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玉ねぎの夢
「ぼくの中身はなんだろう?」
そう言って玉ねぎが自分のことを剥き始めた。
私は愕然とし、そして恐怖した。
「お前に中身なんてない!」心の中で叫びながらその場から走って逃げ出した。
きっと玉ねぎは自分に中身がないことを知ったら絶望する。私は彼がそうなる様を見たくなかった。
しかし走り去った先にはキャベツがいた。
「ぼくの中身はなんだろう?」
キャベツもまた同じ疑問を口にして自分を剥き始めた。
「お前にも中身はない!」私は涙さえ流していた。そして走って逃げた。
逃げた先には玉ねぎがいるが、戻ってもキャベツがいる。
完全に退路を断たれ、私は他にどうしようもなく、玉ねぎが自分を剥いているところを眺めているしかなかった。
そして―――
玉ねぎがすべて剥かれた後にはニンニクが残っていた。
玉ねぎの中身はニンニクだったんだ―――
私はほっと胸をなでおろした。