はやく、なんとかしてあげないと
映画は他愛もない恋愛映画だった。
動物をからませたのがポイントだが、犬の可愛さ以外にこれといった内容はなかった。
「よくなかった?」
「まあ、まあかな。悪くはなかったよ。次はね、予告にあった、あのSF超大作がいいかな」
「千夏ちゃんは男の子みたいだね」
「よく言われる」
ショッピングモールを一緒に歩きながら、真樹ちゃんはあたしの腕をとった。このころ真樹ちゃんは、やけにあたしにくっついてくる。やっぱり不安なのかもしれない。
はやく、なんとかしてあげないと。
真樹ちゃんは、このままバイトに入るらしい。あたしも知っている駅前の雑貨店だ。ちょっと少女趣味な感じの店で、台所用品とか、園芸用品とか、文具とかを売っている。
まあ、簡単に言うと、あたしが入りにくい感じの店だ。
真樹ちゃんは火、木、金曜日の夜、売り場主任として働いている。真樹ちゃんは仕事が出来る女だ。
家に帰る方向と同じなので、店の前まで一緒に行った。
雑貨店の前に、黒っぽい箱バンが止まっていた。
いやな予感がした。
やばい、これはなんか普通の車じゃない。
窓ガラスは黒くしてあって中が見えないし、ナンバーは泥で汚れている。普通、ナンバーだけが汚れたりはしない。わざと汚してあるのだ。
あたしは真樹ちゃんの腕を取った。
「やばい、真樹ちゃん帰ろう」
「え、どうしたの?」
ぼんやりした顔で真樹ちゃんが振り返ったのと、男達が車から出来たのが一緒だった。
「真樹ちゃん!」
腕を引いたけど、真樹ちゃんは動かなかった。
あたしから、離れて男達の方に歩いた。