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悪意の色
あたしはお姉ちゃんの死を清算するために、復讐をとげた。
だから、お母さんも清算しなければいけない。離婚するなら、離婚してしまえばいい。
レンジの前に立っているお母さんに、あたしは背中から抱きついた。
「あら、千夏。なにかあったの?」
「お母さん。あたし、べつに大丈夫だよ。多感な年ごろってわけじゃないし、辛いなら離婚しちゃってもいいし、あたしを捨ててもいい。お父さんは自分勝手で馬鹿だけど、娘の面倒くらいは見てくれるよ」
「ありがと千夏、でも、どこにも行くところがないのよ」
「実家には、おじいちゃんもおばあちゃんもいるよ」
「そういう意味じゃないの」
言っていることはわかる。どこにも逃げる場所なんてない。死者から隠れることは出来ないから。あたしもそれは同じだった。
「だいじょうぶよ千夏。お母さん、働くことにしたの。家にいても、ふさぐだけだから」
それがいい、外の空気に触れるのがいい。この家はあまりよくない。
この家の空気は、あたしの『悪意』で濁っているのだ。