街中 後編
m(__)m 言い訳はしない。
広場についた時にはもうかなりボロボロだった。
師匠は肩で息をしていて顔を真っ赤にしている。
「し、師匠。落ち着きましたか?」
「う、うん。ってアレン!怪我しちゃってる!」
よく見ると腕から一筋血が流れていた。おそらく、引きずられているときに何処かに引っ掛けてしまったのだろう。強化魔法のおかげで体の耐久性も上がっているとはいっても俺の魔力じゃ鉄くらいにしか上がらない。
鉄でも凄いだろうって?確かに並大抵のことじゃ傷がつかないし、痛みすら感じないこともある。
だがそれは、普段の生活での話である。師匠レベルの魔法使いの強化魔法で街中を引きずり回されたら、結果はご察しである。
もちろん、師匠の攻撃を直接受けたわけではないので傷としては、そこまでついていない。
しかし、これがもし強化魔法を施していない体だったらと思うとゾッとする。最低でも骨折はしていただろう。
「今治すね!『ヴィプチ』」
回復の初級魔法である。俺にはその辺の適性がなくて使えない魔法の一つでもある。最も回復魔法は適正がある人もあまりいないので、使えない人のほうが多い。
師匠もそこまで得意なわけでじゃないので、中級までしか使えない数少ない魔法の一つだ。
「あ、いやそこまでしてもらわなくても……」
「だめだよ。傷が化膿したら腕がとれちゃうかもっと。はい、大丈夫だよ」
笑いながら、師匠はそう言ってきた。
まったく、師匠は過保護すぎるんだから。自分が師匠ということが誇らしのか、やたら僕のことを気にかけてくれる。そこが微笑ましくて、得も言われぬ可愛さなのだが。
「何にやっとしてるの?」
と師匠は首をかしげた。
「い、いえ。なんでもありません。それで広場まで来ちゃいましたが、どうしますか?」
にやにやしていたのか……。
しかし、首をかしげる師匠もまた……。
「うーん。じゃあ、ここからだったら本屋に近いからご飯の前に先に行っちゃおっか」
「はい。でも、なんで本屋に行くんですか?向こうにも本屋ありまよね。それも専門の」
「あ、今回はそういう本じゃないの」
師匠はニコニコしながら僕にそう言ってきた。
何か楽しみにしている本でもあるのだろうか。確かに学園国家には専門書なんかはかなり専門な部類まであるし、世界一の図書館もあるが、娯楽系の本は最新のものはなかなか手に入らないのでここで買っていくのは賢いかもしれない。
でも、よくそんなもの買うのをリュー様が許したな。
まあ、かなりの期間の遠出になってしまうから許したのかな。
「わかりました。では、行きましょうか」
俺は師匠の後ろから歩こうとして、少し待っていたのだが、師匠は進まなかった。
「あの、ししょ「……て」うっへ?」
「だから、手握って」
そういいながら師匠は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
かわうぃぃぃ!!!悶え死ぬ。俺は表面上では冷静に師匠の手を握った。
柔らかくて僕の手とは全く違うものに軽く感動する。そして、僕たちは仲良く本屋に向かった。
とりとめもない話をしていたら、あまり時間の流れを感じずに本屋についてしまった。
ここに来るまでに師匠は終始ニコニコしていた。僕が不思議に思って楽しみな本でもあるのかと聞いてみると
「そ、そうなんだ!とっても楽しみなの!」
と言ってきた。
もう少し話していたかったのだけども、着いてしまったからにはやることはやらなければならない。
「で、師匠今回は何を買いに来たんですか?探しますけど」
「あ、うん。本は私が探すから大丈夫!でね、アレンにはテストを受けてほしいの」
「テストですか?わかりましたけど、なぜやるんですか?」
「えっとね。学園国家では忙しくなるから、先に知っておこうと思って。色々やらせたいことあるし」
なるほど、助手の作業の任せる時の指針にするのか。忙しくなるのを見越して、今やるとはさすが師匠先見の明がある。
「私は、行っちゃうけど監督を本屋の人に頼んでおいたから頑張ってね!」
「はい!任せてください」
よし!頑張るぞ!
師匠と話し終えたら、僕は監督官と名乗る男の人に個室に案内された。
机、椅子それから監督官のためらしき椅子しかない簡素な部屋だった。
俺はとりあえず机に向かって座る。すると監督官から説明があった。
「では、アレンさん。これから試験を開始します。制限時間は90分です。何か質問がる場合やトイレに行きたい場合は手を挙げてください。退出は試験終了まではできません。それでは30秒後に開始します。………………始め!」
試験が始まった。
内容としては魔法の基礎的な問題と応用、刻印の基礎と応用、一般教養となっていた。
結構難しくて、ところどころ解らない事もあったけど、8割~7割は解けたと思う。
監督官の退出の言葉を聞いて外に出る。そこには、買いたい物が買えたのか本を抱えた師匠がいた。
「お疲れ様!試験どうだった?」
「僕の感覚としては8~7割は解けたと思います」
「うん。それなら安心だね」
「安心?」
「あ、ごめん。こっちの話」
何か一定基準に満たしてないと手伝うことができない作業でもあったのだろうか。
「それじゃあ、遅くなっちゃったけど、ご飯食べに行きましょうか」
「うん!おなかぺこぺこだよー」
そんな話をしつつ、また師匠の手を握って、元の大通りへと戻ってきた。
少し手になれたのか師匠はもうあんまり顔が赤くなかった。
それはそれで、なぜか少し残念な感じではあるが、手を少し振りながら歩く師匠も可愛いので問題はない。
大通りに出るとピークを過ぎたのか、昼前の活気は少しなりをひそめて、人もあの時よりもかなり少なかった。
そして僕たちは通りをまっすぐ進み、僕がいつも通っているとご飯屋さんに入った。
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