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第二話・黒い男

俺は、屋上についたが、違和感を感じた。


扉の向こうに誰かいる。この時間帯、誰も来るはずのない屋上に人の気配がある。いや、絶対いないと断言はできないのだが、どこか異質な存在感がある。


俺は、その時、何を思ったのか、その屋上の扉を開いた。


差し込んでくる夕日が綺麗だ。だが、その夕日の中に、俺の感じていた違和感の正体がいた。



女生徒と、黒のライダースを着た男が構えている。


女生徒はその手に刀を持っており、男は籠手をつけていた。どちらも日差しで顔がわからない。最も、男はフードをかぶっており、余計に分からないのだが。


扉の閉まる音に気づいたのか、二人がこちらをむく。


(あ、これなんかやばい気がする)


頭の中で嫌な予感がした。


すると、男のほうが口を開いた。


「お、そっちから来てくれたのか。嬉しいぜ相棒」


ニヤリと男が笑ったような気がした。


「そんな、嘘でしょ」


女性の方は、信じられないと言った声を出した。


「おっと、隙を見せるなよ」


女性が気をこちらに空した時、男が首にトンと、一撃入れる。どうやら気を失ったようだ。


「さぁ、邪魔者のプリンセスは居なくなったぜ。相棒」


俺は、男が何をしたのか一瞬わからなかった。消えたと思うと、既に女性の方は気を失っていたのだから。そして、この男が放つ異質な気に恐怖を覚えた。


「相棒? 俺、あんたのこと知らないんだけど」


「はっ、あまりにベタな質問だな。俺の名はミゼル。新たな世界を築くモノだ」


なんだそれ? こいつ頭イってんのか。


「理解、できないみたいだな。まぁ、別にいい。なんせお前はここで死ぬんだからな」


殺気があふれる。こいつ本気かよ。絶体絶命のピンチだ。正直女生徒はほっといて逃げ出したいのだが、そう言うわけにもいかない。俺にだってプライドのプの字くらいある。



「さぁ、俺と一緒に踊ってくれよ。輪舞曲をな」


「こっちは御免被りたいけどな」


「クックックっ。そう言うなよ」


ミゼルが構えを取る。くそっ、どうすればいい。あまりの展開と、恐怖で脳がフリーズしそうになる。


「on your mark……ready…轟ッ!」



速い、異常な速度でミゼルが突っ込んでくる。


「なっ、嘘だろう!」


「ヒィヤッハァァ!」


めちゃくちゃ速い!なんとか横に飛び、回避行動を行う。かろうじてよける。


「お、意外によけるのか」


俺は転がりながら避け、直ぐに立ち上がる。

Shit、何て速さなんだ。正直ありえない。俺の魔術使ったところであんなクレイジーな速度で動くやつ捉えんのはまず不可能。できたとしても、発動させようとしている間にやられる。どうすればいい。



「別に逃げてもいいんだぜ? 逃さねぇけどな!」


「ッ!」


「ほらよッ。ラァァァァァァ」


目では捉えられない拳の連打が降り注ぐ。その速さによけきれず、もらってしまう。


「ぐ、ガァァァァァァ」


全身が痛い。威力もえげつない。


「ほう、当たったのは七発、直撃は三発か。とっさの回避にしては上出来だな。褒めてやるよ」


お褒めに預かり光栄、だ、ねッ。


蹴りを入れるがあっさりよけられてしまう。


「糞が! 偶然に決まってんだろ」


「いいぜ、面白くなってきた。もっと楽しませてくれよっ!!」


俺は楽しくねぇ。本格的にやばくなってきたな。


「お断りするよ」


「そう、言うなよっ!!」


今度はもっと速いスピードでミゼルが来る。


「ヒヤッハァァ!!」


俺は腰を低くして、両腕でガードする。


「お、よく止めたな」


なんつう威力だ。全身の気力を削がれた感じがする。それほどに、重い蹴りだった。


「だが、あめぇ!」


急にグンッと体をもっていかれる。


「な、ぐぁ、かはぁ」


そのままけり飛ばされる。何が起きた? 急に威力がダンプみたいに跳ね上がった。



「ぐ、うぁ」


「よう、動けないみたいだな。ホントなら頭がスイカみたいに吹っ飛んでたんだが……命拾いしたな」


まじかよ、なんつぅ威力だ。左腕が感覚がない。


「そろそろ飽きたしな。終いにするぜ」


ミゼルの籠手から魔法陣が展開される。


「こいつを使うからには確実にお前のハートを貰い受けるぜ」


マジかよ、ヤバイ。このままじゃ死んじまう。本気で、本当に力が欲しい。戦う力がッ!!






チリン、と頭の中で何かが響くとが聞こえた。


すると、視界が暗転し、俺の目の前には異形の門がそびえ立っていた。他には何もない。


俺は、困惑するでもなく、ただ、その門に触れ、扉をあけた――――






「はぁぁぁあああああ!!」


突如、全身から力が溢れ出す。


「な、なんだぁ?」


扉を開いたと思えば視界が元に戻り、全身から力が溢れてくる。何が起きたのか全く理解できない。けれども……


「なんだかよくわからないけど、これで戦える!!」


「ほう……なるほどな。ちっ、…から……めざめ……なる」


なんだ? 急にぼそぼそ呟き出したぞ?


「いいぜ、燈也。少しだけ、相手してやる。……ヒヤッハァァ!!」


ミゼルがまたしても弾丸のような速度で迫ってくる。


「ッ! 右!!」


俺は腕を突き出し、ガードする。ミゼルは一瞬驚いたような表情を浮かべるが、すぐにニヤリと笑った。


「やっぱりか。いいぜその反応。濡れてくる、ぜッ!!」


ミゼルがふわっと腰を浮かせたかと思うと俺の視界から消える。焦ってすぐに探そうとする。


「……斜め後ろ!」


すぐに反応し、防御する。



おいおいおい。よくわからんが、反応できる。体が追いつく。これなら行ける。


「おいおい、人間が反応できる速度じゃねぇぞ。これでもついてこれるのか」


「よくわかんねぇけど。今度はこっちの番だぜ!」


俺は勢い良く駆ける。そしてミゼルを殴る。


「ッと、いいパンチじゃねぇか。だけどな、あめぇ!!」


ミゼルが返しの連打を撃つ。さっきまでの俺ならこれで死んでる。けれど……


すべての軌道がわかる。避ける時も、体が動く。俺はすべての連撃をかわし……


「調子に乗るなよ、人間風情が!!」


「がぁ、あああああああ!」


全て躱した。そう思った矢先。ミゼルの一撃が俺の体をいぬいた。


「あ、かはぁ、ぐぅ」


あまりの激痛に声も出ない。息も絶え絶えだった。


そこにミゼルが歩いてきて、俺の髪を持ち、顔を近づけると言った。


「よう、期待通りの結果だったから命は助けてやる。俺も時間がなくてなぁ。人間にしてはよく頑張ったよ。じゃぁな。俺に殺されるまで殺されるなよ」


それだけ言うと、ミゼルは俺を放り投げ、消えた。



俺は理解できなかった。いつ俺は攻撃を貰ったのか。そして、あいつの言った人間風情という言葉の意味を。考えようとするが、脳が拒否をする。俺はそのまま混沌に飲み込まれていった。

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