十話 ルベールの屋敷
格好良い自己紹介を披露したルベールの屋敷の内装は、過度な装飾はなく、シンプルなデザインだった。
イメージ通りと言うかなんというか、出会って1日もしてないが、ルベールらしいなと思った。
「ここがリビングだな。あそこはダイニングキッチン、そこの突き当たりは生理衛生あたりが集まっている。2階含め他はドアプレートを見ればわかる。」
「後で見て回るわ。」
「荒らすなよ。」
それくらいわきまえている。
身長のせいか、ちょっと子供のような扱いをされている。
事実、年齢的には保護されるべき子供なのだが。
「お前の部屋は…私の自室近くの客間にする。何かあると私が困る。」
「何かやらかすとでも?」
ルベールは返事をしないでそのまま歩き始める。
腑に落ちなくはあるが一応ついていき、リビング近くの階段を上がる。
2階はずらっと同じようなドアが並んでいて、プレートに文字が書いてあるものとないものがある。
真ん中は吹き抜けで、リビングと反対側の廊下がよく見える。
1階にもそこそこ部屋があるようだが、2階はそれより数がある。
さっきも思ったが、何に使うんだ。
ルベールは少し左の方に歩いたあと、プレートに『来客用』と書いてある部屋の前で止まった。
「ここがお前の部屋だ。私の部屋はそこの突き当たりにある。何かあればすぐに言え。」
「わかった、中見て良い?」
「勝手にしろ。」
ドアを開き、部屋に入る。
部屋の中は予想通りシンプルで、大きめのベッドと机や椅子等が置かれている。
普通に生活するに不便はないだろう。
「…若干思ったんだけど、ルベールって物欲ない方?」
「まぁ、自分が欲しい物以外は基本持たん。いらん物はタンスの肥やしにしかならない。」
正論やめてほしい。
俺はいらない、使わなそうなものでも捨てるかどうか1分以上悩む。
邪魔になることは目に見えているし実際使ってないのだが、どうしても勿体ない気がする。
「あとは何かあるか?見せるものは見せたぞ。」
「うーん…この世界のことを教えてほし」
ぐぅ……
この世界のことを教えてほしい。
そう頼もうしたのにその瞬間、気の抜けた音が鳴った。
出どころは勿論、俺だ。
「お前呑気だな。」
ルベールの口元が少し笑っている。
こいつ、人をバカにする趣味でもあるのか?
「悪かったな!!腹なんか誰でも減るだろ!!」
時間的にも多分、腹が減る時間だろう。
いらっとして言い返すと、驚きの返事が返ってきた。
「いや、我々は基本減らん。」
マジか。
神力といい特殊な道具といい、随分人間とは勝手が違うようだ。
それもそうか。
「ってことは、食事いらないのか?便利な体だな。」
「必要はないが、好んで食事をする者は多い。私もたまに食べる。」
「へぇ、面白いな。普通に野菜とか動物とか育つのか?消化とかは人間と同じ?」
「野菜や果物などの植物は育てたり、専門の神や精霊に頼めば手に入る。動物は特定の区域でしか育たないため、誰かに頼む者が多い。食べたものは消化されるが排泄は体調を崩さない限りしない。消化された食物は、微量だが神力の一部になる。一応、満腹感はある。だから、減れば減った感覚もある。」
流石というべきか、分かりやすく色々教えてくれた。
この世界に食べ物がなかった場合、飢える可能性も考えたが、杞憂だったようだ。
「とりあえず、今日はあるもので何か作ってやる。アレルギーはあるか?」
「ない!好き嫌いも基本ない。」
「あっても無理矢理食わせるぞ。」
「俺ら今日初めて会ったんだよな?!」
「一応。部屋にいていいぞ、出来たら呼ぶ。」
今日が初対面の割に、たまにだが普通に容赦ない。
普段カトレアやジニアにいじられている分発散してるのだろうか。
そんなに性格悪いとは思いたくない。
と考えているうちにルベールはさっさと1階に降り、準備をしている。
ちゃんとエプロンを着ているようで好感が持てる。
ルベールが何を作るんだろうか、腕前はどのくらいなのだろうか、など予想しながら改めて部屋の中を見る。
一時的だが、新しい住まいだ。
少し、いや、全く変わってしまった環境と今までの環境への感傷に浸りながら、ベッドに飛び込んでみた。
見た目よりふわふわだったそれは、俺を眠りにつかせようとする。
同時に微塵も感じていなかったはずの疲れも襲ってきて、俺は気絶するかのように寝てしまった。
___あまり良くない夢が、待っているとも知らずに。




