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第4話 究極の榛名山バトル after24hour

拙い文章ですが、ブクマ、コメント貰うと元気が出ます。よろしくお願いします。



ケンスケが負けた次の夜、榛名山には不思議と走り屋達がいなかった。いや、正確にはいる。しかし、誰も走っていないのだ。



サンライズ榛名のナンバー2が負けた。SNS全盛期のこの時代、ニッチな世界の情報伝達は凄まじく早い。ケンスケが負けたのを見ていたギャラリーがSNSに一斉につぶやいたせいだ。



ギャランの存在は一気に伝達され注目される。中にはあの暗闇の中なのに、サンライズ好きなマニアが高性能なカメラでバトルの一部始終を偶然録画していた。それをSNSで動画でアップしていた。

彗星の如く現れたギャランを皆、一目見たかった。



それと合わせて、サンライズ榛名の白鳥涼音が昨日の夜に久しぶりにSNSを更新した。



久しぶりに走るよ。



激震が走った。白鳥涼音の走りは以前から1つ抜きん出ていたが、人気の理由はそれだけではない。


ルックスも飛び抜けていた。


モデル級のサラサラの髪、普通の女子は隣に並びたくないくらいの小顔、目鼻立ちもアイドル級。歩く度に何かキラキラしたものが見える幻覚に襲われるレベルである。


今や車雑誌だけでなく、テレビにも進出しておりその人気はなかなかのものである。



以前は車雑誌の紹介でもスポーツカーのレビューなどの仕事があったが、最近は女子ウケしやすい車紹介や、テレビでもアイドル的存在なので走り屋というイメージがほとんどなくなってしまっていた。クリーンなイメージだが、彼女の本質は峠の走り屋である。



しかし残念ながら、どこを走るかはほとんどの者が特定できない。

なぜならサンライズ榛名のナンバー1は表向きは、白鳥ケンスケなのである。

涼音が本物のナンバー1だと知っている者は、涼音が現役で走っていた頃から見ていたギャラリーとサンライズのメンバー、それとごく一部の走り屋だけである。



皆、涼音の事だけは他言無用で秘匿にしていた。

騒ぎになるのを防ぐ理由もあるのだが、涼音が純粋に走りとバトルが出来るための配慮だ。

それでも普段の榛名山には考えられないくらいのギャラリー。



最近ではここ一番の盛り上がり。榛名山には異様な雰囲気が漂っていた。



場面は変わり下りスタート地点。

ギャラリーはいるのに車がほとんど止まっていない。



「事件ですぞ〜これは、事件ですぞ!タムラ氏いいいいいぃぃ!!!」



「ぬうう〜!!ナイトウ氏!!こんなに拙者の心を滾らせる夜は久しぶりでござるよおおおー!!!」



黒縁メガネにチェックシャツにオレンジのツナギの上半身を腰で縛り、ペアルックの男女2人組。場にそぐわない、アイドルオタクの様な2人組が興奮していた。



タムラとナイトウ



サンライズではお馴染みのギャラリーである。

サンライズ榛名結成当時から来ている筋金入りのファンである。



2人共車好きであるが、根っからのオタク気質である為、サンライズの名物になっていた。ギャラリーも、2人を見ながら会話に耳を傾ける。



「タムラ氏!今日は拙者の嫁こと涼音たんが久しぶりに走ると聞いて荒ぶってしまい、大好きなアニメを見逃してしまったでござるよ!

しかし、今日はあの生で涼音たんが見られると思うと拙者、、、くうううううううっ!!ハートがレッドゾーンでござるうううううぅぅ!!」



ボサボサ頭のナイトウがタムラに話す。



「ナイトウ氏!アニメを見逃したのも切ないでござるが、今日というメインイベントを生で見れたことが感激の極みでござるよ!

それにしても、問題は今回の挑戦者でござる。一体何者でござるか?」



タムラがメガネをかけ直しながらナイトウに質問する。



「それが全く分からないのでござる、、、。分かっているのは長野エリアの人間だということだけでござる。」



ナイトウもずり落ちたメガネをかけ直す。



「長野エリア、、、う〜む拙者のネットワークを駆使しても、長野エリアの走り屋でギャランの走り屋は聞いた事がないでござるよ。」

タムラは関東エリアの走り屋情報をほぼ網羅していた。



「しかし、まさかのまさかでござる。あのケンスケ氏が敗北するとは、、、今後の関東エリアは間違いなく荒れるでござるな、、、さながらこれは平成の合戦でござるよ!!!」



二人が顔を見合わせる

「タムラ氏!」


「ナイトウ氏!」



「高まるでござるうううううううううううううううう!!!!」



榛名山の夜空に二人の声が響き渡った。



「来たぞ!黒のギャランだ!」

榛名山のふもとに立つサンライズメンバーが無線で山の上のメンバーに報告する。



「やば、、、セッティングの状態を確認しにきただけなのにギャラリーヤバくない?」



はるなが助手席のはやまるに話しかける。



「ぎゃはは!!セッティングだろうとなんだろうと関係ねえよ、どんな状態であろうとここはストリート。バトルを申し込まれた以上、戦うか、、、または逃げる、、、って選択肢はねぇわなあ。」



はやまるが煽るように運転席のはるなを見る。



「はっ、逃げる?私とギャランが?ありえないでしょ。特に、今の状態じゃあ負ける気が全然しないんだよね。」



はるなの目付きは既に臨戦態勢だ。上るスピードは法定速度内。しかしコースの環境全ての情報を5感を張り巡らせ、頭の中に叩き込む。



「ぎゃはは!当たり前だぜ。足回りのセットアップはもう完璧だ。タイヤも、、まあ来るまでの道のりで、まあまあの状態だ。それでもケンスケと戦り合った時に比べれば格段に上だ。」

はやまるはリクライニングシートを倒して早くも寝る体勢だ。

「大丈夫。昨日みたいにただ、戦って勝つ。でも、バトル終わったら多分集中切れてぶっ倒れると思うから、帰り運転よろしくね。」



はるなが甘える様な表情で助手席のはやまるにお願いする。



「ったく。分かったよ。じゃあここで降ろしてくれていいぜ。また、上まで迎え来るのも大変だろ?」



はるなの表情がぱっと変わる

「え、マジ?助かるぅ〜。はやまるさん大好き。じゃあゴール地点当たりで大人しく待っててね。」

はるなは車を停め、はやまるは降りると運転席側へまわりため息をつきながら頭をがしがしとかく。

「おいおい、僕の方が大人だぜ?まったく、、、OK。それじゃはるな、、、涼音はマジで速ぇ、、それでも勝てよ。」



はるなの表情が引き締まる

「当たり前。」



はるなとはやまるが軽やかにタッチをする。

はるなはアクセルを踏む。乾いた音が響きわたる。



赤いテールランプを見送りながら、はやまるはつぶやく。



「伝説残すか、、それともぽっと出で落ちていく新人か、、全ては今日決まる、、。」



もう止まらない、世界は加速していくのだ。



「榛名山のはるなさん、、、、か。くくく。」



下りスタート地点。静かに集中力を高めている涼音。ライトの光が視界に入る。ギャランの乾いたエキゾースト。涼音がそっとつぶやく。



「来たね、ギャラン」



サンライズのチームが集まっている中、臆することなく車を駐車スペースに入れ、はるなは降りる。



はるなを見た瞬間、サンライズのメンバーが一気にどよめく。



「昨日の今日でマジできたぞ、、マジでギャランだ、、、女の子だ、、エボじゃねえのか?、、しかもめっちゃ可愛いぞ、、若いな、、免許取り立てじゃねえのか?」





「俺はこいつに負けたのか、、、くそ、、、」

ケンスケは苦い顔をしながら、はるなを睨みつぶやく。



「ん?もしかしてシビックの人?」

はるながケンスケを視界に捉える。


「ああ、、これが終わったらまた今度再戦したい。いいか?」


「いつでも良いよ。またやろうよ」


はるなはニコッと優しく笑う


「どぎゅぅぅぅぅぅぅーーん!!」

ギャラリーの1人、ナイトウが突然奇声をあげながら地面に崩れ落ちる。



「どうしたでござるか!ナイトウ氏!!」


タムラはナイトウを揺さぶる。




「くっ、、拙者の心は涼音たん一筋!涼音たんに全てを捧げたはずなのに、、拙者、不覚にもあのギャランの女の子に心を半分持って行かれたでござるよおおぉぉぉぉ!!!」

ナイトウは地面に顔をふせる。



タムラははるなをキッと睨む。メガネのレンズがキラリと光った。



「くうう!!走りだけでなく、人の心まで奪ってみせるとは、、、あのギャラン乗り只者ではないでござるな!!!」



そんな2人のやりとりを横目に、涼音は笑顔ではるなに近づく。


「はじめまして、私はサンライズ榛名の」



はるなは涼音の言葉をさえぎる。

「知ってるよ、白鳥涼音でしょ?私ははるな。余計な時間はもったいないからさ、さっさと始めようよ。どっちが榛名山最速か。」



涼音は笑いながらも瞳の色が変わる。

「いいね、そうゆう勝ち気な性格嫌いじゃないよ、、。嬉しいな久々にストリートで骨のある相手と楽しめそう。それじゃまずは、、」



「メアド交換しよ!!」



はるなはポカンと口を開ける。



「え?」


涼音は言葉を続ける。

「いやー男の子降りて来ると思ったら、超私好みの女の子降りて来ちゃったのは想定外だったわ!ささ、早くスマホ出して交換しよ!」



一瞬ここは峠なのかと疑ってしまう時間が流れる。


「これでよし!じゃあバトル始めようか!」



はるなは口角をひくひくさせながら

「う、うん、、、なんか調子狂うなー。」



お互い車に戻る。まずはギャランがスタート位置につくためサンライズのメンバーが誘導する

「OK!次、涼音さん!お願いします!」



「OK〜」

涼音は自分の車に向かいスタート地点に車を停める。



はるなは横に止まる車を見て驚く。

「はぁ!?、、マジ、、??峠でNSX!?普通持ってくる?つーか財力ヤバすぎでしょ、、。、」




NSXのどこまでも回るかのような甲高いエキゾーストが窓ごしに聞こえる。涼音がスタート位置に着く。

はるなはハンドルをぎゅっと握る。



「NSXだろーがフェラーリだろうが上等。新しくなったギャランの力、、見せてあげるよ。」

はるなはパックのコーヒー牛乳を一口飲む。

神経を尖らせ集中の糸が張り詰める。

一気に集中力は最高峰へ。




サンライズのメンバーがスタートを仕切る

「お互い用意はいいか!?レディ、、」




夜空に向かって両手を上に挙げる。



その空間にいる全員の心拍数が跳ね上がる。全員が拳を握りしめる音が聞こえるようだった。





「GO!!!!!!!!」





ズギャアアアアアアアアアアア!!!!!




空気を切り裂くようなスキール音。

両者とも最高のスタートダッシュ。

はるなのクラッチミートはパーフェクトだったが流石にNSXには劣る。

それなのにNSXが出遅れる。涼音のクラッチミス?いや、そんな事はまずありえない。



涼音は後追いを選んだのだ。



2台の車は狂気のスピードで、たった2つのライトのみを頼りに闇の中に飲み込まれていく。



「ぬぬぬ!涼音たんはやはり後追いを選んだでござるな。」


ナイトウはずり下がったメガネをかけ直しながら解説する。続いてタムラが解説しだす。



「相手のテクニックを後追いで把握してから猛烈なプレッシャーをかけてねじ伏せる。いつものパターンでござるな。ナイトウ氏は今回のバトルどう見ているでござるか?」




ナイトウは腰で縛っているツナギを締め直しメガネの右端をつまむ。

「今回は、、、見えないでござる。だからこそ見届けるでござるよ。」



タムラが暗闇に消えて行く2台を見つめる。

「しかし、どちらが勝とうと次の相手は拙者達マッドハッター妙義でござるなナイトウ氏。」

不敵に笑うタムラ。



ナイトウは手を広げ顔を隠すように中指でメガネの位置を直す。

「ふふふ、その通りでござるタムラ氏。次は、拙者達とFDたんの出番でござるな。」





ナイトウが背後にあるド派手なGTウイングを付けた黒のFDを見つめる。




全ての走り屋が、未来へ踏み出す為にクラッチを踏みこむ。

新しいステージを走り出す為に素速く、正確に、シフトチェンジ。世界が加速する。




榛名山始まって以来の最大最速のバトルが今、火蓋を切って落とされた。

次話は来週末くらいです。読んで下さり

ありがとうございます。

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