エピローグ 慰労会でギルドの記録塗り替えてみた
「魔王軍幹部討伐、お疲れ様ぁぁぁ!」
「うわ、冒険者ギルドにご馳走が並んでる! こんな光景まず見れないな……!」
緊急クエストを受けた、翌日。高位の神官によって傷を癒してもらった俺は、スフィ達と一緒に冒険者ギルドの慰労会に参加していた。
いつもは無骨な装備をした人で溢れる場所だからこそ、豪華な料理やあでやかな服の人が並んでいると新鮮な気分だ。
「結局、魔王軍幹部はレイン君がほぼ一人で倒しちゃったって事ですよね!? なんかただの矢で地面を抉ったとか聞いたんですけど、弓ってそういう武器じゃありませんよね!?」
「皆が他の奴と戦ってくれたから勝てたんですよ。テイムした魔物達も協力してくれましたしね」
「一対一どころか、こっちに相手の三倍くらい戦力があっても普通は負けるんですけどね!?」
一通りのことは昨日報告したんだけど、ナーシャは慰労パーティーでも俺の話を聞きたがってくれた。
俺の話を熱心に聞くナーシャは、いつものように明るい笑顔を浮かべている。冒険者ギルドで泣いていた彼女の姿を思い出すと、魔王軍幹部を倒せた事への達成感が後から感じられてきた。
「それで、これからはどうするつもりなの? 君は正直ランクA並かそれ以上の実力があるから、本当ならこの街に収まるような子じゃないと思うんだけど……」
「そうですねぇ……。そりゃ他の街にも行くとは思いますけど、そんなすぐに出ていくって事はないと思いますよ。この子達もどうすべきか決めてませんし」
俺はそう言うと、両肩にしがみついてくる人型の魔物二匹に目を向けた。
「にゃー、一緒に遊ぼうにゃご主人様ー。戦いでもエッチな方でもいいから早く行こうにゃー!」
「ご主人様、まだ子供なのに感じちゃってませんか? 可愛いんですからぁ……」
彼女らは魔王軍幹部との戦いでテイムした少女達だが、魔物だからなのかどちらもスキンシップが積極的過ぎて困っていた。一人は茶髪の猫耳少女で、もう一人は黒髪長髪のサキュバスだ。
調教士になったからには育成スキルを習得して彼女達を強い魔物に育てたいとは思うが、下手に育成してこれ以上積極的になったらどうしようと怖くなる。
それに何より、昨日の戦いで魔王になる前の職である魔人まで取得してたのだ。考えなきゃいけない事はまだまだ山積みのようだった。
「あ、あはは……大変だったわね……」
「無暗に兼業なんかするからそうなるのよ」
俺と受付嬢が話し込んでいると、横からひょいっとニアが割り込んできた。俺が兼業した時は喜んでくれていたのに、今はちょっと虫の居所が悪そうだ……。
「うぐぅ、またレインに積極的な女の子が増えちゃってるじゃない。可愛い魔物を触らせてくれるって言ってたけど、そっちの可愛いじゃないわよ馬鹿……! 昨日助けてもらった事に感謝したくても、あんなにべったりしてたら出来ないじゃない……!」
「私もちょっと巨乳への危機感が高まってるよ……。私達はずっと協力していようね!」
何やら話し込んでから、ニアとスフィがガシィッと激しく握手を交わした。日に日に仲良くなってる気がするなこの二人。
「それで……レイン君。今日はちょっと、渡したいものがあります」
「え?」
俺がスフィとニアの仲睦まじい友好を眺めていると、魔物達を前にして黙っていたナーシャがまた声を掛けてくる。
振り向くと、彼女は思案気な顔で俺を見つめていた。だがすぐに決心したような目つきになると、彼女はポケットからあるものを取り出す。
「これはまだ仮のものなので、受け取るか受け取らないかは君次第です。あんな事があってすぐこれを渡すのも、ほんと心苦しいんだけど……」
ナーシャは手の平を広げ、ポケットから取り出したものを俺に見せつける。そこにはこの世界の文字でCと描かれた、三つ分のメダルがあった。
「私がDランクに上げたせいで、君達は危険な目に遭ったわ。私は凄く後悔したけど……でも、君達は約束通り本当に街を救って帰ってくれた。これは私達ギルドの、正当な評価。君達はきっと、もっと上へ行くべき子達なんだと思うわ」
真っすぐ見据えられて、俺はゴクリと生唾を呑む。ここまで面と向かって正当な評価だと言われると、俺も真剣に考えざるを得なかった。
冒険者ギルドのランクは、現状Dのままでもお金に困ったりはしていない。むしろ山賊討伐や魔王軍幹部討伐の報奨金で、十歳では有り得ない財産を築いているくらいだ。
「そうですね……」
だが俺は、目の前のメダルにとても魅力を感じた。
これまでの戦いで助けてきた人の感謝の言葉や、泣き崩れていたナーシャをまた泣かせずに済んだ時の喜び。
この世界に来て色々な経験をしていく内に、俺はもっと人を助けられたらいいと思うようになっていたのだ。俺はメダルをじっくり眺めてから、その一つを受け取る。
「もちろん、許されるならこれからはCランクとして頑張っていきますよ」
「私もっ! 昨日の事で、もう足手まといになりたくないってもっと思ったから!」
「私だって、Cランクになる覚悟くらいあるわ」
スフィとニアもメダルを受け取り、俺達は晴れてCランク冒険者となった。
「ふふっ、そう言ってくれると思ってたわ。じゃああともう一つだけ、レイン君には渡したいものがあります」
「へっ?」
俺がまともな反応する間もなく、ナーシャは俺の頬にちゅっと小さくキスをした。
本当に一瞬の出来事だったが、顔を離すとナーシャは顔を真っ赤にしながら言う。
「泣いてた私を慰めてくれて、ありがとねっ! 格好良かったよっ、レイン君!」
早口でそこまで言い切ると、ナーシャは凄い勢いで走ってギルドの裏手へ消えていった。え? ……ええ!?
「嘘だろ!? 俺達のナーシャちゃんが……!」
「そんなっ、まさか十歳のガキなんかに取られるなんて!?」
「慰めるって、普通の意味だよな? なぁ普通の意味だよな!?」
その後はギルドにいた男達が大騒ぎして、何故か俺の知ってる女の子達も皆呻いていたけど……。一番叫びたいのは顔が火照ったまま逃げ場もない俺である。不意打ち過ぎた。
これからもギルドで顔合わせるのに、どうすりゃいいんだろうか……。
ともかく俺達はこうして最年少でランクC冒険者になり、同時に二日連続で昇格するとかいう意味分からない記録まで更新してしまうのだった。
レイン・エドワーズ
射手lv.6/剣士lv.4/調教士lv.2/魔人lv.1
【弓術】lv.263
【散弓術】lv.78
【千弓術】lv.39
【高速装填】lv.57
【自動装填】lv.22
【強制装填】lv.41
【技能装填】lv.33
【背後射撃】lv.22
【音速矢】lv.19
【中継矢】lv.6
【近接射撃】lv.25
【剣術】lv.88
【遠隔剣術】lv.23
【剣防御】lv.8
【瞬突】lv.15
【回転斬り】lv.30
【調教】lv.41
【魔人化】lv.1
【緊急回避】lv.31
【投擲】lv.89
【空握】lv.51
【空腕】lv.12
【投擲許容量増加】lv.24
【索敵】lv.103
【索敵範囲拡大】lv.17
【弱点捕捉】lv.23
【砥ぎ師】v.51
【過剰砥刃】lv.35
【足払い】lv.28
【回し蹴り】lv.36
【風転撃】lv.43
【浮遊】lv.32
【単独撃破】lv.12
【並行作業】lv.43
【鷹の目】lv.26
【消耗品再利用】lv.25
【強制収容】lv.17
【愛撫】lv.72
【高速振動】lv.37
【創造】lv.29
【魔王の血脈】lv.45
【狙撃】lv.27
【頑丈】lv.18
【一極集中】lv.5
これにて一章完結です!




