九話 知神の自己紹介
俺はすぐに観世水晶から離れた。
ルベールはそれを確認し、手をパンと一回鳴らした。
すると水晶がはじめの状態に戻り、3人の姿も見えなくなった。
「これ、俺がやろうとしてもやれるのか?」
「特別に何かしない限りできない。これを使うには神力が必要だからだ。」
「なにそれ?」
「簡単に言うと、神や精霊のみが所持している力のことだ。能力を使うときや、観世水晶のような特殊な道具を使うのに必要なものだな。」
よく漫画や小説で見る、オドやマナ等の魔法を使うための力のようなものか。
さっきの光はそれが可視化されたものと考えられそう。
「神力なのに、精霊も持ってるのか。」
「ああ。だが純度は神のよりやや低い。精霊の前でこれを言うと、差別的にも取られるから言わないほうが良い。」
「わかった。」
神でも精霊でもない俺は神力を微塵も持ってないのだろう。
特別に何かしない限りと言っていたが、ちらっと出てきた能力等のことだろうか。
立ち話を長引かせる気はないため、また今度機会があれば聞くことにした。
「帰るぞ。」
「帰るって、ルベールの屋敷に?」
「他にどこがある…いや、仕方ないか。大した場所には行ってないからな。」
そりゃそうだ。
こちとら異界に来て半日も経っていないのだ。
「少し歩くが足に障害などないか?」
「ない。前何回か捻挫はしたけど完治してるし。」
「わかった。行くぞ。」
と言い歩き出したルベールの後ろについていく。
先程歩いた道を少し戻り、すぐに角を曲がる。
進むにつれ、少しずつ景色が変わっていく。
ベルギアの屋敷の前の大通りは、同じくらいの大きさの建物がずらりと並んでいたが、こちらは一定の間隔を空けて、様々な大きさの建物が並んでいる。
おそらくだが、居宅や店舗より公共施設のように使う目的の建物が多いだろう。
外観がもうそれだ。
一応居宅や店舗らしき建物も少なくない。
「あそことは違って色々な形のがたくさんあるんだな。」
「そうだな。お前の世界にもあるものに近いと思うぞ。」
「やっぱり?」
「全く同じではないと思うがな。」
そりゃそうだよなと若干思う。
人間の世界と、神や精霊の世界。
違わない方が違和感を覚える。
「なんでここに固まってるんだ?もっといろんなとこに広げればいいのに。」
「規模は小さいがほかの町にもあるにはある。ここに集まっている理由は、私がこの町を治めているから、でわかるか?」
「ルベールが…あっ。」
ベルギアの屋敷でクトルが言っていたことを思い出す。
確かルベールの肩書は "知神"。
知識を司る神、ということだろう。
「その様子だと、クトルから聞いていたようだな。」
「うん。ちょっとだけだけど。」
そう言ったあと、ルベールが立ち止まった。
今度はぶつからずに止まることができたので、すぐルベールの隣に移動し、前を見る。
目の前にはベルギアの屋敷にはやや劣るものの、それでも立派な屋敷が立っていた。
形はベルギアの屋敷のちょい小規模2階建てバージョンという感じだが、装飾は全く違っている。
屋敷を見つめていると、ルベールが俺の前に立ち、胸に手を当てながら口を開いた。
「改めて言おう。私の名は"知神"ルベール。我らが創造神、ベルギア様に仕える六大神の一柱である。以後よろしく頼む。」
今日一番、ルベールが格好良く、偉大に見える瞬間だった。




