ピーチ=ヒカル
カリナはピーチと女同士のような付き合い方で接していた。
ピーチはヒカルという名前の綺麗な女の子ではなく、嘘のような本物の男の子だった。
「僕もよく分かんないだけど、お母さんは好きにすればって言ってくれているんだ」
「ふうん……」
カリナは中学生の頃を思い出していた。
ヒカルのビジュアルを見ていたかったので、隣に並んで座らずにできるだけヒカルの全身が見えるような状況を意図的に作って、真向かいで二人きりになることがあった。
「えっ?どうしたの?カリナ……なんか今日怖いよ……」
「うん ヒカルさぁ ヒカルはタケルのことをどう思っているの?」
中学校の体育館の裏にヒカルを呼び出して、気が付くとカリナはヒカルを質問責めにしていた。
放課後に呼び出されたヒカルはカリナと他の集団にもしかしたら、リンチにあうのではないかと覚悟をしていた。
「うちのリーダー? ん~……リーダーだなって思っているよ」
「それだけ?」
「うん」
カリナはヒカルの目をじっと見つめてからもう一つ質問した。
「ヒカルは男と女はどっちが好きなの?」
「えっ!! 何だよ急に えっ? どっちだろ……よくわかんないんだよね」
ヒカルのはにかむ笑顔にカリナは堪らなく悶絶していた。
これが観たくてカリナはヒカルをつい虐めてしまう悪い傾向があった。
「いい?ヒカル 男だったタケルね でも女だったらあたしがヒカルを嫁にするから!!」
カリナはヒカルに抱き着いてしばらく離れなかった。
ヒカルは怯えながらカリナの成すがままにされていた。
「そしてね……なんかね ヒカルさあ 普通に女を超えてくるのやめてくれない?」
カリナはヒカルの耳元で静かに声色を落として、冷ややかに囁いた。
「ひぃぃ~っ」
ヒカルはカリナの言葉を聞いて背筋に恐怖を走らせたという。
これ聞いてカリナは身震いするほどの歓喜を感じてしまうのだった。
ほとんど病気に近いカリナの性癖がヒカルという男の子を虐めることで開花していった。
五人で映画を観に行くことになったときのことだ。
ヒカルが集合時間に一人遅れてきたときに四人は見惚れてしまい、怒るのを忘れてしまったことがあった。
ヒカルは普段黒縁のメガネを掛けていてショートヘアーであまり目立たない子なのだが、休日に会うと恰好は真似したいというか、もはやヒカルになりたいというような洋服選びとなっていた。
お母さんと一緒に服を買いに行くらしい。
このときは白いTシャツに肩から紐でつり下がったパステルピンクのワンピースがヒラヒラとしていた。
白いポーチを肩から掛けていてどこからどう見ても女子よりも女子だった。
学校で男子の制服を着ているヒカルと本来の解放された素のヒカルではあまりにもギャップが激しすぎる。
タケルが気を取り直して口にした「なんか今日のお前は良いと思うよ」という言葉に対して、ヒカルがただただはにかんで喜んでいた。それがまた女子の先を越えた可愛さだった。
このときにカリナは完敗したと思った。