七話 9人の肩書
客間は意外と、さっきの部屋の近くにあった。
通され、備え付けられたソファに座ると、クトルはドア近くに立った。
「クトルは座らないのか?」
「はい、僕は創造神様をはじめとする上級神様に仕える精霊ですので、そのようなことは許可がない限り。」
そう言われると何とも言えない気もするが、やっぱり持ち上げられて接されるとむず痒い。
「俺は人間だよ。だから別に座ってくれて構わないし、そうしてくれたほうが嬉しい。」
「…わかりました。では失礼します。」
向かいの席にちょこんと座るクトル。
そういえば気になってたけど…。
「なぁ、クトルって身長何センチ?」
「身長ですか?162cmです。」
「余裕で負けた!俺152cm。」
「10cm差ですね。」
「言わないで?」
くっそ…顔はちょっと幼く見えるから勝てるかと…。
まぁ視線的に負けるだろうとは思ったけど!!
「…不思議です。不安じゃないのですか?急に"ベルギア"に来て。」
ベルギアと呼び捨てにしているということは、この世界のことだろう。
「うーん…不安ではあるけど、まぁ良いかなって。楽しんだもん勝ちじゃない?」
「すごいですね。」
伊達に17年こんなメンタルで生きてないからな。
そういえばまだ知らないところがあった。
「なぁクトル。クトルは何の精霊なんだ?」
「僕は獣の精霊です。」
「獣?!!全然見えない…。」
「よく言われます。」
かなり意外だ。
もうちょっと可愛らしい精霊なのかと…。
「ちなみに、六大神様方やイオラにも、このような肩書があります。アングレ様は地水神、クフェア様は火風神、キュラス様は音神、ジニア様は時神、ルベール様は知神、カトレア様は妖神、イオラは海の精霊です。勿論他の神々や精霊にもあります。」
なるほど………アングレは目、クフェアとイオラは髪の色通りって感じだ。
ベルギアは出てこなかったが、普通に創造神だろう。
「じゃあ、死神っているのか?」
元の世界…現世と言っていたか、現世では有名な神だ。
天照大神や素盞雄尊などについても気になるが、ロマンを言うなら死神だろう。
だが、クトルは難しそうな顔をして答えた。
「…いらっしゃいますが、もう2292年ほど姿を現していないと聞きます。良い噂もありません。」
「聞きますってことは、詳しくは知らないのか。」
「はい。僕は異界歴3045年生まれですので、それ以前のことは知識としてしか知りません。」
「異界歴?」
現世で言う西暦みたいなものだろうか。
3045年…クトルが生まれた時点でも、こっちは遠く及ばない。
「この異界"ベルギア"ができてからの年数です。今は3292年、日付は6月10日です。」
「日付は現世と同じなんだな。」
「そうなんですね。」
待て、ということは…。
「クトル250近くいってる?!」
「惜しい。247歳です。」
いや変わらんがな!!
何となく他のみんなの歳も気になったが、それを知ると立場が違うどころじゃなくなりそうなのと、とんでもない数字が出てきそうなのでやめておく。
いつか聞こう。
いつか。
その後もクトルと駄弁っていた。
結構面白いやつで楽しい。
突然聞こえたノックの音で、そこそこの時間が経っていたことに気がついた。
返事をする前にドアが開いた。
なんか既視感あるぞ。
「失礼する。あき…」
ドアを開き入ってきたのはルベール。
部屋の中を見て少し驚いたような顔をして止まった。
「随分仲良くなったんだな。」
少し慌てたようにクトルが立ち上がり、軽く礼をした。
「申し訳有りません、指示もなく座ってしまい…」
「いや良い。ほかの奴らも言ってるが、気負いすぎるな。」
そう言ったあと、ルベールが俺に向き直った。
「明楽。お前はまず私の屋敷に来ることになった。行くぞ。」
「今?!いやもう持つものとかないけど…。」
心の準備というものがある。
一応言っておくが、ルベールはかなり美形だ。
全員整った顔立ちだったが、ルベールは中でも群を抜いてイケメンだ。
男の俺でも少し見惚れるくらいは。
「クトル、また。」
「はい、今度仕事を持っていきます。」
ルベールはクトルの言葉に苦笑いをしながら俺に向かって、来いと言う。
ついていく前に、一言だけクトルに挨拶をしたい。
「クトル、話し相手になってくれてありがとう。また話そうな。」
「はい、こちらこそありがとう御座いました。またお会いしたときにでも。」
先に部屋を出たルベールに早足でついていき、俺は創造神の屋敷を出た。
他の神とはあまり話すことができなかったが、また機会があるだろう。
「すぐ屋敷に行くのか?」
「いや、少し寄り道をしていく。」
寄り道なんて意外だ、と思っていると、ルベールは俺が願ってもないことを言った。
「お前とお前の家族の様子を確認しに、観世水晶を見に行く。」




