第6話
目を覚ますと薄暗くなっていた。
あれ、もう夕方。
うーん、なんかお腹すいた。
そういえば、ぜんぜん食事してないじゃん。
食堂に行けばご飯あるんだよね。
スイはご飯たべられるのかな。
「ミコト起きたのか?」
「あ、スイ。ごめんね結構寝ちゃったみたい。そういえばスイはご飯って食べられるの?私お腹空いちゃったんだけど。」
「ん、普通の人が食べる物は食べないぞ。俺たち精霊はその辺にある自分の属性の物からちょっと魔力を分けて貰うんだ。俺だったら水だな。でも、ミコトが出す水は欲しいぞ。あれはスゴくキレイな水だからな。だから後で少し分けてくれ。」
「そうなんだ。水ならいくらでも出すよ。スイのためならいくらでも!」
「お、おう、ありがとう。」
照れてスイがお礼を言ってくれる。
相変わらず愛い奴め。
そうこうしているうちにお腹がグーグー鳴り出したので一階に向かった。
食堂に着くと良い匂いがしてきた。
「あっミコトさん。ご飯食べますか?」
ナナちゃんが聞いてくる。
「うん、お腹空いたからお願いします!」
「了解です!お父さんお願い!」
ナナちゃんが声を出すと、奥から「おおー」と言う声が聞こえた。
あの声がお父さんなのかな。
それにしてもお腹空いたな〜〜。
最後に食事したのっていつだっけ?
五分くらいで食事を持ってきてくれた。
うーん、良い匂い!
メニューはパンにゴロゴロ野菜のシチュー、それから焼いたお肉までついてる!
「ミコトさんお腹空いたって言ってたから多めにしたけど大丈夫だった?」
ナナちゃんが心配そうに声をかけてくれる。
「ありがとう!ホントお腹ぺこぺこだったんだよ。全部食べられるよ!」
私が笑顔で返すと、嬉しそうに尻尾を振って他の給仕に向かった。
おお〜〜、パン焼き立てじゃん!
シチューもお野菜がホクホク美味しいよ。
お肉だって柔らかいからバクバク食べちゃう。
うーん、余は満足だと一息ついていると誰かが来た。
「腹いっぱいになったかい?」
大きいです。
大きい犬耳の人ですよ。
この人がナナちゃんのお父さんだね。
「はい!とっても美味しくてお腹いっぱい食べちゃいました!」
「おー、そうか!美味いか!そりゃ良かった。気持ちのいい食べっぷりだな。いっぱい食べて大きくなれよ。」
そう言ってお父さんは去って行きました。
ん?
大きくなれって?
私はもう成人してますよ〜〜。
童顔のせいか昔から幼く見られる。
ひとまずお腹も満たされたので部屋へ帰ろう。
部屋へ戻るとスイが寄って来た。
「ミコトー〜、お腹膨れたか?」
「うん!美味しかったよ。そうだ!スイにも水出すね。」
何かに水を入れようと思ったけど、何もないや。
どうしようかなぁ。
そうだ、魔法なんだから一般常識当てはめちゃダメだよね。
イメージ、イメージ。
球体状の水を維持したイメージで出せばいいんじゃない?
私はシャボン玉のような形状の水をイメージして集中した。
私の両手に何かが集まっている。
そしてそれを出す!
イメージ通りの水が目の前に現れた。
「おー、やっぱりミコトが出す水はスゴくキレイで澄んでるな。じゃあ、これ貰うな。」
スイは水に体を突っ込んでいる。
なかなか面白い光景だね。
本人が良いなら良いんだけど。
スイが水を堪能している間に私は本を取り出した。
今後どうするか決めないとね。
「こうアバウトな質問なんだけど、今後どうしたらいいと思う?希望としては安心、安全に暮らしていきたいんだけど。」
『ふむ、とりあえず定住先を決めた方が良いんじゃないかい。その為にもある程度稼がないといけないね。ビックラビットだって倒せたんだから魔物を倒して素材を売るのが早道かな。安全に倒したいなら魔法の練習もした方が良い。焦っても良い事はない。地道にね。』
至極まともな答えが返ってきた。
うん、わかってるよ。
日本に帰れないならここでの生活基盤を固めないとだよね。
よし、明日冒険者ギルドに行ってクエストでも覗いてみようかな。
あ、あとあの助けたクローズさんだっけ?
あの黒猫さんのお店にも顔出してみようかな。
なんか面白いもの売ってないかな〜〜。
やる事は山程あるけど少しづつだね。
とりあえずまだ疲れが抜けないからもう寝ようかな。
スイはどうしたかな?
スイの方を見ると衝撃の光景が。
なんかシャボン玉状の水の中で寝てるみたい…。
まあ、精霊だしね。良いんじゃないかな。
水の精霊だから風邪だって引かないよね、たぶん。
私も疲れたから寝よう。
おやすみスイ。




