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女と男の夢
森の中にベッドがあった。
若い裸の女がその上にうつぶせになって寝ていた。西洋風な顔立ちで、長い黒髪が足の先まで伸びており、白い背中を覆っていた。
女はとても眠くて、起き上がるのすら億劫で、そして自分が何者であるかを知らなかった。
若い男がやって来た。
男は軍服を着て短い茶髪をしていた。女から少し離れた位置に立ち止まり、にやにや笑みを浮かべていた。
男は女が何者であるかを知っていた。
「誰だ」
女が男に尋ねた。しかし男は笑うばかりで答えなかった。
眠くて仕方がない女は早く話を終わらせたい。口調に苛立ちが混じる。
「私は誰だ」
きつく問い詰めても、しかし男は答えなかった。
「消えろ」
あまりに腹が立った女が身を起こすと、手元で鎖が鳴った。
女は手枷を嵌められて、ベッドに繋がれていた。
「お前は誰だ」
女が吠えた途端に大地が崩壊した。
男はやはり何も答えず、笑いながら亀裂の奥底へ落ちていった。
たまに自分がまったく出てこない夢を見ます。そういう時は登場人物のそれぞれに乗り移っているような感覚になります。