第7話
次の日朝起きるとまだスイは水の中にいる。
よっぽど気に入ったんだね。
スイが起きる気配がないので私はご飯を食べに行くことにした。
一階に下りると焼きたてのパンの良い香りがする。
ぐ〜〜。
昨日あんなに食べたのにお腹すいた。
食堂に入るとナナちゃんが寄って来た。
「ミコトさん、おはようございます!ご飯食べますか?」
「おはよう!ナナちゃん。お腹すいたのでお願いします!」
「はい、かしこまりました!すぐ準備しますね。」
そう言うとナナちゃんは厨房の方に小走りで入っていった。
少し待つとナナちゃんがご飯を持ってきてくれた。
朝ご飯は焼きたてのパンとポトフ風のスープだ。
美味しそう!
「スープ熱いので気を付けて食べて下さいね」
「うん、ありがとう!美味しそうだね。」
ナナちゃんは尻尾をフリフリしながら忙しそうに去っていった。
ナナちゃん働き者だね。
私もご飯食べてから頑張ろう。
朝ご飯をペロリと美味しくいただき、ナナちゃんに声をかけて自室に戻った。
部屋に入るとまだスイが水の中にいる。
大丈夫かな?溺れてないよね。
恐る恐る水の中に手を入れて、スイを引っ張り出してみた。
すると、スイが起きたみたいだ。
「スーイー、おはよう。目さめた?」
寝ぼけているのか反応が鈍い。
しかし、だんだん覚醒したのか私に抱きかかえられていることに気づくと慌てだした。
「な、なに抱きついてんだよ!離せって。」
「えー、水の中で溺れてないか心配になっただけなのに〜〜。」
「水の精霊が溺れるわけないだろう!いいから離せ!」
まあ、そりゃそうですよね。
溺れるわけないか。
もうちょっとスイを抱っこしたかったけど、機嫌が悪くなるから諦めよう。
私は渋々手を離した。
「ったく、子供じゃないんだから気安く抱きつくなよな。」
スイがなんかボヤいてる。
減るもんじゃないし、いいじゃない。
とりあえず今日はやる事がいっぱいあるからスイで遊ぶのはまた今度にしよう。
残念そうにしているスイをしり目に水を片付ける。
とは言っても消えろとイメージするだけだけど。
「じゃあ、まずはギルドにクエスト見に行こうか?」
「おう、わかった。」
私とスイは宿を出て、ギルドへと向かった。
ギルドに入ると昨日と違って人口密度が高い。
やっぱり朝だからだね。
人がいっぱいだけど頑張ってクエストボードの前まで来た。
んー、私のランクでも受けられるのはどれかな〜〜。
Eランクのクエストは街中のお手伝いが多いみたい。
後は森での薬草集めや伐採とか。
モンスターの討伐はDランクに上がってからのようだ。
どうしようと眺めていたら、気になる依頼を見つけた。
内容は荷物の整理と普通なんだけど、依頼主がクローズとなっている。
もしかしてあの黒猫さんかな。
気になったのでこの依頼を受けることにした。
えっと、クエスト番号を受付で言えばいいんだね。
私は昨日のお姉さんの受付に並んだ。
「お次の方、どうぞ。」
「はい、おはようございます。No.56のクエストを受けたいんですが…。」
「あ、ミコトさん!おはようございます。クエストNo.56ですね。えーっとクローズさんのお店で荷物整理ですがこちらでよろしいですか?」
「はい、それでいいです。お願いします。」
「かしこまりました。では、ギルドカードを水晶にかざして下さい。」
私はギルドカードを呼び出し、水晶にかざした。
「はい、いいですよ。では、依頼が終わりましたらまたギルドへ報告に来て下さい。ところでクローズさんのお店の場所分かりますか?」
「あ、すいません。分からないです。教えてもらえると助かります。」
「はい、いいですよ。噴水広場はわかりますか?噴水広場を越えて大通りをまっすぐ行くと黒い屋根のお店があります。大きいのですぐ分かると思いますよ。」
「ありがとうございます!では、行ってきますね。」
依頼を無事受けてギルドを出た。
案内された通りに歩いて行くと、確かに大きい黒い屋根のお店がある。
うーん、なかなか個性的なお店だね。
なんか、屋根が黒猫の耳に見える。
やっぱり持ち主が黒猫さんだからかな?分かりやすくていいけど。
いつまでも眺めているわけにもいかんのでお店に入ることにした。
「あの〜、すいません!ギルドで依頼を受けて来たんですが…」
店の中に入ると所狭しといろいろな物が置かれている。
見たこともないような道具もたくさんある。
道具を眺めていると奥の方から誰かやって来た。
「は〜〜い、いらっしゃいませ〜〜」
出てきたのはかわいい猫耳の女の子だ。
か〜〜わいい〜〜!
抱っこしたい!耳モフモフしたい!
「あ、おはようございます。ギルドで依頼を受けたミコトと言います。クローズさんはいらっしゃいますか?」
「にゃ?依頼を受けてくれた方ですね。今、店長を呼んできます。」
そう言うとその子は奥へと戻って行った。
2、3分経った頃誰かを連れて戻って来た。
あ、やっぱり昨日助けたクローズさんだ。
クローズさんは私を見てちょっとビックリしている。
「貴方が依頼を受けて下さったんですね。凄い偶然です。いや、それよりも昨日は本当にありがとうございました!貴方がいなければ私はどうなっていたか…。」
「いえ、偶然というか…依頼書にクローズさんの名前が載っていたのでもしかしてと思って受けてみたんです。昨日のことはそんなに気にしないで下さい。」
「貴方は良い人過ぎますよ。普通この店の大きさを見たら報酬を釣り上げてもおかしくないのに……。しかし、ますます気に入りました!命の恩人の上、その気持ちの良さ、是非うちの商品を見てください!気に入った物があったらお譲りしますよ。」
「あ、あの本当に気持ちだけで充分ですよ。それに今日はギルドの依頼で来てるんです。お仕事の内容を教えて下さい。」
「欲のない人ですね〜。でも、恩人を困らすのも申し訳ないですし。では、仕事内容を説明しますね。力仕事なのですが大丈夫ですか?実は今棚卸しをしていたのですが、うちの従業員が怪我をしてしまって手が足りずに急遽依頼を出したんですよ。なにぶん重いものもありまして、本日中には終わると思うので助力の程よろしくお願いします。」
重いものか〜。
魔法で何とかなるかな?
重いもの持てればそんなに難しい依頼ではなさそうだし、頑張りますか。




