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相部屋の男をこらしめてみた

 オーガを倒した俺は、街に戻ると助けたおじさんと別れた。


 俺が住んでいるミナ街という街は、PIOに於いて序盤の街という扱いになっている。だがパワーインフレオンラインの名は伊達ではなく、街に売られている商品さえもパワーインフレしていた。


「安いよ安いよー! 聖剣安いよー!」

「賢者の石をお求めの方は、是非バング商店まで! 5つセットでお買い求めいただければ安くしますよー!」


 ここミナ街はゲーム序盤の街にも関わらず、聖剣やら賢者の石やらのレアそうなアイテムが普通に売られている。前世の記憶を取り戻すまでは違和感なかったけど、ゲームの常識に照らして考えると異常すぎるな。


 戦いには出向かなそうな主婦まで聖剣を買っているのを見ると、包丁代わりにでも使っているのだろうか。


「とにかく、今日はもう冒険者ギルドに行かなくていいな。寮に戻って全力で訓練しよう」


 俺や俺を置いていったパーティーメンバー達は冒険者見習いの子供なので、寮も完備した冒険者ギルドの育成機関に通っている。

 魔物もパワーインフレしているこの世界では幼少期からみっちり鍛えなければ生きていけないので、冒険者ギルドも子供の育成に力を入れているわけだ。


 パーティーメンバーのせいでスキルを鍛えきれていなかった分、俺もこれからはみっちり鍛えなきゃな。




「おお? なんだおめぇ、もう帰ってきたのか? まさかゴブリンを倒さずに帰って来たんじゃねぇだろうな」


 寮の二人部屋に戻ると、相部屋のレールという少年がそう尋ねてきた。彼も俺のパーティーメンバーなのだが、俺を森に置いてきたことへの反省はないようだ。


「ちゃんと倒してきたよ、レール。ほら、これがゴブリンの頭だ」

「ああ、本当だな。ま、だからといって報酬を増やしてやるわけじゃねぇけど」


 そう答えると、ゴブリンとゴブリンロードの見分けもつかない彼はギャハハと呑気に笑った。君、人殺しになるところだったんだけどね?


 怒りたいのはやまやまだが、今はスキルの鍛錬をしたいので構っていられない。俺はゴブリンロードの首だけ置いて、明日に備えて寝ようとした。


「おい、何寝ようとしてんだてめぇ」


 だが、レールは俺をみすみすと逃しはしなかった。後ろからガシッと肩を掴み、俺がベッドに潜るのを邪魔してくる。


「おいおい、おめぇには俺の剣を研ぐっていう一番大事な仕事が有んだろうがよ。クエストでも役に立たねぇのに、サボっていいと思ってんのか?」

「今日は森に置いていかれたから疲れたんだって。明日からはやってあげるよ」

「はぁ? おめぇそんな我儘が許されるかっ!」


 我儘なのはどっちだよと思いながら、レールの勝手な言い分を聞く。彼が毎日俺に余計な仕事を課すのも、俺がなかなか訓練に時間を割けない理由であった。


 もし仕事をサボったり不備があれば殴られるため、これまでは従うしかなかったが……。今の俺ならこいつの攻撃を受ける心配もないだろうから、俺は気にせずベッドに向かう。


「なんとか言えやゴラ!」

 

 案の定レールは殴ってきたので、俺はゲーマーの勘で【緊急回避】を使って咄嗟に横に避けた。【緊急回避】lv.16に上昇。


「何ぃ!?」


 拳が空を切った彼は、しかしマグレだとでも思ったのか再び俺に殴りかかろうとしてくる。


 さっきので諦めてくれたら何もするつもりはなかったのだが、あまりしつこいとこちらも攻撃するしかなさそうだ。


「【足払い】」

「ぬがっ!」


 俺はレールの足元を高速で薙ぎ払い、転倒させた。スキルレベルを上げるにはスキルごとにコツがいるのだが、スキルの熟練度上昇方法を研究していた程のゲーム廃人だった俺はすぐにレベルが上がる。【足払い】lv.10に上昇。


「こっの野郎ぅぅぅぅ! なめてんじゃねぇぞ!!!」


 それでもレールは諦めなかったので、仕方なくこいつをスキルの練習台にすることにした。俺が弱いという意識を塗り替えてやらない限り、これからもちょっかいかけて来るだろう。


 もちろん武器とかを使えば冒険者ギルドを追い出されかねないので、手加減に最適な【足払い】を強くしていきたいと思う。


「えっと確か……こんな風に回転しながら【足払い】、で良いんだっけな?」

「ぐぬぁっ!」


 俺は【足払い】の派生スキルを覚えるため、空中に跳びあがって回転しながら相手の胸に【足払い】を命中させる。もう足払いでもなんでもないじゃんって思うけど、使い方が自由なのがスキルの魅力なんだようん。


「よし、やっぱりスキル習得の勘は鈍ってないな。着地が危ういくらいの勢いで回転したお陰で、【風転撃】を習得できたわ。足以外のところに【足払い】当てたから【回し蹴り】も覚えたし。ほいもう一回」

「いやおかしいだろ! 新しいスキルってそんなポンポン覚えられるものじゃ……ぐはぁっ!」


 なんか言ってたけど、謝罪ではなさそうなので気にしない。

 【足払い】から派生して覚えた【風転撃】というスキルを使い、俺は自分の周囲に風を纏わせながら浮かんでレールに蹴りをかます。


 俺が纏った風の力でレールは思うように倒れられず、そこを再び【回し蹴り】、【風転撃】。この順番でやると相手が倒れなくなるから、スキル上げに最適なんだよね。

 長いこと空中に留まってたから【浮遊】も習得した。


「ちょっ、そろそろやめっ……!」

「うん、多分次の一撃で君は立てなくなるから、これで最後だよ」


 言って、俺はlv.5になった【風転撃】でレールの頬を横から蹴り込んだ。俺の見立て通り、レールは完全に気を失って壁に倒れる。


 彼は【頑丈】や【気絶耐性】のスキルを持ってるのでなかなか倒れなかったが、お陰で良い練習台になった。【頑丈】はともかく【気絶耐性】のレベルは上がったはずだから、これでおあいこにしてくれ。


 俺はレールの体を【投擲】スキルでぶん投げて優しくベッドに横たえてから、自分のベッドに入って寝た。



レイン・エドワーズ

射手lv.4

【弓術】lv.129

【散弓術】lv.12

【高速装填】lv.30

【近接射撃】lv.23

【緊急回避】lv.15

【投擲】lv.51

【空握】lv.5

【投擲許容量増加】lv.14

【索敵】lv.85

【砥ぎ師】v.47

【足払い】lv.9

【風転撃】lv.5

【回し蹴り】lv.7

【単独撃破】lv.3

【並行作業】lv.10

【浮遊】lv.1

次回から冒険開始&ヒロイン登場です!もちろん主人公の年齢に相応のヒロイン…!

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