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18話 Realize

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。

「さぁ、行くでござるよ!我がFDが前に出ることは必然!!そして、もう二度とクリアな視界は見せない!!、、、前には出させないでござる!!」

そう言うと立ち上がりで3速アクセルオン。まるで意思を持っているかのようにFDは前へ前へと地面を蹴り出し狂気のスピードにドライバーを誘う。


「1つ、、2つ、、そうゆう呼吸のとり方ね、、、きゃははははははは!!いいね!!!」

涼音が途端に性格が変わったかのように高らかに笑う。


「す、涼音さん??」


「きゃははは!!ゴメンね!私、強敵と闘うとどーしてもこっち側になっちゃうみたい!きゃははは!!あーそー!!そーゆーラインね!!」

背後についてしばらく経つとローレルの動きが変わる。先程までの攻めるようなラインから明らかに変わった。雰囲気がややまとわりつくような異様な空気を醸し出す。

まるで大蛇が獲物を見つけ密かに追うような、、、。

車内に粘りつく様な空気が充満し、はるなは息さえしづらくなる様な思いだった。

(やばい、、、涼音さんってもう一段階ある人なんだ、、、、。)


「きゃははははははは!!驕り、、、驕りだよねぇ〜〜ぜったい。驕りが見えてるんだよなぁ〜。私を認めているのに、C32ローレルをどこか下に見てる、、かすかに、本当にかすかだけどそれが走りに出てるんだよねぇ〜、、、峠でさぁ車に上下のランクがある訳ないじゃん。最後までさぁ〜その車を信じて踏み込んで一体になった時が本当の速さなんだよ、、、」


涼音の目が暗闇の中で鋭く凶悪になるに連れてローレルのスピードも上がる。そして先程までの正統派の走りがなんだったかのように涼音はローレルのクラッチを蹴飛ばすように踏み込む。

荒さが極端に目立ち、それでは普通スピードには繋がらない。繋がらないはずなのに、、、



えげつないほどのスピード。タイヤが地面を蹴っているはずなのに、まるでヌルリと滑り、うねる様にコーナーをクリアしていく。

乱暴なほどのドライブとは裏腹に車の動きはよりシャープによりか細いラインに沿って加速している。

峠を走れば走るほど、その時自分がどの様な場所にタイヤを通せば最適なスピード、最適なシフトチェンジをすれば良いか理解してくる。

それは技術を越え、反射神経と言わんばかりの領域に達する。

それは決してジムカーナやサーキットだけで培われるものではない。




場所は変わって、榛名山、、、


白鳥ケンスケはいつもはDBA-FK8(シビック)で走り込んでいるのに、なぜか今日は涼音の愛車E-NA1(NSXタイプR)で走り込んでいた。

いつもの給水塔のある駐車場に車を止め、車から降り休憩するケンスケ。


「ちっ!!相変わらず乗りこなしがムズイ車だわ、、、どんだけ乗り手に求めんだよこの車は、、、姉貴はよくこんなセッティングでぶん回せるよな。ったく。本当に女かよ。」



「ケンスケさん!お疲れ様です!!今日はNSXなんて珍しいですね!!」

サンライズのメンバーのケイが話しかける。

ケイは最近の1軍メンバーの中ではかなり頭角を表してきておりサンライズのナンバー3ではないか?とも言われている。腰まである長い髪を揺らしながらケンスケに頭を下げる。

「ああ、ケイか。最近おまえもかなり走り込んんでんなあ。いやー、なんか最近のサンライズは女子の方が速いんだよなあ、、やっぱあれかな、ウエイトの軽さが軽量化につながってんのかな、、。」

「何言ってるんですか、ケンスケさん身長もあって体格も良いけど速いじゃないですか!!、、でなんでNSXなんですか?」


「ああ、姉貴が『たまにはケンスケが乗らないと空気が澱む』って言うからさ。たまに俺が走らせてんだわ。」


「空気が、澱む」


「ああ、ケイは見たことなかったよな。姉貴が本気で乗るときってのは、大体後ろから追いかけてく時なんだわ。そうゆう時の姉貴の運転って、ありえないぐらい乱暴なんだよ。ステアリングの動きも雑だし、クラッチは蹴飛ばして無理矢理シフトチェンジしてるし、、、普通はそんな運転してりゃ遅いんだよ。だけど、、、姉貴がそうゆう領域に入ると、、、本当に速い。」


「え、、、じゃあ前回のギャランの時もそうだったんですか?」


「いや、前回のはるなとのバトルの時は我慢できずすぐに前に出ちまったからそっち側にはならなかったんだわ。姉貴がそっち側になる時は絶対のピンチの時になるんだよ。ただ、それも諸刃の剣でよ。本当に車をモノとして扱うんだよ。普通長年付き合ってると車に愛着が湧くのと同時に限界なんかも分かってくるだろ?だけど姉貴は違うんだわ。限界ギリギリのパワーを出し続けるんだよ。レースカーと違って市販車はそこまで限界までポテンシャルを連続して使い続けちゃいけないんだよ。」


「じゃあ、NSXも、、」


「ああ、この前なぜか一人で走ってる時にそっち側になっちまってな。酷使された後でよ。昼間姉貴を軽井沢に送ったあと、いつものショップでエンジンやその他も修理と点検、パーツ交換もしてもらったあとだからよ、エンジンや各パーツの当たりの確認がてら走ってんだわ。んで、澱みって奴を取り払ってんだわ、、。」

ケンスケは淡々と涼音のことを話す。

「それと姉貴はよ、今じゃNSXなんてバケモノに乗っているけれど、、昔は、普通の車を走れるように改造して、この榛名山を攻めていたんだ。その時からよくスポーツカーじゃないからって下に見られる事がよくあってさ、、、そのせいで何度か辛い思いをしたんだよ。ま、その後姉貴に舐めたクチ聞いた奴等は全員、バトルで姉貴が打ち負かしてんだけど。でも、それからかな。姉貴は根幹はスポーツカーってやつと、、、スポーツカーに乗ってるやつら全員を嫌ってる所があるんだわ。」


「涼音さんにそんな過去があったなんて、、、、」



「今回はバトルしてなきゃいんだけどよ、、、他人の車でも無茶しやがるからなあ、、、姉貴」



ケンスケの思いも虚しく、妙義山でC32ローレルを大蛇ののごとくコーナーでうねらせている涼音。ローレルに搭載されているエンジンRB20DETTは呼び起こされた怪物の様にドライバーに力を与える。それに応える様に涼音はローレルのレブリミットを限界ギリギリまで振り絞り、パワーを絞り出す。


すでに勝負は第3区間、まるで第二区間でタムラがローレルに肉薄していたのとは逆に今度は涼音がRX7のリアバンパーにキスをしてしまうかの距離に肉薄していた。



狂気の夜の妙義山、もうすぐ幕が一旦降りる、、、、。

新年もよろしくお願い致します。

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