第3話
服も改造して準備オッケーです。
「ミコトさん、まず街にいったら冒険者ギルドに寄ってみてください。そこのミルザというものが力になってくれると思います。スイのことも知っているので、スイがいれば大丈夫ですよ。」
「俺、ミルザに会うの久しぶりだ!」
ミルザさんという人は精霊が見えるのかな?
確か普通の人には見えないって言ってなかったっけ?
「あれ、ミルザさんは精霊が見える人なんですね?」
「ミルザは精霊の血を引いているのよ。とはいえ、かなり薄まってはいるけれど。でも、精霊を見ることも会話することもできるわ。」
ふむふむ冒険者ギルドに、精霊の血を引く人ですか。
かなりファンタジーですね。
「それじゃあ、早速ですが街に向かいますね。スイも大丈夫?」
「俺はいつでもいいよ。母さん行ってくる!」
「ええ、二人とも気をつけてね。ミコトさんスイをよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそスイを連れて行って申し訳ないです。では行ってきます」
私とスイは二人で森の中を歩き出した。
とはいえ、歩いているのは私だけですけどねー。スイはフワフワ浮いてますよ。
精霊ですもんね。
もしかしてもっと速くスイは移動出来るのかな?
「ねえ、スイ。スイってもっと速く飛べるの?」
「飛べるよ。でもミコトがついて来れないでしょう?」
うーん、こういう時良く風の魔法でバーンと速くなったりしないかな。
例えばこのブーツに風を纏わせてっと。
私は自分のブーツに魔法を発動した。
おっ、なんかちょっと浮いたよ。バランス取るのが難しいけど、よっ、ほっ、。
うん、大丈夫みたい。目の前に障害物もないから試しにスピード出しちゃおうかな。
「スイ、ちょっと魔法使ってみたんだけど試してみるね」
意識を集中させて前に!
グンっと加速して……って速い!
ストーーーーーーップ!!
危ないよ。スピード違反で捕まるよ。
スイが後ろから追いかけてきた。
「ミコト!凄いじゃん!俺と同じくらい速いぜ。これなら早く街に着きそうだな」
いえ、無理です。
このスピードでは私がムリです。
スイを説得してちょっと速めのスピードで我慢してもらった。
もう少し慣れたらね、うん。
なんだかんだで2時間くらいで街が見えてきた。
「ミコト、あれがローランっていう街だよ。この辺りじゃあ1番大きい街だと思うよ。」
「へえ〜、本当に大きいね。」
うん、思っていたより大きいわ。
街の周りは外壁があり、強固なイメージだね。
そういえば、何も考えていなかったけど街に入るとき何か必要なのかな。
「ねえ、スイ。街の中に入るのに身分証とか必要なのかな?」
「うーん、どうだろう。俺が前来た時は門番が俺のこと見えてなかったからスルーだったんだよね」
ほうほう、そりゃ精霊はスルーですよねー。
もう、困った時のアレですね。
本を出してっと。意外とこれがメンドイのよね。
「ねえ、街に入る時って何か必要なの?私、何も持ってないよ。」
本が光る。
『ふむ、一般的に街に入る時は身分を示す物が必要だ。ギルドカードが代表的だな。ただ、特例措置として、金を払えば入れるぞ。金の価値は日本とあまり変わらない。こちらでは1円のことを1ルナと言う。』
お金か〜。日本のお金は使えないし。私ってばここでは無一文じゃん。
どうしようかな。稼ぐにしても依頼とか受けないとダメだよね。
私がうんうん唸っていると、スイが話しかけてきた。
「ミコト、俺が先にギルドに行ってミルザに事情を説明してくるよ。そしたら入れてもらえるかもしれないだろう?」
おぉ〜〜、スイってば頼りなる〜〜。
「ありがとう、スイ!それじゃあお願いしてもいい?」
「ああ、行ってくる。」
そう言うとスイは門の方へ向かった。
うん、確かに門を止められることなく通過していった。
精霊っていいね。
さて、私はどうしようかな。ここから離れて迷子になるのもマズイし。
ん、なんか遠くの方から叫び声が聞こえるような…………。
「…だ、誰か!たすけてくれーーーーー!!」
おお、気のせいじゃないよ。
ここって微妙に街から離れているから私しか気づいていないような…。
どうしたのかな。ヤバい感じがするけど。
とりあえず声のする方に近づいてみた。
すると、男性が大きな動物に襲われている。
何あれ?見たことない動物だよ。
急いで本を取り出す。
「ねえ、アレって何?」
『あれは、ほう珍しい。この地域ではあまり見かけない魔物だな。名をビックラビットと言う。額の角は良い薬の材料になる。弱点も角だぞ。角を折れば何故か普通のウサギの大きさになるからな。』
ビックラビットって、大きいウサギ…そのままじゃん。
弱点は角か。やっぱり硬いよね。
でも、試しに魔法使ってみようかな。あの人見捨てるのも心苦しいし。
私は男性に話しかけた。
「あの!今から魔法使うので離れて下さい!」
男性は私の声を聞いて、なんとか魔物から距離をとった。
魔物の注意が私に向いたからだ。
魔物が威嚇してくる。
怖いけどやらなきゃやられる!
意識を集中させ、角を切り取るイメージをする。
………よし、いける。私の手の中にチカラが渦巻いている。
「いっっけえええーーー!!」
私の手の中からチカラが飛び出す。
目に見えない刃が魔物の角を切り裂く。
スパーーーーン!!
ビックラビットから角が落ちた。
魔法が成功したのだ。
その途端、みるみる魔物が縮んでいく。本に書いていた通りだ。
あっという間に縮んだビックラビットだったものは、怯えるように森の中に消えていった。
私は切り落とした角を拾った。薬になるって言ってたから売れるかも。
「あ、ありがとうございました!本当に助かりました。あんな物に襲われてもうダメだと思いましたよ。」
助けた男性がお礼を言っている。
良く見てみると人間ではないようだ。うーんケモミミだね。
うーーーん、これは黒猫かな?
顔は普通に人間なんだけど、耳が猫耳、シッポもユラユラ。サワリタイ。
しかも、なんかイケメンっぽい。
「いえ、声が聞こえたので。たまたまですよ。」
「いや、あなたは命の恩人だ。ぜひ、お礼をさせて下さい。私の名前はクローズ。ローランの街で店を開いているんです。どうか一緒に店に来て下さい。」
街に行くのはいいんだけど、まず入れないんだよね〜。
あっ、スイがもう来ちゃうんじゃないかな。
「あの、今連れと待ち合わせしているので後で寄らせてもらっても良いですか?」
「そうでしたか、わかりました。では、街に来たら寄ってください。街でクローズの店と聞けばわかると思います。では、本当にありがとうございました。」
そう言うとクローズはシッポをユラユラさせながら去って行った。
あー、お礼ならシッポ触らせてもらえば良かったかも…。




