第21話 華麗なるアイススケーター
速さを追いかける走り屋
アイドルを追いかけるドルオタ
目指すべき場所はどちらも暗闇の中。
その心は
ズギャアアアアアアアアアアアアッッ!!!
タイヤが叫び声を上げ、妙義山のダウンヒルが始まった。
SWIFTが一気に前に躍り出る。軽さを生かした驚異的な発進。
「クソオタクがぁ!ぶっちぎってやんよ!!何がFDだ!生産停止して進化できねえ車に未来はねぇよ!」
「ナナ、焦らないで。そうはいってもポテンシャルは高い。でも、冷静に走れば確実に勝てる相手」
全身黒ずくめのゴスロリ服側の女の子が助手席でポソリと話す。
「ちっ!分かってるよゆりか!黄金期に生まれたからって良い気になってるのが許せねえ!!」
「ふぅ、、こんな日に他のチームのバトルが先に入るとは、、ついていないでござるな。」
ナイトウは少し笑みを浮かべながら目の前のSWIFTをじっと見続ける。
SWIFT ZC33S
「ほほぅ、、、なるほどなるほど。荒削りな走りでござるがダイヤモンド級の原石でこざるな!」
「ナイトウ氏、ここはホームコース。手加減は、、、」
コーナーに差し掛かる大分手前でのブレーキング
ナイトウはずり下がったメガネを上げると同時に、恐るべきスピードでの高速シフトダウン。
やや荒々しく感じるモーションからハンドルにそっと手を置き、ハンドルを切る。
ハンドルの舵角によって、キッカケを与えられたFDはまるでアイススケートさながらのように優雅なラインでコーナーに侵入する。
ズン、ギャアアアアアアアアアアァォァァァァァァ!!!!!!
「して、、、ないでござるねww」
コーナーに侵入する二台を見てギャラリーが叫ぶ
「うおおおお!!新型SWIFTがくるぞおおおお!!!!うおお、、敵だけど、、新型SWIFTはやべえ!!俺初めてSWIFTのドリフトみたよ!!!」
コーナー手前で見ているギャラリーがこれぞとばかりに雄叫びをあげる。
流れ星のように一瞬で目の前を通りすぎる二台。
ギャラリーが思いおもいの言葉をつぶやき始める
「それにしても、、新型SWIFTの走りは尋常じゃねえな。スズキはこんな狂った車をこのご時世に出しやがって、、車の大きさ、クロスミッション、ギヤ比、確実にラリーで勝つ為、、いや、製作段階から峠でのバトルを前提として作ってやがる。正直FDの分が悪いぜ、、、!」
「おいおい!!てめえは何弱気な発言してんだよ!あの2人はマッドハッターの看板背負ってんだぞ!おいそれと負けるはずがねえだろ!!オレ達が応援しねぇでどーすんだよ!」
「おいおい、マッドハッターさん、、レベルの低い会話だねえ、、、」
挑戦者側のチームの人間であると思われる青髪の女がマッドハッターのメンバーに挑戦的に話しかける。
「なんだと、てめえ!!!(やべぇ、いい女だな、、、)」
「マッドハッターはあの2人で保ってるよーなチームって噂は本当だったのかもね。私は車だけで見れば最初FDには分が悪い勝負だね、、って思ったけど、、、たった1コーナーで身震いしたよ。どう見てもドルオタ男子にしか見えないあんな奴が、、どうやってこれほどまでの超絶技巧を身につけたのか是非聞いてみたいもんだよ。全ての動きを最小限、、言葉で言うのは簡単だよ。でもね、これほどの領域で車を『掴む』やつは見たことがない。」
「車を『掴む』?」
「あぁ、ごめんごめん。私達のチームじゃさ、車の全体の大きさ。要するに空間把握している状態を『掴む』って表現してんだよ。」
「へぇ、、、で、オタクらから見てどうなんだよ?うちのツートップはさ?」
「見て分かんないレベルなのかい、、、、あのねうちのリーダー達の空間把握は多分ボディから5センチレベル。やや安全マージンを取ってるんだよ。コーナーギリギリに攻めてもここは峠。サーキットみたいに整備されてるワケじゃない。でもあのFDは、、、あの運転してるナイトウってやつ、、頭が完成にイカれてる。アイツは1センチレベルだね。小さなFDをもっと最小限に動かそうとしてやがる。それがどんなに危険なことか、、、、アイツのコーナーを敵ながら見た瞬間に惚れたよ。アイツはそうさね、峠のアイススケーター羽出柚流ってとこかな、、、」
青髪女性の顔が赤くなる。多分、、、確実にドライブ中のナイトウに惚れてしまったのであろう。
ギャラリーが青ざめるそしてこう思った。
「(この女、、、やべぇ、、、)」
天性の才能VS努力と思考の技巧派
バトルは始まったばかり、、、。
どちらも手探りで自分しか作れない道を行くのです。
次回更新は6月予定
リアルにてアイドル追っかけ活動が頻繁な為。




