お姉ちゃんのことはこれで終わり
この男達は、怪しいサイトの掲示板に、犠牲者を募集していた。
一晩だけで、高額の報酬を手にすることができる、という触れ込みだった。お姉ちゃんのクローゼットにも、びっくりするような現金が隠してあった。その金は、いまはあたしの活動資金だ。
無理矢理にでも金を渡せば、合意の上でのプレイということになる。罪は軽い。それぐらいの金はなんでもないくらい、おいしいパーティなのだろう。
性奴隷志望でメールしてやった。ネットで手に入れた無料アカウントを使った。馬鹿だから採用基準を返信してきた。顔のアップと、全身の画像が必要だそうだ。
お姉ちゃんの生前の画像に、木馬系のスパイウェアをしかけて添付し、返信してやった。
馬鹿だから、震えあがって、仲間全員に回覧するだろうと思った。
あたしのコードは、簡単に対策ソフトに検知されたりしない。
六人が感染した。
あたしのコードは、起動時にIPをメールしてくるようにプログラムしてある。
あたしは、じっくりとこいつらのパソコンの中身を探った。
はっきりとクロだと分かるのは、五人だった。
必ずしもチンピラという訳じゃない。会社勤めをしている者もいたし、学生もいた。
中でも、俵藤浩二という男は最悪だった。
この男は、見た目がいいので被害者を『釣る』役目だ。画像では、さわやかな好青年、スーツがまだなじまない新入社員といった感じだ。女と一緒の画像ばかりだ。
じっさいにはケダモノだ。
お姉ちゃんに最後のメールをよこしたのも、この男だった。
自殺者が二人。この男達のせいだ。
連中のパソコンには、ぼかし処理する前の、画像や動画が保存してあった。証拠としていただいた。
キーボードの操作を取得したら、今の犠牲者を脅すメール文書だった。L○NEかなにか知らないけれど、自殺したバカ女を笑う会話もあった。
文書ファイルを調べたら、名前や住所も分かった。あたしが注意したのは、人違いで無実の人を攻撃しないようにすることだけだ。
あたしは、集めた犯罪の履歴を、ていねいにファイルにしてから、男達のパソコンに仕込んだスパイウェアを削除して、撤収した。
それから、家族のところへ『証拠』を送った。郵送とメールの両方を使った。
勤務先と、学校にも送った。
マスコミに送って、最後に警察に届けた。
ざまあみろだ。
警察の捜査が入って、仲間割れが起きた。俵藤浩二とかいうにやけた男は、パニックになった仲間に刺されて死んだ。
笑ってやった。
お姉ちゃんのことはこれで終わりだったけれど、それから【犯人探し】が、あたしの日課になった。