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物語が始まる前の夢
たくさんのドレスを着た女が塔のような場所のホールに集められていた。
天井は高くて一番先が白い光に覆われていて見えない。
果てしなく遠いそこまで螺旋階段が伸びていた。
「あそこまで辿り着いた一人がお姫様になれます」
どこからともなく現れた黒い服の男が言った、それを合図に女たちが一斉に階段を駆け上った。
ドレスを捲り上げて、高いヒールを履いているのに猛スピードで。途中、何人もが段差を踏み外して落ちていった。それでも彼女たちは必死に上る。物語の主役になるために。
気づけば私も階段を駆け上がる女の一人になっていた。
ほとんどの人が落ちて周りが閑散としてしまった中、必死に足を動かして動かして、白い光に指先が触れそうになった瞬間に、黒服の男に手首を掴まれた。
「はい、いいですよ」
にこやかに男が言う。どうやらここでゴールらしい。
「私はどこの物語に入るのですか?」
尋ねると、男は首を傾げた。
「さあ。まだ物語ができていないので」
結局、まだまだここで出番を待っていなければならないのだった。