可愛い×可愛い
三題噺もどき―はっぴゃくよんじゅうに。
自転車を押しながら、校門へと向かっていく。
途中、グローブを持った学生とすれ違う。
テストが終わったその日から部活再開か……たいして強くもない野球部なのに、大変なことだ。何か大会でもあるんだろうか。運動部はそれなりに大会や練習試合をしているイメージがあるが……こんな中途半端な時期にするんだろうか。
「……、」
少し冷たい風が吹くが、陽が照っているので少し汗ばむ。
昼間はどうしても……雨が降ったり曇ったりしない限りは暑さが勝る。
これでも先週よりは気温が低くなっているらしいが、体感何も変わっていない。夜は寒いと思うけれど。
「……」
校門を出てすぐのところで立ち止まり、邪魔にならないようによける、一応。
多分、もうほとんどの学生が帰っているだろうし、それ以外は部活に勤しんでいるだろうから、校門を通る人はあまりいないだろうけど。
「……」
一端、自転車を止め、スマホを取り出す。
後ろに背負っているリュックのポケットの中に入れているので、すぐに手に取れる。
ただこれ、そのうち落ちていやしないだろうかと少々不安になる。
まぁ、穴が開いたりしない限り落ちることはないだろうけど。
「……」
時間を確認し、少しだけゲームを開く。
そんなに時間はかからないだろうけど、ちょっと時間つぶしに。
とはいえ、放置ゲームなので、特にすることはない。
ただ何となく開いて、なんとなく眺めているだけ。
「……ん」
そうして、ほんの少しの暇つぶしをしていると。
足元に何かが近づいてきた。ただの葉っぱかと思ったが、全くそんなことはなく。
黒い少し細身の猫だった。
「……」
この辺りはよく猫がいるらしいが、この猫、人懐こすぎないか。
小さく口を開き、に、と鳴いている。
所謂地域猫というモノなのか、野良にしては毛艶がいいような。
「……撫でて良いの」
スカートが地面に付かないように、太ももに沿わせながら膝を折る。
そうやってかがんでも逃げないあたり、やはり誰かに飼われているか地域猫だろう。首輪はないようだから、野良かな。どこの子だろうか。
「……」
スマホをリュックに直しながら、もう片方の手でするりと撫でる。
さらさらとしているのに、どこかふわふわとしているような、不思議な感触が返ってくる。
すりすりと体をこすりつけてくるから、うまくなでられない。
可愛いなぁ、猫。家で飼うことは出来ないが、犬よりは猫派なので、こういうタイミングがあればずっと撫でていたい。
「……」
可愛い。こういう時って、可愛い以外の感想が出てこないんだけど、どうなんだろう。みんな可愛い以外の感想あるのか。
「……」
「……」
「おまたせ~」
「!!」
そのふわふわを堪能していると、後ろから声がかかった。
ちょっと担任に捕まってた~と言いながら、長い黒髪を風にされるがままに、自転車を押してきた。あの子だ。
「あ、猫ちゃん」
「かわいいよ」
他に人が来ても逃げないのかこの猫。
ホントに人なれしている上に、人懐っこいんだな。
私と同じように自転車を止め直し、横にしゃがみ込むあの子。
「え~かわいいねぇ」
「ね」
そういいながら、さらさらと猫の体を撫でている。
ニコニコと楽しそうに。
猫もまんざらでもないようにするすると移動したり、身体をこすりつけたり。
小さな声で、鳴いて見せたり。
「よしよし、いい子だねぇ」
「……」
可愛いと可愛いは、最高に可愛いんだなと思う。
好きなものと好きなものはいくら掛け合わせても、倍にしかならないんだなと。
今この時をカメラに収めたいと思いつつ、目に焼き付けておこうと。
「可愛いねぇ」
「……」
かわい。
お題:猫・グローブ・ゲーム




