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青信号の悪魔

「ところで、なあ真智?」


「はい? どうしました、谷先生?」


「お前にずっと前に貸した眼鏡はどうした?」


「あの目の前の信号が必ず青になる眼鏡ですか?」


「そうだ」


「あまり役に立たなかったんでそのまま家に置いていますけど、それが意識と何か関係があるんですか?」


「ああ、あるんや。

それに答える前に真智に一つ聞きたいんやがいいか?」


「は、はい」


「真智、お前はどうして目の前の信号が青になる眼鏡を使ってみて役に立たないと思ったんや?」


「それがですね、

あの眼鏡をかけたら信号に待たされずに早く家から学校まで行けると思って使ってはみたんですが……。

その結果は全然早くなくって、むしろ普通に赤信号ばっかりの時よりも到着時間が遅くなるんですよ!

こんなのオカシイですよね?

どうしてなんでしょうか?」


「それはな、さっきの話で何回も出てきた波動関数の収束が関係しているんや」


「え、どうしてですか?」


「あの眼鏡はお前の視聴覚に人工的な幻覚をみせて五感すべてを錯覚させるものなんや」


「へ? 何を言ってるかさっぱりですよ」


「まあ、うちに続きを説明させや」


「は、はい」


「視覚に幻覚と言ってもな、オバケとかそんなものじゃないんや」


「と言いますと?」


「お前の目にみせている幻覚はな、

眼鏡に搭載された量子コンピューターが量子もつれの原理を利用して膨大な青になるパターン結果を導き出したカーナビみたいなものなんや」


「え? 2つわからないことがありますよ!」


「わからないことか?

まず一つ目から言ってみ」


「え~と、どうしてその量子コンピューターにはあたしが信号の前にたまたま立った時信号が青かどうかなんてわかるんですか?

あたしが気まぐれでどこか道草くったり途中からゆっくり歩いたり走ったりしたら結果なんて予測しようが無いですよね?」


「真智、お前にしてはいい質問じゃないか」


「あたしにしてはですかー? あたしはいつもこうですよー!」


「それはな、『予測』 なんてしていないが正解なんや」


「……って、あたしの返事無視ですか!

ところで先生、予測しなくてどうやって不確かな未来の情報を知ることが出来るんですか!?」


「それが量子もつれを利用して波動関数の収束に影響を与える操作なんや!」


「え? え?」


「まあ落ち着きや、真智。

このコンピューターはな、信号機の状態が決まるより前に、量子もつれの原理を使って決まった後の信号機の状態を先に引っ張ってきて知ることが出来るんや」


真智・四葉・宙

「凄ーい!」」」


「そんなことが出来るんですかぁ!?」


「ああ、出来るとも。

驚いたやろ?」


「はい! でも、もう一つの疑問いいですか?」


「ああ、2つ目はなんや?」


「仮にこの眼鏡にその未来の結果のバーチャル映像が写しだされたとして、あたし自身が歩いて学校に行くと言う現実の行動と何の関係があるんですか?」


「真智はそこは勘違いしてるな」


「え? どういうことですか?」


「眼鏡が写し出すのは結果の景色のバーチャル映像やないで!

それに、大事なのは視覚だけじゃなく聴覚もなんや。

うちら人間が意識と名前をつけて感じているこの感覚はな、無限に存在する様で実はパターンが限られているんや。

円周率や黄金比、ネイピア数やフィボナッチ数列、対称性等とかもそうやな。

自然界の法則の中に隠されたそのような数学的に秩序だった美しさに安定を求める本能が、地球に生命が生まれた太古の昔からうちらには備わっているんや。

一言で言うとバイオリズム(志向性)やな。

だからな、この眼鏡はさっきわかった未来の結果から青になるパターンだけをその都度選び出して、

そのルートに沿うように使用者の視覚と聴覚から催眠誘導しているんや」


「えー!?」

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