ちょっと海で遊ぼうか
朝の運動に山賊団のトップ集団を鎮圧してきたので、今日はちょっと軽めのクエストを受ける事にした。
そのクエストは、海でのマグナムフィッシュ退治。何組かのクエスト参加者がギルドが出す船に乗り、それぞれがマグナムフィッシュの討伐や船の防衛に努めるという内容だ。
「海には来たかったけど、こんなボロ船の上だとあんまり楽しくないね……」
「冒険者はギルドの捨て駒なんだから、船に金がかかってないのは仕方ないわよ」
スフィのぼやきに対し、ニアが冷めすぎたコメントを返した。九歳とは思えない冷淡さだな……。
「というかそもそも、海に来たって魔物がたくさんいるから泳げるわけないしね。海なんて期待してもがっかりするだけよ」
……おや?
「もしかしてニア、海泳ぎたいの?」
「ふぇっ!? いやそんな事ないしっ! 海なんて泳いでも体が汚れるだけじゃない!」
とかなんとか言ってるニアは、前世で言うところのパーカーみたいな羽織りを着ていた。普段は俺の作ったスライムスーツを着てくれているので、珍しいとは思っていたが……。
「ていっ」
「ふやうっ!?」
俺が彼女のパーカーを脱がしてみると、中には案の定水着を着ていた。
しかもこれは……ス、スク水だぁぁぁ! どうやらこの世界にも、偉大な服職人がいたようだな……! 【創造】スキル万歳!!!
「こ、これはっ、もしも船から落ちた時用の処置よ! 別に泳ぎたかったわけじゃないし!」
水着を見られたニアが、顔を限界まで真っ赤にして手をぶんぶんと振る。相変わらず素直じゃないなぁ……。
「泳ぎたいなら、素直にそう言えばいいのに……」
「魔物がたくさんいる海で泳げるわけなんかないでしょ!? 今回倒しに来たマグナムフィッシュなんて、口から高水圧ビーム撃ってくるヤバい奴じゃない……」
「ん、それなら魔物を倒せばいい話じゃん」
「そんな簡単に言って……。マグナムフィッシュは一時間に一回くらいしか海面に顔を出さないから、一匹倒すにも時間が……って何してるの?」
俺が剣を何十本も弓に番えるのを見て、ニアが眉を顰めた。だが俺は構わず弓を船の外に構え、スキルを発動する!
「【索敵】・【強制装填】・【千弓術】!」
俺の叫びと同時に、物理の法則も無視して弓から大量の剣が飛び立つ。それらは空中で散らばって、海にボトボトと落ちていった。
「【自動装填】!」
それから俺が放った矢を回収できるまでにレベルを上げた【自動装填】を使い、海に放った剣を全て水上へと引き上げる。剣はそれぞれマグナムフィッシュなどの魔物を貫いており、船まで戻ってくると漁船のように魚を積み上げた。
「はい、これで泳ぐスペース分くらいの安全は確保できたよ。これ以上やると環境壊れるから、スペースの狭さは我慢してほしいけど」
「自分が環境破壊しちゃわないか気にする十歳児、何者にゃマジで」
「あ、ケットシー。マグナムフィッシュは剣の摩擦熱で焼いた奴と串刺ししただけの奴があるけど、どっちが良い?」
「刺身が良いにゃーっ!」
戻ってきた剣の一本をケットシーに差し出すと、彼女は笑顔で魚にむしゃぶりついた。可愛い。でも勢い余って剣まで食べるなよ?
「あー……感覚がマヒしてたけど、そういえばレインって規格外だったわね……」
「正常な世界におかえりなさい、ニアちゃん。でもこれで、魔物を怖がらず海で泳げるね!」
嬉しそうにそう叫んで、スフィが服を全て脱ぎ捨てた。ニアに比べるとそういうガードゆるいよね。
「あー、スフィ。ちょっとマグナムフィッシュの素材で水着作るから待ってくれ」
「えー? 水着なんていらないよぉ」
「君はいらなくても俺が目のやり場に困るんだよ……」
そう言いながら、俺は【創造】でスフィの分と自分の分の水着を作った。スライムも泳ぎたそうにしてるけど、お前それ以上要素増やしたら収拾つかなくなるぞ。
「良いなー……」
「ニアちゃんはスライムスーツ作ってもらってるから駄目だよっ! これからは私も、この水着で生活するもんねー」
「それは生臭くなるから流石にやめときな?」
そんなやり取りをしてから、俺達は海へと入った。クエストは予定より六時間ほど早く達成したので、まだ船は港に戻らないのだ。
もちろん物騒な世界なので大した遊びは出来ないけど、【投擲】スキルで水をかけあったり、なんかこう……じゃれつき合ったりした。泳げたことがそんなに嬉しかったのか、ニアがいつもより積極的でちょっと照れる。
「おらぁぁぁぁっ! 【投擲】ぃぃぃぃ!」
「あの水に当たったら流血は免れなさそうだね……。【盾膜】!」
「援護するわスフィ! 【水刀】!」
まぁ基本的には、冒険者の水遊びなんて物騒なものなんだけども。
「ふぁー、楽しかったぁ……。そろそろ船に戻った方が良いかな?」
「そうだな。船長も早く帰りすぎるわけにはいかないから待っててくれてるけど、やることなさすぎて完全に目が死んでるもんな」
船の方を見遣ると、六時間気を張りつめる筈だった船長が完全に待ちぼうけしていた。船に乗った俺ら以外の冒険者達も海で遊び始めていたので、一人だけ船に取り残されて可哀想になってくる。
「よし、それじゃあ……」
「キュオオオオオオオオオオッ!」
だが俺達が船に戻ろうとした途端、海の向こうから甲高い声が響いてくる。俺達は咄嗟にそちらを見遣り、驚愕した。
「あ、あれって……」
「マリンドラゴンじゃないっ!」
どうやら俺は、初めて幻覚じゃない竜を目にしているらしかった。
レイン・エドワーズ
射手lv.6/剣士lv.4/調教士lv.4/魔人lv.2
【弓術】lv.271
【散弓術】lv.102
【爆散弓術】lv.4
【千弓術】lv.45
【高速装填】lv.57
【自動装填】lv.30
【強制装填】lv.46
【技能装填】lv.39
【背後射撃】lv.22
【音速矢】lv.19
【中継矢】lv.6
【近接射撃】lv.25
【剣術】lv.93
【遠隔剣術】lv.35
【剣防御】lv.8
【瞬突】lv.15
【回転斬り】lv.38
【調教】lv.115
【魔物保有数向上】lv.26
【従魔覚醒】lv.3
【従魔活性化】lv.13
【魔人化】lv.15
【緊急回避】lv.31
【投擲】lv.93
【空握】lv.51
【空腕】lv.12
【投擲許容量増加】lv.24
【索敵】lv.112
【索敵範囲拡大】lv.31
【弱点捕捉】lv.27
【砥ぎ師】v.51
【過剰砥刃】lv.35
【足払い】lv.28
【回し蹴り】lv.36
【風転撃】lv.48
【浮遊】lv.47
【単独撃破】lv.12
【並行作業】lv.43
【鷹の目】lv.26
【消耗品再利用】lv.25
【強制収容】lv.46
【愛撫】lv.72
【高速振動】lv.37
【創造】lv.48
【魔王の血脈】lv.48
【狙撃】lv.27
【頑丈】lv.18
【一極集中】lv.5
【熱耐性】lv.3
【魔物合成】lv.34
【俊足】lv.9
【威圧】lv.32
【夜の声】lv.5
【魔力流】lv.12
【恐怖吸収】lv.20
【闇属性攻撃力上昇】lv.2
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