雨上がりと夜空。そして、始まり。
一話とこれで3000文字で抑えようと思っていたんですが、これが3000近くになる事態。
修正
幼いながらも人の目を惹いてやまぬであろう顔立ち。
見惚れて惚けてしまった。
その魔法にも姿にも。
↓
幼いながらも人の目を惹いてやまぬであろう顔立ち。
見惚れて惚けてしまった。
その額に浮かんでいた紋様も相まって神秘的ですらあった。
その魔法にも姿にも。
に変更。
それからは、あっという間だったはずだ。わかりましたの一言で済ませ、自室に戻り着替え少ない荷物をまとめすぐに屋敷を出て行った。理由としては、私が成人したから。これに尽きるだろう。別に恨んでもいないし、憎んでもいない。むしろ、ここまで育ててくれたことと殺さずに外に出してくれたことに感謝すらしている。さすがにすぐに死なれたら後味が悪いのか、当面の生活資金として10金貨をもらった。たしか、昔母様から聞いた話だが、一般的な成人男性の平均月収が1金貨と少しだったはずなので、10日分。さすがに、すぐに死んだら後味が悪いのか。それとも…
ガチャンと背後で門は締まる。もちろん、見送るものは誰一人としていない。まだ雨はすこし降っていて、傘に雨粒が打ち付けられる。
「すこし日が陰ってきていたか……」
自分ではかなり早く出たつもりが、思いのほか時間をかけてしまったらしい。まさか、未練でもあるのだろうか。
屋敷から出る前に父上から三つ言いつけられたことがある。ひとつ、今日中にこの町から出ていくこと。ひとつ、なるべく目を付けられないようこと。ひとつ、貴族としての名は二度と名乗ってはならない。私がこの家にかかわっていたことをなかったことにするのだろう。きっと一生の汚点とでも思っているに違いない。
それにしても目を付けられないことは町の中心に位置するこの屋敷から民までのことを考えると少し難しい。だが、追い出された身としては、無理難題がないだけましだろうまぁ、私自信もあの家にはうんざりしていたし、あそこから解放されると考えたら僥倖か。
とりあえず、母様と暮らしていた町にでも行こう。そこで畑でも耕して、新しい人生を始めよう。それはそうと町からでなければな。
宵闇に紛れつつ町中を進む。
「ふぅ、何とか出れたか…」
なんとか人目に付くこともなく外に出ることができた。
夕方になってしまったことも助けて、あまり人に会うこともなく通りの門のところまでたどり着くことができた。
黒いフードを被った不審者になった私に門番は、声を掛けたが顔を見せたら何事もなく通ることができた。
おそらく、父上から話が伝わっていたのだろう。
相変わらず用意周到な父上だ。
屋敷から出る時もすでに私の部屋にフード付きのマントと傘、それから当面の資金が用意されていた。
すぐに出て行ってほしかったのだろう。
「日が暮れてしまうなぁ…」
さぁてどうしようか。
森に囲まれているこの町は、夜中に門をくぐる者はいない。
オオカミが出るからだ。
このままじゃ、オオカミに襲われてしまう。
かといって、町の中には入れない。
「仕方ないか…」
とにかく、この森を抜けなくてはならない。
とにかく歩こう。
「くそっ!やっぱりか!」
案の定オオカミが現れてしまった。
森を抜けるまであと少しのはずなのに。
考えてる暇はない。
森を抜ければ開けてるし、次の町まで目と鼻の先だ。
もしかしたら、町に入り損ねた冒険者がまだ門の外にいるかもしれない。
そんな淡い希望を抱き。
とにかく走る。
雨にぬれ、風を切り。
ぬかるんだ土を踏み。
木々をよけ、草木を払い。
前を向き、決して振り返らず。
ここを抜ければ何とかなると信じ。
息を上げ、力の限り走る。
走る。
走る。
ガッ
ズシャー
「あ。」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
静寂ののかにオオカミの息遣いと足音が聞こえる。
雨に濡れた土も相まって木の根に足を取られた私は、なすすべもなく転がってしまった。
こんなことなら屋敷にいるときに少しは鍛えておくんだった。
じわり、じわり近づく足音。
荒くなった呼吸音。
立ち上がれそうにもない。
ああ、ここで俺の人生は終わりかと思った。
解放されたばかりなのになぁ。
もしかしたら、父上はここまで見越していたのかもしれない。
いや、だったら金を渡さないか。
そんなことを考えていると森のハンターたちはもう目の前まで迫っていた。
だが、特に恐怖はなかった。
ただ、痛いのは嫌だから一瞬で終わってほしい。
そう思っていた。
何もかも、投げ出してその場に投身する。
もう諦めがついた。
「せめて母様の墓には行きたかったな」
そうつぶやいて目を閉じた。
その時だった。
オオカミの規則的な呼吸音と足音。
私の荒い呼吸音。
それと雨が地を打つ音。
それだけが融和していた世界にたった一言の言葉が割入る。
『エグレイム』
突如聞こえた透き通るような声に目を見開くと同時に世界が焼けた。
直接振れていないのにそう錯覚するほどの熱量。
昼間になったのか?
そう思わせるほどの光量。
日のこととともに極太の炎は空に向かって放たれて、雲を割った。
放たれた炎は雲を割りなおも空を照らし、雨をやませた。
気が付くとオオカミはちりじりになって逃げて行った。
何があったんだ?
そう思い軽く上体を起こし、声が聞こえたほうに目を向ける。
「だいじょうぶ?」
そこに立っていたのは少女だった。
背丈は私の腰くらいまでしかなく、10歳前後に見受けられる。
しかし、その容姿は私の目を惹いた。
晴れた空から降り注ぐ月光が反射した腰くらいまである艶やかな金髪、幼いながらも人の目を惹いてやまぬであろう顔立ち、透き通るような碧眼に私は、見惚れて惚けてしまった。
その額に浮かんでいた紋様も相まって神秘的ですらあった。
その魔法にも姿にも。
いけない、まずはお礼を言わないと。
「助けてくれて感謝する。」
「いえ。」
そう短く返した彼女は上を向いていた。
「不躾だが、なぜ君のような子供がこんな時間にここに?
「つき…」
そう言って彼女は空を指さした。
「え?」
私は声を出してしまった。
つき?
空の月のことか?
「ここはきがすくないから、そらがよくみえるの」
上を見上げると晴れた空には優しい光を携えた月とそらいっぱいに輝く星々だった。
「…ほんとはまほうはあんまりつかっちゃだめっていわれてるんだけど、どうしてもきょうはそらがみたくてつかっちゃたの」
彼女はさも当然のように私に語り掛けてきた。
自分がやったことに気が付いていないのだろうか。
「でも、よかった。あなたをたすけられて」
そう言って彼女は微笑んだ。
あまりにも美しいその笑みとあまりにも凄まじいその魔法から私は、ほかにも言いたいことがあったのにあらぬ言葉が口から出てしまった。
「弟子にしてください!」
「え?」
それからは勢いだった。
今更ながら二人で自己紹介をして、弟子入りを頼み込んだ。
その時、とっさに本名を名乗れないことを思い出し、少し苦労したが…
弟子がわからない彼女に弟子を説明してる最中彼女は、つまらないのか子供だからなのか舟をこぎ始めていた。
さすがに良心が呵責し、彼女を送っていくことにして私は驚いた。
なんと、彼女はこの森の中で今は出かけているらしいもう一人と二人で暮らしているらしい。
とりあえず、眠そうな彼女と杖を背負い彼女の家へと向かう。
一晩は泊ることを約束し、考えを巡らせていく。
さぁ、どうやって弟子入りしようか。
ここで彼女—師匠との出会いの物語は終わり。
彼女は師匠へと、私は僕へとなり今の関係が築かれた。
この時、師匠の使役精霊であるリュー様は月に一度の出張でいなかったらしく、本当に良かったと思った。
この時ばかりは神に感謝をし、運命を讃えたのだった。
さあ、過去は終わり、時が流れる。
次は今の話をしよう。
なんとか、書き終えた。
次は今週中に必ず。
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