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第七話 幼馴染

 その後、見事に授業終了の鐘と同時に目を覚ました俺は、都子を待つべく自教室へと向かった。教室に着くと、残っている人はほとんどいなかった。それから五分ほど待つと、目当ての人物がやって来た。


「おっす、今日はどんな要件ですか。都子さん」


「そんなことより、またやられたの?」


俺を発見するなり、腫れている俺の頬をゆっくりと、優しく撫でた。


 都子は、修平と同じくしてSクラス。文武両道、才色兼備。宝石を思わせるほどに美しい金髪に、青空を思わせるように澄んだ碧眼。顔の造形もかなり整っている。おまけに実家は貴族。と、俺とどうして接点があるのか全くわからないほど良く出来ている奴だ。


「ん、空にか? もう慣れてるからいいよ」


「慣れてるって、ダメだよ。今回は仕方ないけど、燈也、今度危なくなったらすぐに私か修平を呼ぶのよ。いいわね?」


真剣な顔でじっと見られる。ああ、いつ見ても眩しすぎる。


「わかったから。それで、当初の要件を聞かせてくれないか?」


「そうそう。ねぇ、燈也。今から一ヶ月後、何があるか知ってる?」


 一ヶ月後か。何があるんだ? 俺の親しい人間の誕生日なわけないし、長期休暇か? いや、それもないな。……わからん。


「わからない」


俺が答えると、都子は少し呆れたような感じではあるが、笑みを浮かべた。


「やっぱりか。一ヶ月後にさ、学年別トーナメントがあるんだよ」


「学年別、トーナメント?」


「うん。一年生はこの先の学校側の評価に、二年生は一年間での成長を見せるために、三年生は力量の見極めに。ってそれぐらい重要な行事の一つなんだけど?」


「全く知らなかった。で、そのトーナメントって戦うんだよな?」


「戦わなかったらトーナメントじゃないよ」


「だよな。で、それだけ?」


 俺が聞くと、都子は首をかしげ「それだけって?」と返してきた。


「いや、それを教えてくれるためにわざわざ?」


「あ、いや、その……」


 急に都子がもじもじし始めた。スタイルもハンパない分、こう、精神的にグっとくるというか、その仕草だけでエロチックというか……


「な、なに?」


 あ、やべ。ついどもっちまった。


「あ、あのね。燈也がよかったらなんだけど、私と一緒に……」


「い、一緒に?」


 やましいことなんて何もない。でもね、目の前で幼馴染が滅多のしないしおらしい態度で、顔を少し赤らめながらこちらをチラチラ見るんですよ? 生唾もゴクリと飲んでしまいますよ。


「私と一緒にね、大会に向けて修行……しない?」


「……修行?」


いや、わかっていましたよ。俺の勝手な想像だと。


「うん。私ね、一応火の属性は使えるからアドバイス出来ると思うし。燈也の実力をあげたいなと思ってるんだけど……」


 なるほど、そういうことか。では何故あんなにも俺を誘わ……もとい、惑わすような動作を?

しかし、修行ねぇ。【闘神】は使わないし、世間評価もどうでもいいけど……


「だ、ダメかな?」


少し涙目になりながら、上目遣いで見られたら断れないでしょ。


「いや、全然。むしろ喜んで」


 それを聞くなり、満開の笑みで「ありがとう」と俺に言った。大丈夫、俺の幼馴染はいつも可愛すぎて困る。


「じゃ、一緒に帰らない?」


 都子は俺の腕をそっと引きながら相変わらずの笑顔で言った。


「あ、俺さ。この後生徒会室いかないと」


「生徒会……あーーー! そういえば何で燈也がさくら先輩と約束なんかしてるの?」


「いや、よくわからないんだけど。会長さんが俺を探していたらしい。そのことを今朝言われて、放課後生徒会室に来いと……あの、都子さん?」


「ん? なに、どうしたの?」


 ヤバイ。話していると何故か花も恥じらう乙女の可愛い笑顔だったのに、無表情になってきている。都子がこんな表情したときはマジで機嫌が悪い時だ。最後に見たのは、高田さんの家の恭太くんといちびって、ナンパに出かけた中2の夏以来だ。


「い、いや。都子はどうしたの?」


「私? 別になんにも。ねぇ、燈也」


「は、はい!」


「私もついていって、いいよね?」


 いいかな? ではなく、いいよね、だと。雰囲気からして有無を言わせないオーラを放っているし、ここは素直に従うしかない。


「い、いいよ。じゃ、行こうか」


「うん! さくら先輩待たせてるよ。早く行こう」


今度はいつもの笑顔に戻り、スッと俺の手を握って歩き始めた。

いや、本当に怖かった。


俺は都子の手を払うことなんてできないので、手を握ったまま二人で生徒会室に向かった。


俺はそのやりとりを終始、もう一人の幼馴染に見られていたことに全く気づいてなかった。

次に生徒会長さんとの話し合いです

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