夢なら醒めて
カリナは小学校から帰って来ると、すぐに小学校指定の半そで半ズボンに着替え、お気に入りのクマのぬいぐるみの左腕を掴んで、赤いロープジャングルの公園に向かった。
「イーグルっ!早くこいつにイーグルチェンソーで止めを刺してくれっ!」
「わかったっ! 早くパワーをチャージさせて目玉怪人をやっつけなくてはっ! ピーチっ!早くそのクスリを俺に打ち込んでくれっ!」
シュウイチは必死に暴れるユイを羽交い絞めにして動きを止めていた。
チャージされてキマったタケルがチェンソーでシャークに羽交い絞めにされた無抵抗のユイを切り裂いていた。
四方八方に飛び散る血とユイの泣き叫ぶ声が耳の内側で響いた。
「あっはははっ! ひぃひぃ クックック」
ユイを処刑した彼らを笑ってこちらに気付かせたのは自分自身だった。
四人のグループは突然、誰かの笑い声が聞こえて、我に返った。
気が付くと今まで戦いごっこをしている四人全員が自分に気付いてこちらを見ている。
カリナはクマのぬいぐるみをぷらんと下げたままみんなを見ていた。
まるで悪夢を見ているようだった。
夢ならば早く醒めてほしいとカリナは願った。
自分の意思とは関係なく、自分自身のストーリーが進んでいくのだ。
神の視点からカリナはしばらく自分自身を見ていた。
「しかしだな、四次元戦隊ヨンバルカンのメンバーは揃っちゃってるからなあ……どうしようかなぁ」
イーグルは腕を組んで真剣に考え込んでいるようだった。
この合否は完全にリーダーのイーグルに委ねられているのだ。
少しの間が空いて、リーダーは合点がいったというように広げた左手の平に握った右手を音が鳴るように叩いて言った。
「わかった! 何かが足りないと思ってたんだよ 悪者っ! お前悪役やってくれるなら仲間に入れてやってもいいぜ!」
イーグルはとてもいいことを思いついたと自信を持って堂々とカリナに提案した。
「えっ!いいの?仲間に入れてくれるの?」
(この仲間に入っちゃダメだ!!)
「うん いいよ でも悪役な 女の悪役ね」
イーグルはカリナの持っているクマのぬいぐるみに目配せをして、顎で何かを指図した。
勘の良いカリナは察して、イーグルにニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
(ダメ。 ゼッタイ。)
過去は変えられないようで、思い出の通りに進んで行くようだった。
「プシュッ プシュッ どうだ!痛いか! クマめっ!」
カリナは自分のお気に入りのクマのぬいぐるみのお腹を本物の包丁で何度も刺した。
クマのぬいぐるみはお腹を割かれて、赤い糸が液体のように出て来ていた。
お腹がへこむ度に眉毛が八の字になって笑った表情を作っていた。
カリナはクマぬいぐるみの表情があまりにも不気味だったので恐ろしくなって思わず手から離してしまった。
クマのぬいぐるみは笑いながらカリナを見つめているようだった。
「おおっ!!さすが悪役だ!自分の仲間を平気で痛めつけているぞ!」
カリナはこの状況がまったく理解できず、叫んでも声にならなかった。