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白昼夢  作者: ダリー
また本を開く
20/54

泥だらけで沼からでる

沼からでた私はすぐ新しく食堂やチラシを配るバイトをした。

空いている時間を埋めて行くようにシフトを入れた。

行きたかった場所に行くために貯めていた石が減らないように。

その人が行きたいところに一緒に行けるように。

母に石を渡せるように。


そして村の役所に相談にむかった。

母の事だけが許せなかった。

役所に行くと役所の人が何故か内容や私の名前まですでに知っていた。

なぜ知っているのかを聞くと物凄く驚いた顔をした。

私から電話があって既に話を聞いていたのだそうだ。

私が忘れたんじゃないのか?

そういう事にしたい様子だった。

そうかもしれません。と言って欲しい感じがでていた。

問答にウンザリした私は、いつ電話がかかってきたのかを聞いた。

私がアルバイトをしていてかけられない時間だった。

手帳をみせた。

役所の人は、これはマズイ事になったぞ。という顔をした。

割り当てられた時間の大半を問答で消費されてしまった。

都合の良い時間ぎれ。

ちょっと、これは、上のものと話さないと。

また近々電話すると言い残して、いなくなった。


数日後、私は、熱情の彼女と前から飲みに行く約束をしていた。

でも、彼女に意見を聞くつもりはなかった。

弁護士とも話をすすめはじめていたし、対価をもらう彼女の生業なのに、彼女が頑張ってきたものを利用するみたいで嫌だった。

ワインがグラスの中をつたう、その広がり方を見ながら色を眺め味わい飲む姿に彼女もワインが好きだった事を思い出した。

酔いが回ってきたのか彼女は初めて弱音のようなものを吐いた。

それは私には、交わらないけど、広義には関係していた。

平静を装っていたけど、その話の深さと重さに、彼女を少しでも楽にさせてあげられるような言葉がまったく見つからなかった。

そして、


法律はいつも後ろ向きで前向きな話はない。過去を話し合う。本当に、うしろむき、なんだよ。


見た事がないような、なんとも言えない顔をした。

私は、話続けているのに、何も言えてなかった。

どうしたら彼女の気がはれるのか頭の中はいっぱいで。

口からは、空っぽの言葉をBGMのように、彼女に流し続けていた。


BGMに気がついた彼女は、熱情の彼とその仲間と最近会っているよ。

と教えてくれた。その優等生グループは私はよく知らない。

皆、出世してかなり立派な職についていた。


彼女の優しさで話してくれたのに、私にしては珍しく、世界が違うと言われたような気になってしまった。強烈な疎外感を感じてしまった。



家に帰ると彼に電話で彼女が頑張っている話をした。


たまにしか、会わないんでしょ。

もう、友達じゃないじゃん。

どうせ、こっちから連絡したんでしょ?

聞いてもない事がかえってきた。


図星だったのか。

なんなのか。


でも、彼女の後ろ向き発言で方向が定まった。

数ヶ月、ふり回された。

上の人に話すと言った人も、私からの電話から逃げ続けている。

弁護士が送った正式な手紙も無視されて、挙句、驚くべき小馬鹿にした内容の返事が返ってきた。

正直、弁護士も気にしすぎな小娘が言っている戯言(たわごと)だと、この手紙を見るまで思っていたと思う。

弁護士は、その無礼さに驚き事実だと気がつく。

多分、本腰を入れてくれようとしたのかもしれない。

だけど、私は、取り下げた。

悔しかったけど、取り下げた。

言われっぱなしで、悔しかったし、深く傷ついた。信じてくれない人。私という存在のかるさ。

何回?


あなたは物だから。

ほら、契約の話よ。

あなたは物なのよ。

契約の話よ。

物だから。

物は。

あなたは物だから。


言われなくても分かっている。

私は散々、契約書を見てきていたし学んでもいた。

税金の処理の話ではない。

今、彼らが言っている「物」の意味は契約書の処理的な話ではない。

言葉の中に人格を持たない物質なんだという意味だった。

気にいらないと繰り出してくるカード。

対象が愛着も何もない物だからか、そのカードは適当なもので隙だらけの弱いカードばかり。

物は物でも愛着のない物だと思っていると確信する。


そして、私は知らない人からの、通り魔みたいな暴言に傷をおったけど取り下げた。

それはまるで自分の胸にナイフを突き指し、下に押し下げていくような。

負けず嫌いの私が、絞り出すように、取り下げた。

これからも、嘘を言われるかもしれない。

私のした事は全てなかった事になる。

認める事になる。


かわりに、さらにできた隙間にシフトをいれた。

行きたかったから。

あの人は相変わらず、色々なところへ。

少しずつたまるお金。

母は、ある程度貯まったお金に気がついたのか。

申し訳なさそうに必要と言った。

私は、全部渡した。


それでいいと思った。

実際それでよかった。

今までやってきてくれた事を考えたら、

それでも足りていないくらいだと思う。

行った所で学位を取ったところで、役にも立たない。

何人もそういう人の話を聞いた。

母は若くして駆け落ちみたいに反対を押しきり結婚をしていた。

お琴にお花に踊りにともろにお嬢様だった祖母と仲は良くなかったが、そんな祖母の影響を強く受けていたからか世間知らずで何処か頼りない少女なところがあった。

だから、私は、子供の頃から自分はお父さんだと思い、お父さんらしい役割を果たそうと生きてきた。

行って学んできたらレバレッジを効かせられると思ったけど。

自立してない私でも、母を幸せにしてあげられるかもと淡い絵空事。

※レバレッジ ここでは、賭け金を増やす事で儲けを増大させる。はずみをつける。ような意味。


そこまで実務経験もない私にニーズがあるとは思えなかった。

リスクのほうが大きい。

鋭い母は、実際にそういう人達と日常的に接していた。

そういえば、そういう話をしない母が最近そういう話をしていた。

私が読む本を見て見抜いていたのかもしれない。

よく考えたら心理学などを使って人をコントロールするという考え方も嫌いだったな。

と気がついた。

あの人からは相変わらず何もなかったかのようなお出掛けのお誘い。

BBQに行った。

いつもの彼の友達数人。さらにその彼女もいた。

今回は知らない男女が追加で5人くらいずついた。

爽やかな雰囲気。みんなハツラツと自己紹介。慣れていない私はシドロモドロ。

明らかに1人陰(いん)キャ。

(まぎ)れこむ(いん)キャ。

あの人は、()れた感じに(さわ)やかに挨拶(あいさつ)をしていた。

見た事がない雰囲気(ふんいき)に軽く引く。

一人の男の子はどうやら、友人の彼女を気に入ったようだった。

私が彼女と話してると、やってきて、浮気とかさあ!したことある?と何か知ってる風にひどく酔っ払いながら聞いてきた。

自信家の彼女らしくない。珍しく、さっきの私みたいに、しどろもどろの彼女。

このカップルといつも一緒にいる一人の男の子が(あわ)てて止めに入ってきた。

安心したのか彼女が少し泣き出してしまった。

男の子を引き()がすと何処(どこ)かに。彼女も一人どこかに。

何が何やら分からない。

何故わたしの顔を見ながら話してきたのかも、この時は分からなかった。

とりあえず、気まずすぎる。

皆、さわやかに人との出会いを青春を謳歌(おうか)している。

一人ぽつん。

彼のところに、助けを求めにいくも。

彼も楽しくおしゃべりで助けてもらえず。

まるで、知らない人みたいだった。

女の子に気のきいた声かけができたり優しくしたりできるんだ。

出会った時は、女の子に自分から話しかける事すら出来なかったのに。

知らなかった。

いつの間に、こんなに慣れたんだろう。


帰ってきた日。

なんか、全てが嫌になってしまった。

本当になんか嫌になってしまった。

こんなポンコツなのに、信じられない事に自分が大好きな私。

それが理由なく他人からの目線で、自分を大嫌いになりそうだった。


ここ数日、電車に乗ると肩にかけている軽い小さなバックすら重く感じて電車の床に置いていた。

置くようなバックではない。

布団に入るだけ。

天井に映るカーテンレールからもれる光の強さの変化を眺め見守っている。

実際には寝ていなかったことに気がつく。

強い疲労感。

これはマズイ。本能的に感じた。


パソコンを開き、発作的にオーストラリアにある語学学校に申し込んだ。

スッカラカンなのに。

全部が借金。

こんな事した事なかった。

小さな子が好きで外語スクールで働いていたから少し関わりある資格取得のクラスにした。

チケットもお金がないから訳わからない乗り継ぎの超格安チケットを買った。

何も見ないで買った。


誤認があるかもしれないけど、料理家の平野レミさんのご家族の話で、ご両親が里親をされていたのか。大家族だったという話をTVで見て、私も将来沢山で住みたいな!みんなで楽しく住みたいな。とずっと思っていた。ずっと。


みんなには2週間前に言った。

引いて心配していた。

でも、本当にどうでもよかった。

短い期間だし、どうにかなると思った。

資格だけ取って帰ろう。

そう思っていた。

行く時に、義理の兄と姉が助けてくれた。

彼は急だといい不服そうだった。

何も手伝わずに自分が可哀想だと言って、いつも通り、行きたい所に連れて行き私の準備の時間を奪った。


別れ際、本当はできないはずの

彼氏がいる女を経験することができてよかった。

私はお父さんに戻る。

いい経験をありがとう。と思った。


私は泥まみれで飛行機に乗った。







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