第20話 SweetClapper
アイドルの追っかけに力が入りすぎてしまい、更新遅れました。
追っかけながらなので、今後もマイペースに更新していきます。
妙義山のヒルクライムゴール地点は静かだった。
ローレルとFDのアイドリングが静かに、ひっそりと終わりを告げていた。はるな、涼音は何度もバトルを経験してきたがこれほどまでに静かに終わるバトルは多分無かった。
「負け、、、、、たでござるね、、、、」
タムラが静かにポロっと一言を吐き出すと、まるで感情が一気に溢れるように堰を切ったように涙をとめどなく流した。
「こんなに、、、こんなに努力して、、、全てを注ぎ込んでもやっぱり天才には勝てないのかなぁ、、、言い訳出来ないくらいFDの状態は完璧だった、、、路面の状態も逐一把握できてたし、、、、ミスも1つもなかった、、それなのに、、、私、、、走る、、才能無いのかな、、、」
「タムラ氏、、、、」
「才能って何!?」
FDの扉ごしに涼音がタムラに声をかける。そしてドアを開けけタムラの両手を引っ張り立ち上がらせると涼音はタムラを強く抱きしめた。
「私だって才能無いよ!!いつも迷って、失敗して、泣きじゃくって、、、何度も諦めようとしたよ!!車なんかもう乗りたくない!!って何度も思ったよ!芸能人気取りでこのままみんなにチヤホヤされて忘れちゃおう!!とか何度も思ったよ!!はるなちゃんに負けた時だって、、、本当は悔しくて悔しくて家に帰ってずっと泣いてたもん!!もうやめよう!今日で全部終わりにする!!って本当に思った!!!、、、でも、、、それでも、、、」
タムラの首すじに冷たいものがポタリと垂れた。
「涼音殿、、、」
『天才は悩まない』タムラはそう思っていた。いつも自分より上の、才能ある人間達は自分のように悩む事はないと。タムラは知らなかった。榛名山でずっと頂点で輝くだけでなく、華やかな芸能界でも活躍し何でも完璧にこなす涼音が声を震わせ涙を流しながら訴えてれるなんて、、、。
「絶対ここに戻ってきちゃうの!どんなに色々な事で気を紛らわしても、、、私に、、ううん、私達はここでしか生きられない、、ここでしか、、輝けないの、、、だから、、また戦おうよ、、、この世界で生き続けるかぎり、、、何度だって戦おうよ!」
「はい、、、はい、、、今度は負けないでござる、、、、また、、、戦いましょう、、。」
タムラは再び涙を流し涼音を抱き締める。涼音も自然とタムラを抱き締め返す。
2人を見つめるはるなが、目を逸らす
「ここでしか、、、生きられないか、、、」
はるなも自然とポロポロと涙を流す。
はるなは、暗闇で先の見えない妙義山の峠道を見つめる。妙義山のシンボルともいえる大きな鳥居も今は、暗闇の中でかすかにその形を確認できる程度だ。
私達の人生と同じく一寸先は闇。しかし走り続けるしかないのだ。
光を求めているわけではない。
『誰が一番この世界で速いんだ?』
スピードに魅せられて、、人生を狂わせられ、、、いや、狂っているのはこの何もない日常なのかもしれない。
非常識な中で純粋に輝こうとしているこの生き方こそが日常と呼ぶにふさわしいのかもしれない。
「しかし、今日という日はまた残酷でもござる。さあ、はるなたん!!第2ラウンドの狼煙をあげようぞ!!」
「いや、今日はこれで終わりだ」
はやまるが突然割り込み、バトル開始を中断する。
「はやまるさん、、、なんで?」
はるながはやまるに疑問を投げかける。これほどまでに熱い緊張感の中での戦いは、もう出来ない。今日という日はもう無いのに、、、。
「ごめんな、はるな。とてもじゃないがローレルがもう限界だ。ローレルの立ち姿でわかった。バトル中にFDと接触しただろ?フロントのタイヤがヒットしてる。ほんのちょっとの接触だろうが意外にダメージはでかい。ハンドル角にもやや異常があるね、、、。タイロッドエンド、ロアアーム、全体的に確認だ。悪いが僕がセッティング出してる車は全て責任を持って見たい。命を預けている以上、これで走らせられない。すまないが、、、、バトルは中断だ」
「そんな、、、、、」
「FDも多分リアタイヤがヒットしているかもしれない。早急に対応するべきだ」
「、、、分かったでござる、、、タムラ氏、、今日はここまでで退くでござる」
ナイトウはバトル出来ない悔しさから泣いていた。
本当は戦いたかった。どんな状態でも良い。ストリートならばどんな状態でも挑まれたら戦う。
しかし、ナイトウははるなとベストコンディションで戦いたかった。ただ自分のワガママを突き通したいが為に気持ちに蓋をした、、、。そんな気持ちが涙を流させた。
「うん、、分かったでござる。2人共、またやろうでござる。我等はいつもこの妙義山で待ってるでござる。」
「分かった、、、」
はるなはナイトウに近づき手を差し出す。
「必ず来るから。次は私の、、、ギャランで来るから、、、、勝負しよう。絶対に決めよう。」
「待ってるでござるよ、、、、」
ナイトウははるなの手を握りお互いにギュッと握り合う。
FDが妙義の闇に消えて行くのを見つめる。
「はやまるさん、、、、ローレルぶつけちゃってゴメンなさい、、、」
涼音がはやまるに頭を下げる
「いや、ギリギリのバトルだったのは分かってた。でも、ここまで涼音ちゃんがC32のポテンシャルをキッチリ使ってくるとはね、、、本当すごいよ。ローレルのオーナーもここまでの使い手だとぶつけちゃってても多分納得すると思うんだ。」
「、、、、ありがとうございます。」
「さあ、今日は帰ろう。」
3人はローレルに乗り込み帰路につく。
運転ははやまる、涼音は極限のバトルだった為、今は後ろで寝ている。
はるなは途中コンビニで買ったパックのイチゴ牛乳を飲みながら外の暗闇を見ている。
「はやまるさん、、、涼音さん、私と戦った時より早かったよ、、、。ノンクラッチシフトしてる人なんてバトル中にしてる人、、初めてみたよ。」
「そっか、、、はるなの言っていた通り、次は分からないな、、。」
「うん、、それに涼音さんってあんまり走りに悩みとか無いと思ってたけど、そんなのやっぱないね。みんな悩んで考えた集大成が今の走りなんだよね」
「うん、僕はね車の運転に才能なんて無いと思ってるんだ。あるのはただ『好きな事を貫き通す才能』これの有無だと思う。」
「私も車が、ギャランが、、大好きだよ」
「まーな。なんせ走れない状態のギャランを自分の時間とお金を注ぎこんで今の状態にしたんだからな。はるなも相当だよ。」
「うん、、私、もっと速くなる、、、」
こうして戦士達の夜は終わる。
「ごめん、、約束もしてないのに来ちゃって。車、、、大丈夫?」
「良いでござるよ、、今日来るような気がしたでござる。まさかまた2人で来るのは想定外だったでござるが。」
「涼音さんにも無理して来てもらっちゃったんだ。」
「別に無理なんてしてないよっ!!大事な戦いの続きだもん!」
「2人共、すまぬでござる、、、、。しかし、今は無理なのでござる、、」
「どうしたの?ってか、昨日とはうって変わって今日はやけにギャラリーが多いってか多すぎない?」
「おいおい、いつまで待たせんだよー!こちとらさっさと終わらせて帰りてぇんだよ。」
「誰?」
はるながきつく相手を睨む。
「県外から来たチームなのでござる、、、、。挑まれたなら戦うのがこちらの流儀!」
FDの奥に止まっていたのは、新型SWIFT ZC33Sだった。
カタログではそのイエローが象徴的で明るいポップな車に見えたがその車のイエローは何故か生理的に受け付けない色にはるなは感じた。
その横に立つ女の子、、多分ドライバーも、イエローに負けないぐらいポップなピンク色のツインテールに髪を揺らし、白のロリータファッションに身を包んでいた。
涼音の清純派の美人さと違い、美形ではあるがキツいメイクにややぶっ飛んだファッション。
そしてその隣には全身黒のゴスロリ調のどこか影のある女の子がいた。
「おいおい、、、、早くしろよー。それともなんだぁ、ロータリーなんてポンコツ積んだ化石みてーな車はエンジンでもかからなくなったのか?所詮は時代遅れの車だしな、、くくく、、、ぐひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
可愛い見た目とは裏腹に話す言葉は下品極まりなかった
はるなは髪が逆立つくらいに頭にきた。走り屋ならば、、、同じ様に車を愛するものなら分かる筈だ。
「ちょっとアンタ!!、、、、」
キュルル、フォオオォォォォォンンンンッッ!!!
はるなの言葉を遮り、ナイトウ、、、いやFDが怒りで吠えるようにエキゾーストが響きわたる。
「ん?何でござるか?新型エンジンと同じ様に負けてしまう車のオーナーの声はか細いでござるなぁ。タムラ氏、何か聞こえたでござるか?」
「いや、何も。そういえばこんなことわざがあったでござるな。『飛んで火に入る夏の虫』だったでござるかなw」
「このアニメオタク共、、、一瞬で何も言えないぐらいぶっちぎってやるよ!!」
突然の県外チームの横槍が、入ったが先にバトルを申し込んだのはむこう。はるなは運転席にいるナイトウに近づく。
「ごめん、あたしがこんなこと言うのもなんだけど。アイツら二度と妙義に近づきたくなくなるぐらいにぶっちぎって!!!」
そうゆうとはるなはナイトウの前にコブシを突き出す。
ナイトウは少し笑いながら自分のコブシをはるなのコブシにコツンと当てる。
「ぬほっ!!、、、、、可愛い子にここまでやられたら負けられないでござるよ!!」
妙義に2つの炎が灯る、、、。まるでその炎が灯るのが分かっていたのかスタートラインにはギャラリーが所狭しに今か今かとウズウズしながら待っていた。
遅めの更新にもかかわらず読んで頂きありがとうございます。




