02 そして旅立ち
これから旅立ちます。
ト書きがほとんどなく、ほぼ会話文のみで話は突き進んでいきます。
こまけぇことはいいんだよ!! とサクサク進んでいきましょう。
旅立ちました。
「レベル1から?」
「レベル1から」
「スライムやゴブリンからですか?」
「そう」
「あ、その辺は普通なんですね」
「聖女ルートに準じてるだろうからね。聖女様は聖なる魔法で悪を浄化をするのよ。悪しき魔物を討伐して修行ってわけ。ちなみにシステムや敵なんかは同じ会社のRPGを横流し」
「なるほど」
私たちの目の前ではスライムやゴブリンと戦う攻略者四人。私たちは見てるだけです。
「ベアトリス! ここは任せて先に行け!」
「ベアトリス……この戦いが終わったら結婚して欲しい……返事は後で聞く!」
「ここでは死ねないな。だってまだベアトリスとキスしてないんだからね」
「ベアトリス! 見ていてくれ! 俺の生き様を!」
相手はスライムですけどね。
「ベアトリス様が主人公でいいと思います」
「何で私ばっかり!?」
「いや、私まだ攻略者の好感度上げてませんもの。そりゃベアトリス様に偏りますって」
「上げて! 上げてよ好感度! もうグイグイ上げちゃって! ほら、イケメンよ〜」
攻略者たちを指差しながら、ベアトリス様は私の肩をバンバン叩きます。
残念美人がここにいました。
「あっはっはっ。残念イケメンたちの好感度を上げろとはなかなかご冗談を」
「あああ! 私その残念イケメンたちの好感度マックスなのよ!?」
普通に乙女ゲームの時は格好いいイケメンだったんですけどね。
どうもベアトリス様がはっちゃけ過ぎたようで攻略者たちの中身が残念仕様になってしまったみたいです。
まぁ格好いいままだとコメディになりませんけど。
「ベアトリス様はこのルートを予想していたんですから、回避しとけばいいのに」
「違うの! 下げようとしたのよ! でもね、悪役フラグをへし折った後だと何をしても好感度が上がるのよ!」
「何をしても?」
「そう。例えば家でぐうたらしていても、いつも頑張っているんだから休憩は必要だよね、みたいに言うの。イジメはイヤだから本人に意地悪したら、俺の気を惹きたかったのか?とか言うし」
「ああ、確かに悪役令嬢業界では令嬢にどんな欠点があってもそんなところも可愛いね、みたいに言いますね」
「完璧な人間なんていないんだね。欠点があることにホッとするよと言われたわ」
「うわぁ、私なんて努力しても真ん中止まりなのに」
世の中、不平等ですよねー。基本ヒロイン属性で私は有利になりそうなものなのに、努力は身になりませんでしたもん。
思わず遠い目をしているとベアトリス様は首を振りました。
「多分それはヒロイン補正が入ってるわ。パラメーターでルート変わるから、入学式段階は真ん中当たりの成績だったはずだもの」
「私の努力を返して!」
「まぁ、あんまりパラメーター低いと男爵家に冤罪が降りかかってバッドエンドだったんだから、予習という意味で良かったんじゃない?」
「私は間違ってなかった! 辛く苦しい日々よ! 擦り切れた青春よ!」
「意味がわからないことになってるわよ。魔王ルートに入ってるからどこまで有益かわかんないけどね」
「上げて下げてが激しすぎです」
しばらくして戦闘が終わったようで攻略者たちがこちらに戻ってきます。
「ベアトリス、無事か?」
「ベアトリス、寂しくなかったかい?」
「お待たせベアトリス。君を待たせてしまった僕を許しておくれ」
「ふっ。ここが俺の死に場所じゃなかったようだ。俺の死に場所はベアトリスの腕の中だからな」
「あ、わかりました。RPGにありがちな戦闘開始時にキャラクターが話す台詞をみんな言ってるんですね」
「普通は代表一人がランダムで言うわよね」
「自己主張激しいですねー。乙女ゲーですから好感度によって台詞が変わるとかですかね。で、今はベアトリス様に好感度マックス」
「このルート入るまではみんなマトモだったのよぉぉぉお」
「見る影もないですが」
『ぴろりろりーん』
『エリアはレベルが上がった。
ベアトリスはレベルが上がった。
炎の勇者はレベルが上がった。
氷の勇者はレベルが上がった。
嵐の勇者はレベルが上がった。
大地の勇者はレベルが上がった。』
「戦闘してませんけど」
「まぁ、ゲーム仕様だし」
「行動しないとキャラのレベルが上がらないゲームもありますが」
「パーティーに組みこんでおけばいいってことじゃない?」
「まぁ楽してレベル上がる分には問題ありませんしね」
「多分戦闘しようとしたら、変身しないと駄目だろうしね」
そう。さすがに常にプリ○ュア変身ではありませんでした。
現在は乙女ゲーの舞台である学園の制服を着てます。ちなみに私は標準服ですが、ベアトリス様は改造仕様で余計にフリルやリボンがついてます。それでもプリ○ュア服よりはずっとマシ。夜会服に慣れたベアトリス様には相応しい服でしょう。
「……勇者様方に期待です」
*****
「くっ! 俺達ではダメか!」
「やはり、巫女の力が必要なのだな!」
やってきたのはダンジョン。中ボス登場です。
「我が名はエク○デス!」
「ベアトリス様、まんまパクリは駄目ですよ。しかも魔王より中ボスの方が格好良いとか」
「アン○イクロペディア見ながら考えたんだけど、シ○ヘイヘとかだとガチすぎて」
「いや、コメディでいくなら額に中とか書いたオークでいいじゃないですか」
「中と書くならラーメンでしょ!?」
「いや、そこ怒るところじゃないですからね!?」
「これがアラサーとアラフォーの差か!」
「いやいや、ハマった作品の差ですって」
「ベアトリス、エリア! 今こそ光と闇の巫女の力を!」
攻略者もとい勇者の声がすると、またあの光に包まれて文字が現れます。
『変身アイテムを使いますか?
はい
いいえ』
「また出ましたよ選択肢。どうせ使わないと駄目なんだろうに」
>>いいえ
とりあえずこっちを選ぶと文字が変わります。
エリアは変身アイテムの代わりに呪文を唱え始めた!
「はぁっ!? しまった、そういうパターンか!」
「エリア! アイテムの方が被害が少ないわよ!」
「ベアトリス様! めっちゃ遅いです」
どこからともなく音楽が流れてくる!
『腐女キュア♪
腐女キュア♪
腐女キュア♪
腐女キュア♪
二人は 腐女キュア♪
腐ってる♪ 遅すぎた♪
二人は 腐女キュア♪』
「これはひどい!」
「え!? なんで!?」
「喪女でしたけど、腐乱臭が漂うまで腐ってはいませんでしたよ!?」
「私、シナリオにこんなの入れてないわ!?」
「何ですって!?」
とにかく変身が始まります。
くるくると私の体が回りだし、パーツごとに変身が進みます。
「硬き悪を押し流す、キュアコー○ックってベアトリス様ぁぁぁぁ!」
「痛き悪を打ち砕く一輪の花! キュアロ○ソニンって何それー!?」
『宇宙の 法則が 乱れる』
『エク○デスは''よしこのも☆う☆そ☆うノート vol17''を装備した!』
「ひぎゃぁぁあああ!」
「よしこさん……」
「その名で呼ばないでー!」
「volの数が凄いんですけど。あ、日付も書いてますね。初代の頃ですか」
「いやぁぁぁあ!」
あまりのことに、色々突き抜けてしまいました。茫然自失とはこんな感じでしょうか。
あれですね、よしこさん、いえベアトリス様を取り乱す様を見ているとある意味冷静になれるというか。
「光と闇の巫女よ、悪を倒してくれ!」
「巫女任せの勇者……情けないですね」
「黄昏よりも暗き○在、血の流れよりも○き存在」
「魔法少女じゃなくなってますよ!?」
「ある意味魔法少女よ! ドラ○スレイーブー!」
ちゅっどーーん!
「えー。撃てちゃうんですかー? 低レベルなのに」
「意志の力はレベルを凌駕するのよ! 何よりあんな恐ろしいもの……」
「中ボスと一緒に消えちゃいましたね」
「いい? エリア。私が書いたシナリオと大きく変わってきているわ! 何が起きてもおかしくない!」
『ぴろりろりーん』
『エリアはレベルが上がった。
ベアトリスはレベルが上がった。
炎の勇者はレベルが上がった。
氷の勇者はレベルが上がった。
嵐の勇者はレベルが上がった。
大地の勇者はレベルが上がった。』
『キーアイテム''よしこのも☆う☆そ☆うノート vol17''を手に入れた。』
「ひぃええええ!?」
「キーアイテムか、いったいどのような……」
「勇者よ、それに触れてはいけないわ!」
「なんだって、ベアトリス!」
「そのアイテムからは闇の波動を感じるの! 闇の巫女である私が保管するわ!」
「そんな、ベアトリスにもしものことがあれば俺は……」
「見られた方が……いえ、それが私の使命!」
「ベアトリス様必死だな」
「エーリーアー! 余計なこと言わないで! くぅ、捨ててしまいたい!」
『キーアイテム''よしこのも☆う☆そ☆うノート vol17''は捨てられない。』
『キーアイテム''よしこのも☆う☆そ☆うノート vol17''は処分出来ない。』
「もう呪いのアイテムでいいと思うんですが」
「連呼が辛い」
黒歴史ノートに関しては感想よりアイディアをいただきました。
ダンジョンで出てくるのもありかなーって思いましたが
ボスが装備してくる方がダメージが強いかと思ったのでそんな感じで。
ちなみに喪女キュアはニコ動で動画があるようです。絶対腐女キュアあると思ったのになー。