【消耗品再利用】lv.25
【強制収容】lv.46
【愛撫】lv.72
【高速振動】lv.37
【創造】lv.72
【素材調合】lv.24
【魔王の血脈】lv.49
【狙撃】lv.27
【頑丈】lv.18
【一極集中】lv.10
【熱耐性】lv.3
【魔物合成】lv.43
【俊足】lv.9
【威圧】lv.32
【夜の声】lv.5
【魔力流】lv.12
【恐怖吸収】lv.48
【闇属性攻撃力上昇】lv.2
【水泳】lv.12
【剛腕】lv.23
これにて二章完結です!
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