第5話
とりあえず、ミルザさんに角を買い取ってもらった。
これで、当分宿屋に泊まれる。
てか、ここに定住するなら家を借りた方がいいよね。
でもどうしようかな。家はもう少しこの世界に慣れてからにしようかな。
うーん、と私がいろいろ考えているとスイが話しかけてきた。
「ミコト、なに眉間にシワ寄せてんだ?この後はどうする?冒険者登録していくか?」
そっかあ、冒険者登録もしないと依頼も受けられないもんね。
お金はあっても困らないから稼げる時に稼がんと。
「そうだね。まず冒険者登録しようかな。」
「それなら一階のカウンターで受付してね。ギルドカードも発行するから。カードを作ったらそれに角のお金振り込むよ。」
便利なんだね、ギルドカード。
身分証にもなるし、キャッシュカードみたいにもなるんだ。すご〜い。
「では、登録に行ってきますね。あと、どこか良い宿を紹介して頂けませんか?出来ればご飯が美味しいところで。」
「そうだね、宿だったらここから近い場所にある【安らぎ亭】という所がオススメだよ。値段もお手頃だし女性一人でも安全な場所だよ。ミルザからの紹介って言えば何かと融通してくれると思うよ。」
「ありがとうございます。ではそこに行ってみますね。」
「うん、あと困ったことがあったらその都度言ってね。力になるよ。これでもギルド長だからね。」
おどける様に言ってくれる言葉に安心感が広がる。
私、この世界に来てから会う人に恵まれてるね。
「俺だってミコトの力になるよ!」
スイがミルザさんに張り合う様に主張している。
なんかカワイイんですけど…。
さっきも怒られたし抱きつくのはダメだよね。
私は触るのを我慢してスイに言った。
「スイのこと凄く頼りにしてるよ。ここまで来れたのだってスイのおかげだもん。ありがとう、スイ!」
私の言葉にスイが照れたように笑顔になった。
やっぱり触りたい…。
私達のやりとりを見てたミルザさんは面白そうにしている。
「スイがそんなに懐くなんてホント珍しいね。まあ、スイが付いてれば安全かな。でも、慣れないことがたくさんあるだろうから気をつけてね。」
ミルザさんの言葉に御礼を言って私達は部屋を出た。
来た道を戻り、カウンターへと向かう。
さっきのお姉さんがいる。
「すいません。冒険者登録をしたいのですが。」
「あ、先程の。ミコトさんでしたよね。冒険者登録ですね。ではこの水晶に手をかざして下さい。」
おお〜、異世界感がハンパないですな。
個人情報読み込めちゃうの?
私は恐る恐る手をかざした。
すると水晶が光った。
その瞬間私の目の前にカードが出現した。
うわっ、ビックリした!
うー、なんかビックリすることだらけで心臓がイタイです。
「はい、出来ましたよ。登録自体は簡単なんですけど、このカード失くすと再発行にかなりお金がかかるので気をつけて下さいね。あと普段は心の中で『消えて』って念じれば消えるし、『出て』って思えば出現します。クエストを受ける時、また報告の時にも水晶にかざしてもらいますのでよろしくお願いしますね。」
おお〜、これぞ魔法だね。
やってみようかな。えっと、『消えて』
わっ、ホントに消えたよ!スゴイよ!
「あ、そういえばミルザさんにビックラビットの角を買い取ってもらうことになったのですが、そのお金を受け取る時はどうしたらいいですか?ミルザさんにはギルドカードに入れるって言われたんですが。」
「買い取りですね。たぶんギルド長でしたらすぐ処理してくれていると思うので、ギルドカードを水晶にかざしてもらえますか?」
私はギルドカードを出して水晶にかざした。
水晶が一瞬光って消えた。
「はい、ありがとうございます。こちらでカードにお金が振り込まれました。カードの残額を確認する時はカードに残額表示と念じれば、カードに数字が現れます。また、この街の店はカードでお買い物が出来るので便利ですよ。現金が必要な時はギルドに専用のカウンターがあるのでご利用下さい。」
「ありがとうございます。あと、クエストについて聞いてもいいですか?」
「はい、いいですよ。クエストはランクで受けられるものと受けられないものがあります。初めはみなさんEランクからスタートします。クエストの成功回数や貢献度によってランクアップ出来ます。Eランクで受けられるものは採取や街の困っている人の手伝いなどですね。あちらの掲示板でクエストの確認が出来ますよ。日付が決められているものもあるのでお気をつけ下さい。」
なるほど、いろいろクエスト受けて成功すればよりランクの高いクエストが受けられるのね。
まあ、別にランクを上げたいとかじゃなくてただ安定した生活をしたいだけなんだけど。
とりあえず今日は説明だけ聞いて宿屋に行きましょ。
「いろいろ教えていただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」
「はい、お待ちしてますね」
笑顔で見送られて私とスイはギルドを後にする。
向かうは【安らぎ亭】!
そろそろ休みたいであります!
さて、近いと言ってたけどどこかな〜。
辺りをキョロキョロ見渡すと、噴水広場に向かう道の方に看板を見つけた。
お〜、ここですね。
さあ、入ってみましょう。
「こんにちわ〜」
「はーい、いらっしゃいませ!」
カワイイ声が出迎えてくれる。
姿を現したのは犬耳の女の子だ。
尻尾がブンブン揺れている。喜んでる?
「お泊まりですか?お部屋空いてますよ。」
「はい、冒険者ギルドのミルザさんに紹介されて来たんですが。とりあえず一週間ぐらい泊まれますか?」
「ギルド長さんのご紹介ですね!でしたらサービスしますよ。一週間ですね。気に入ったら延長も出来ますのでよろしくお願いします。朝食と夕食が付きますのでその時は一階の食堂に来てくださいね。お部屋は二階になります。では、登録するのでこちらの水晶にギルドカードをかざして下さい。お部屋の鍵がギルドカードで開くようになります。」
私はギルドカードを呼び出してかざした。
ピカッと光る。
「はい、登録完了です。あ、そういえば申し遅れました。私はこの宿の娘でナナと言います。よろしくお願いします!」
「私はミコトです。こちらこそよろしくお願いします。」
挨拶を交わして部屋へ向かった。
二階に上がり部屋の前に来た。
カードを鍵の辺りにかざすとかちゃっと音がした。
便利過ぎでしょ、ギルドカード。
部屋に入り、ベットにダイブ!
バフッ!
うーん気持ちいい。さすがにいろいろあり過ぎて疲れちゃった。
「ミコト。疲れたんだろ?少し横になったらいいよ。」
スイが優しく労ってくれる。
うう〜いい子だよ〜。
「じゃあ、お言葉に甘えて少し横になるね。」
「うん、俺はこの辺ブラブラしてくるから。」
気を遣ってくれたんだね。ありがとうスイ。
私はベットに横になるとすぐに眠ってしまった。




