第22話「Genius & Effort」
読んで頂ける方々に本当に感謝致します。
マイペース更新ですが、よろしくお願いします。
早くコーナーに侵入すれば、その分早くコーナーから脱出できる。
確かにこれには一理あるが、間違っているともとれる。
速く走る
峠をただ速く走る
多分誰にでも出来ると思う。頑張って貯金しなくともローンを組んで、ちょっと良いスポーツカーを買って。いつもより多めにアクセルオン。
あっという間にそのへんの車より圧倒的に速いだろう。
でもそれは君の力じゃない。9:1で車の力なのだ。
君は車に乗って走っているのではない。
車に乗せてもらって走ってもらっているのだ。
そこにはなにもない。車と君は何も相容れることは無く、その関係は長続きしないだろう。
そして決まってこう言う。
「もう、こうゆう車は年じゃない」
「もう飽きた」
覚悟もない、分かり合おうともしないまま関係は終了だ。最悪なオーナーに至ってはノーマルは物足りないといって、なんの根拠もないチューニングを重ねる。そうして車を痛めつけて車の寿命を縮める。
人間関係と一緒だ。お互いが尊重しあい、いつも対等でいれる関係が1番長続きする。
どちらかにもたれていてはいつかその関係は破綻するだろう。
車だってそうだ、ドライバーからの入力と車の出力。全ての歯車を噛み合せるにはバランスが大切なのだ。
ナイトウはお互いのバランスというものを物凄く重視している。
FD自体もライトチューン。タイヤの径は大経にしすぎない17インチ。落とし過ぎない車高。
車自体はタムラとの共同での購入だった。
ナイトウは購入後から日々気を付けていたのは自身のウエイトだった。
デリカシーが無いといえばそれまでだが、パートナーとなるタムラとの体重誤差は1キロ程度だった。
タムラのベストウエイトを自身も保つ事で車の左右のウエイトバランスまで考えていた。
5:5の関係性
とかくそれに異常な固執をしていた。
タムラとの車の所有の仕方、整備など至る所でバランスを気にしていた。
1箇所の負担というものが車に、ドライバーにどれほどの大きな負担になっていくか想像した事があるだろうか?
最初の負担は軽微なものだろう。しかしそれが積み重なる事で、車が再起不能になってしまう。
高度な技術力とは普段の努力の積み重ねなのだ。
そして車もまた高レベルの状態をキープするには、普段から高い水準でメンテナンスとチェックが必要なのだ。
機械も人間もさほど変わらない。
高レベルをキープするとはそうゆう事なのだ。
しかし、それらを維持するには莫大な金がかなる。
仕事と趣味の両立。言葉にするのは簡単だ。
しかし、現実はそうはいかない。
何を捨て、何を残すか。
突き詰めるとチューニングカーとはその人の人生そのもの。
その人の今までの生き方全てが分かるのではないだろうか?
車を見ればソイツ自身の車との、人との関わり方、人生の生き方、全てが見えて来るだろう。
君達はその車といつまで付き合うつもりでいる?
ナイトウ、タムラは出した答え、、、それは、、今の走り方に全て表れている。
「なるほど、、、。さて、敵だからこそ教えるでござるよ。妙義の走り方を。」
妙義第二区間
ここはゆるやかなコーナーが続く区間
ややスピードの乗った車がコーナーに進入していく様は見ている方は楽しいだろう。
ドライバーにとっては軽さが肝の下り勝負。
ZC33Sは970kg。対するナイトウ、タムラのFD1240kg
戦闘機の時代からそうだ。メーカーは制約の中でベストを創りあげる。ネジ1本、スポット増しの数、数グラムを削る為だけにどれだけの日々を思考したのだろうか。
非力なエンジンをより早く、より力を逃がさず4本のタイヤに伝えるにはどうすれば良いか。
ZC33Sはスズキの市販車の中では、いや現存するライトウェイトスポーツ車の中では最高峰に位置するのでは無いだろうか。
どんな世界にもいるが始めた瞬間から何かを持つ者はごく稀に確実にいる。
ZC33Sのハンドルを握るナナは間違いなく天才だ。
体全体で感じる情報から車がどうゆう動き方をしたいのか。そして自分がどうゆう操作をするべきか。
悔しいが、天才はいる。僕らの努力をあっという間に抜き去る天才が。
「妙義を走る中で最も大切なのはリズムを崩さないことでござる。妙義は他の峠とは違うのでござる。分かる者にだけ分かる、絶妙なバランスで成り立っている峠、、、なんだぜ?」
ナイトウの口調が変わる。
そろそろ本物の峠を見に行って参考にしたいなぁ、、




