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白昼夢  作者: ダリー
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26/54

人体の不思議

小3くらいから、親がアメリカに年1回くらいのペースで出張するようになった。

流石に、場所の遠さもあり1.2週間と滞在期間も長くなり。

子供を置いていく事はできないと判断した母は、毎回わたし達を連れて行ってくれていた。

なんとなく気候や食事が心地よかった。

現地の食事で全く苦労しなかった。


ただ、どうしても日本食が恋しい母。

当時は日本の食材を手に入れるのがむずかしく。

レストランもあまりない上に激高だった。

そして生み出されたパクチーをセリに見立てて無理矢理に作ったパクチーとお豆腐とポロネギの味噌汁は地獄の味がした。


それがアメリカの食事の唯一の苦い思い出。


そして中2の春。

私は人を殺した。

とても大切な人を殺してしまった。



またアメリカにきた。

毎日プールで泳いだり近所の子と遊んだり。

ふわふわ大きいドーナツを食べたり、やたらに甘いブラウニーを食べたり。肉の匂いがジビエ並のハンバーグを食べたり。

おきまりの生活。


たまたま、行ったショッピングモール。

たまたま、一人で椅子に座ってマイケル・ジャクソンを小声で歌っていた私。

たまたま、通りがかったおじさん。

私に合わせて歌いながら通り過ぎた。

まだ歌う私。二人組みのお姉さんも、一緒に歌ってからニッコリ笑って通りすぎた。

その後も、何人も一緒に歌ってくれた。


音楽にあふれていることに気がついた。

駐車場の車もピュンピュンという音の後、

人が乗ると、爆音で音楽が自動でかかる。

お店に入ればいつもラジオから音楽。

当時は何故か皆Tシャツ短パンかスパッツ、ハイカットスニーカーだった。

そして、そんな人達は、みんな音楽が好きみたいで、音楽と暮らしていた。

だけど、深い付き合いをさけて、警戒しながらも

あえて一期一会の見知らぬ人と深いところで心を通わせる感じがあった。

自分と近いものを感じた。


アパートに戻り、しばらく考えたあと母に話してみた。


「私、ここに居たいんだけど。帰る時にさ、私、置いていってもらっていいかな?」


この時の母と姉は多分。


「でた。」


と思ったと思う。


「受験どうすんだよ、バカ」


と母。


帰る事を考えていなかった私。

「そのままか、帰らないとダメなら来年夏まで自分でやる。で、帰ったら塾いく。」

とノープラン感丸出しの答えを言った。


その後、本当に居たいのかを強く何度も確認された。

それでも私の意思は変わらず。

母が折れる形で決着した。


家族は先に帰った。

しばらく、ビザなのか、なんなのか書類を待つために夏休みをアメリカで過ごしていた。

海に行って苔?か何かが凄い中サーフィンをする人をマジマジと眺めていて、気がついたら悲惨な短パンやけをしてしまったり。

アパートのプールで、いつものメンバーで飛び込んで誰が一番凄いかを競っていたら、最年少の子が、見事にすっ転び口を派手に切る。

プールサイドで麻雀をしていたパパ軍団の一人のラッパーの2パック・シャクールみたいなお父さんが飛びだしてきて、

危ない事をしないようにさっきも言ったでしょ?

みたいな事を言いながら物凄い剣幕で怒りだした。

主犯格な私はヤバイ次は私だ!と怯えてたら、

自分の子供が血だらけなのに、私の怯える様子に転んだりしたのかと、すごく心配してくれた。

去り際に、滑って危ないから他の遊びをしなさい。

本当にダメだよ!と心配して帰って行った。

自分の子の友達にまで母性をだしていてビックリだった。

人は見かけによらないという事を強烈な形で学んだり。

アメリカらしい経験もした。

ピザを食べに行って、駐車場で銃をつきつけられたのだ。

突きつけてきた人は、お金に困っている様子だった。

そして、何ドルかお金を渡したら、ありがとうと言って銃をしまうと全く返り討ちの警戒感なく帰って行った。

相変わらず、コーラ、ジャンバラヤ、タコス、ドーナツ、スペアリブ、ピザの高カロリー食を成長期もあり、もりもり食べていたら短期間でめちゃくちゃ太ったりもした。

不思議でこの間に英語では困らなかった。

多分、子供の会話だから、たいしたことを話せないからだとは思う。やたら、ビンゴっ!と言っていた記憶がある。

夏休みに長期で田舎に行ったときに、知らない間に方言を体得してる感覚に凄く近い。

今は大人になって田舎に行ったら、いとこやおばあちゃんが何を言ってるのか全く分からなくなってる感覚。


その後、沢山の謎の予防接種を打ってから学校に行って手続きをした。

とりあえず、英語が母国語じゃない子のクラスから始まった。


のに、なんと早々に強制送還に。

私は、渋々帰る事になった。

何か色々あったようだった。

というより、ハメられた。

周りはハナからその予定だったのだろう。


またしても、楽園生活は終わりをつげた。

でも、よかったのかもしれない。

あれ以上いたら、私は確実に太っていたに違いない。

危なかった。



私はまだ、大通りと獣道の間で立ち止まっていた。

アメリカ旅行の看板の前で偶然、鼻歌の人が通りがかった。

軽やかな唄を歌っていた。

すると、ポケットからグリフィス天文台の写真が落ちた。

行ったな。私はスリにあったな。

笑ってしまった。

心が軽くなった。


ジェームス・ディーン

好きだったな。


※グリフィス天文台

L.A.にある天文台。ジェームス・ディーンの映画「理由なき反抗」のロケ地で有名になった。

その後も色々な映画の舞台になっている。

観光スポット。

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