毒の水と地球と月と太陽のバランス
爬虫類や草花や魚類や動物
身を守るために毒をもつ者が存在している。
カエルなんかは、広くて雨がふるような自然界にいる分には大丈夫なのだけれど、
水槽などの狭い空間で飼われた場合に、自分の体表の毒がついたものに触れていると自らの毒で弱ってしまったりする。
だから、こまめに掃除をしたり綺麗な水を中にいれておいたり霧ふきしたりして、人工的に毒を取り除く必要がある。
哺乳類の人間も実は毒をもつ生命体。
何が毒かというと
それは涙。
そして感情の涙は猛毒らしい。
カエルと同じで上手く涙を流せないでいると、人間も自分の毒で体が長い時間をかけ弱っていってしまうらしい。
インスピレーションをくれる人と、ひたすらに愛をくれる人と、全てを持っていく人がいるみたいに感じる。
私は、どうやら愛とご縁がなくて。
愛に少しでもお近づきになろうと、かわりに涙を体にためこんでみた。
沢山集めたら、ポイントみたいに涙がいつか愛に交換できるのかもしれないと。
必死にコツコツと涙を集めた。
さらに愛にお近づきになろうとした。
緩やかで正しくないと分かっている、
誰もが選ぶ大通りに入ってみた。
ずっと、無理して涙ポイントをためながら進んだ。
途中には愛を与えさせてくれる宝物をゲットする事もできた。
それを大切に持ちながら自分のペースで大通りを進んだ。
間違っていない。
大丈夫。大丈夫。
宝に言うふりをして、
自分に繰り返し呟いた。
気がつくと宝はボロボロだった。
私の持ち方が悪かったみたい。
大切に抱えてすぎて潰してしまっていた。
大通りの人は、皆もの凄く足が早いし、そのスピードで後から私にぶつかりながら追い越していく。
私のスピードでは、ぶつかられるばかりだと気がついた。
ぶつかられないためには、スピードを周りに合わさなくては行けない。
いいスニーカーを履いたり、宝を台車に乗せたり、試行錯誤した。
でも、このスピードが私の限界だった。
宝を守れているつもりだったからショックだった。
完全に足が止まってしまった。
歩けない。
もう歩けない。
私はここに来るべきではなかった。
終わったポイントカードが何枚もあった。
ポイントカードすら重い。
こんなのいらない。
愛なんてもはやいらない。
歩けない。
いつもみたいに座るな迷惑だろうと言われた。
もう、涙ポイントなんて胡散臭いものは、
ためなくていいから、無視して座ってみた。
たまたま目に入ったパイプから、
外の景色を眺めて見た。
すると今まで聞こえなかった音に気がついた。
偶然に白い透ける大きな鳥をみた。
気になった。
夢だけではなく不思議な事が起こりはじめた。
秋のオリオン座流星群の夜。
楽しみにしていたのに。
ウトウトと寝てしまった。
前に進んでいくような力強いリズムが聞こえてきた。英語でおいで。と聞こえた。
目が覚めた。どこからかと窓の外をみると沢山の流れ星が見えた。
星が燃えながら、初めてその形を見せて、流れ、消えていく。
不思議で、何かに会いたいと願っていた。
髪を切っていた。そんな時ですら沢山の用事をすませていた。すごく疲れていた。
満月の夜に海が満ち引きするような、たおやかな波の音のような優しい何かを思いださせる歌が聞こえた。
気がつくと手を止めて、目を閉じて聴いていた。
それから、その不思議な音に引き寄せられるようになった。
すると、ある日、
昔、自由な頃に歩いていた、険しく、でも正しい道。
多分、私が進むべき道。
そこに戻りはじめている事に気がついた。
その後、何度も大通りに戻される。
私があきらめかけると不思議なメロディーが優しく引きもどしてくれた。
たまたまなのかもしれないけど、何度も引き戻してくれた。
正気に戻っていくのが、わかった。
追い越していく人達には、逆に見えたかもしれない。
険しい道に戻ろう。
宝を持って一人で戻ろう。
一人でも大丈夫。
今までも本当は一人だったんだから大丈夫。
そう決めた時。
とうとう、やっとぽわっと愛みたいな物なのか、
たくさんの夢が見えた。
沢山のカラフルな流れ星。
それは、もう大流星群。
キラキラ キラキラ キラキラ
色々な色が流れては消えていく。
聞いて想像していたものより、もっとずっと綺麗だった。
こんなに綺麗な流星は見た事がなかった。
とにかく、綺麗だった。
もしかして、道が近くなったのかな?
と初めて思った日。
なんていう皮肉なんだろう。
一日くらい見ていたかった。
今度は今までにない抗えない凄い力で戻されてしまった。
また、大通りに戻されてしまった。
なかなか抜けられない追い越し車線に戻された。
今度は、何年か分からないけど。
しばらくは、戻れないだろうなと悟った。
なんていう皮肉。
良心を失って、自分の道にもどるのか。
良心を持ったまま、大通りに残り数年後かに自分の道に戻るのか。
私に残された微かな良心。
どんな時も良心にだけ従って生きてきた。
温かいものを眺めることができる。
私は辿りつくことは、もう、できないのかもしれないけれど、確かに目にする事ができる。
あるという事を知る事ができてよかった。
ちょっと経験した事のない体験を擬似体験までさせてもらえた。
もう完全に出なくなってしまったけど、
目からちゃんと涙も流せた。
これでしばらくは平気。
あそこは居場所ではないけど。
良心を失わないでいられる。
大通りに戻ろう。
言い聞かせるように何度も大好きな部分を聞いていた。
その時、小さなオルゴールに気が付いた。
優しさの和音に強く引き寄せられる。
温かい場所がある。
戻れない。
優しい声が和音を生んでいる。
聞かないでは、いられなくなってしまった。
このまま、ずっと何回も聞き続けたら戻れるようになるのだろうか?
大雨。
楽しみにしていた満月が雨でみられない。
月に引き寄せられ満ちた海は、雨でさらに満ちて月に近づこうとする。
それでも太陽と月と地球は距離を保ち続ける。
距離を保つから海は満ちる事ができる。




