人が生活すれば、世界には痕跡が残る
最初に、大手検索サイトの機能を使って情報収集をしてくれる、ネット巡回ロボットのコードを書いた。もともとあたしはエンジニア志望だ。
ネット上のコンテンツは膨大で、自分で全部をチェックしてゆく訳にはいかない。情報はネット上にあるので、このロボットが記録してゆくのは、コンテンツの関連性だけだ。
検索対象は、
お姉ちゃんの名前、それから連想されそうな『ペットネーム』。
過去一年間の、性犯罪の記事。
倒錯した、性的嗜好の記事。
脱法薬物に関する記事。
集めた情報は、無料の情報保存サービスにいくつかのアカウントを作って、データベース化した。
そうして、集めた情報を、あたしは一つ一つ確認した。感情がないロボットでは、洗いきれない情報があるのだ。
人が生活すれば、世界には痕跡が残る。
人が撮影した動画や画像に見切れてしまうこともあれば、誰かの日記に、名前も知らない誰かとして表現されてしまうこともある。
最初に出てきたのは、お姉ちゃんの死んだ夜、秘密で開かれた淫らなパーティの記事だ。
その記事を書いたのは、ただの愛好者で、暴力的な人物ではない。
高い会費を払ったのに、途中で『りなたん、というペット』が使い物にならなくなって、たいへん、残念なパーティだったそうだ。
その男のパーティ参加記録に、お姉ちゃんは記録されていた。その男の友人関係の記録にも、お姉ちゃんの姿があった。ぼかしが入ってるけど、あたしが見間違える筈がない。
動画も確認した。お姉ちゃんは泣きじゃくっていた。それが、たまらなくそそるんだそうだ。
みんな、死ねばいい。
はっきりと分かったことがある。お姉ちゃんは、ただそういう事を強要されていただけじゃない。男達の収入源にされていた。食い物にされていたのだ。
お姉ちゃんを殺した男達は、まだ、そういうパーティを続けていた。主催すれば金になるからだ。人気があるパーティメーカーだった。
リアルだから興奮するんだそうだ。当たり前だ。ほんとうに無理矢理なんだから。