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きのう見た夢  作者: 日生
5/10

玉ねぎの夢

「ぼくの中身はなんだろう?」


 そう言って玉ねぎが自分のことを剥き始めた。

 私は愕然とし、そして恐怖した。


 「お前に中身なんてない!」心の中で叫びながらその場から走って逃げ出した。

 きっと玉ねぎは自分に中身がないことを知ったら絶望する。私は彼がそうなる様を見たくなかった。


 しかし走り去った先にはキャベツがいた。


「ぼくの中身はなんだろう?」


 キャベツもまた同じ疑問を口にして自分を剥き始めた。


 「お前にも中身はない!」私は涙さえ流していた。そして走って逃げた。

 逃げた先には玉ねぎがいるが、戻ってもキャベツがいる。

 完全に退路を断たれ、私は他にどうしようもなく、玉ねぎが自分を剥いているところを眺めているしかなかった。


 そして―――


 玉ねぎがすべて剥かれた後にはニンニクが残っていた。


 玉ねぎの中身はニンニクだったんだ―――


 私はほっと胸をなでおろした。

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