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JohnーDough  作者: 0
3/8

Chapter2

勘のいい方はお気づきかもしれませんが、アイデアの原型は私の敬愛する小島秀夫監督と伊藤計劃氏から得ていると思います。

思います、というのも私の書いたChapter1を見返すと「これMGSじゃないか」とかを考えたりしてしまうわけです。

私が影響を受けた作品の色が出てしまうこともあると思いますが、あしからず。

 この花は、百合だろうか。


 いや、百合ではない。もっと強く、清い花。オオアマナだ。

 オオアマナ、別名「ベツレヘムの星」。花言葉は、潔白。

 ここは、墓場だろうか。

 俺は、その花畑で銃を構え立ち尽くしている。

 一人の、血に濡れた男を見下ろして。

 見ると、俺は泣いている。

「俺は泣いている」

 ならば、俺は誰だ。

 雨が冷たく降り、俺の肩を濡らし始めた。

 俺は引き金に力を込める。


 俺はベッドで目を覚ました。仕事途中の仮眠だ。

 最近、この夢をよく見るようになった。ふと頬に手を当てる。この夢を見た後は泣いていることがあるからだ。

 あの景色は何だ。

「随分うなされてたぞエド、大丈夫かい」

 そう声を掛けてきたのは同僚のフランクだ。勤務中は本名で呼ばないのがルールなはずだが。

「ああ。心配はありがたいんだが、ルールを忘れちゃいないか、フランク」

「そうだったな。ホロウマン」

 笑いながらフランクは応じる。ルールといっても、ほとんど形骸化してしまったルールだ、俺もさほど気にしてはいない。

 形骸化したルール。このテーマで小説でも書けそうだ。

「それはそうと、良いタイミングで起きたな。仕事になりそうだ」

「ジョナサンか。何か動きがあったのか」

「娘さんが余命一か月だとよ。そのことを本部に通告したら連絡がきた。不確定要素は作戦が成功する確率が下がる、だとよ」

「そいつは…あまりよくないな。殺すのかい」

「いや、それは今のところない。彼の働きはWEも評価しているそうだ。殺すほどじゃない」

「それで俺に仕事か」

「ビンゴ。任務資料は届いてるから、目を通しておいてくれ」

 そう言うとフランクは報告書を渡してきた。紙の端に油が付いていることを咎めると、「ピザを食べていたんだ」と言ってゴミ箱に押し込んであるデリバリーピザの箱を指さした。俺がフランクを睨むと、「お前も食いたかったか。すまんな」と悪びれもせず言った。この男は何かが抜けている気がする。それが意図的なのかはわからないが。

 俺は謝罪を求めるのを諦め、資料に目を通し始める。

「ジョナサン・ミラー監視任務

 任務概要:現在、巨大マフィア組織「タナトス」に潜入捜査中の捜査官、ジョナサン・ミラーに任務の障害となる不確定要素が発生した。そのため君に彼の監視をしてもらいたい。

 不確定要素とは:ジョナサン・ミラーの娘、サラ・ミラーは謎の病気「人形病」により余命一か月と宣告された。このため、彼は大きな心理的ダメージを負っていると思われる。なお、人形病の原因については只今調査中である。

 任務詳細:君の任務は監視を主とするが、彼のサポートも君の任務だ。彼の心的ストレスが任務に影響する前に彼と共に任務を遂行してもらいたい。

 共同任務新述:これから述べるのは、最も新しい情報である兵士管理システムについてだ。

 昨日、兵士管理システムについて新しい情報が得られた。それは兵士管理システムの仕組みである。タナトスの兵士は皆血中にナノマシンを入れており、体の怪我、体調、出血箇所などを常時モニタリングしている。さらに、戦闘に適した状態を維持するため痛覚マスキングや仲間との連携を深めるシステムリンクを行っている。これはPMCの規則違反とされる可能性が高い。というのも、このようなケースは初めてであり、ナノマシンが決議を通るかはまだ決まっていないからだ。このシステムは「ジェネラルシステム」と呼ばれている。そして、このシステムを管理、監視するサーバーAIがあることが分かった。このAIはJohn―Dough8000=JDと呼ばれていることが分かった。つまり、JDを掌握することがこの共同任務の成功を意味する。

 彼は現在、ブラジルにいる。明日にでも出発してコンタクトをとって貰いたい。

 君の監視官としての働きは見事だ。この任務も成功することを期待している。   WE」


 俺は目頭を押さえ、情報を整理しようとする。

「多大な情報を処理するサーバーAI」

 すべてがSFじみている。しかしこれは現実だ。揺ぎ無い事実なのだ。

「お前、これが理解できたのか」

 先に目を通した筈のフランクに尋ねる。

 フランクは降参だとでも言うように両手を挙げ、

「いいや、さっぱりだ。お前が出発した後にでもゆっくり見させてもらうよ」

 と言ってコンピュータ端末を向き、作業を始めた。

「ああ、一つ言い忘れてた」

 フランクは後ろも向かず言った。

「仕事が終わったら、一杯頼むよ。仕事終わりのバドワイザーは最高だからな。誰かが言ったそうだ。『仕事の苦労は最高の酒のつまみだ』だとよ」

「それ、お前が今考えたんだろう」

 ばれたか、と言いながらフランクは手を振った。

「幸運を」

「お前もな」

 別れを済まし、俺はブラジルへ向かったが、実は内心穏やかではなかった。


 何か妙な胸騒ぎがする。



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