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白昼夢  作者: ダリー
本をおく
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白い封筒 手を繋ぐ

私は3才だった。

妹は1才。

どうしようもない父から夜逃げし、4人で生活し始めたころ。

母は昼夜働いていた。

朝から働き、夕方に私達をお迎えにくる。

私達にご飯を食べさせてから、ベビーシッターさんとバトンタッチしていた。


朝と夕方にいるけど

いつも明るくて優しくて安心する人だな。

美味しいご飯も作ってくれるし。

この人が一番好きだな。

この人がいないと寂しいな。


と幼い私が母親だと認識できなくなってしまうほど働いていた。

母が出す紅い霧は確実に増えていた。

そのせいか、小さな私はしょっちゅう中耳炎になっていた。

はっと目が覚めると。

夜中に母がすりガラス越しに一人ダイニングテーブルで霧をはいているのが見えた。

目が覚めた私はすりガラスを開け、

母にたいして痛くもない耳に薬を塗って。

と甘えて膝の上に頭を乗せた。


ある日を境に妹がいない事に気が付く。

中耳炎のために保育園を休んだ私。

耳鼻科の後に母と私は、手を繋いで知らない場所に行った。

眩しいくらいに、とても明るい渡り廊下。

売店。その先には可愛い柄の自動ドア。

自動ドアの前にある長椅子に座って待っているように母に優しく言われた。

なんだかよくわからない新しい場所。

ルンルンしながら待っていた。手にはレアなおかしを握っていた。

すると遠くに母を見つけた。

私は言いつけを破り自動ドアの所へ行き、

中にいる母に手を振った。

私に気が付いた母は、にこやかに手を振り返してくれた。

いつもなら、危ないから!と椅子に座らせるために側まで来ただろう。

あれ?来ない?と思っていると。

奥から車椅子のようなものに乗った妹が連れられて出てきた。

母はパッと妹の方を向くと、もういくら手を振っても振り返してくれなかった。

何かフルーツを一つずつ、ゆっくりと妹の口の中に運ぶ。

妹にニコニコ話かけながら、何かをゆっくり口に運ぶ。


いいな。

私はつぶやいた。


母が出てきて

私は、

「私もフルーツ食べたい!!」

とわがままを言った。

じゃあ何か買って帰るかあ!と

母は悲しそうに笑った。


それから、しばらくすると。

私は、母以外の大人と手を繋いでいた。


「ダリーちゃん、あっちに行って遊ぼうか?」


連れていかれる時。

正座をして背筋は伸びているのに手をギュッと握り首をたれる何かに耐える母が遠くに見えた。


明らかな医療事故だった。


小さなアパートの一室に立ち込める線香の香り。

幼い私にも、すぐにわかった。

後悔をした。

あんなわがままを言ってごめんなさい。

ごめんなさい。


母はそんな私だけではなく

白い服を着た人までも


人間だから。

助けようとしてした事だから。


と許した。

許すしかなかった。

母には選択肢はなかったと思う。


二人いた白い人。

手術後怒りながら手術室からでてきた若い人は止められなかった激しい後悔からどこか別の場所へいき。年老いた一人は。


母の手には7万円が入った白い白い小さな封筒が握られていた。


人間だから。

助けようとしてした事だから。


母は医療の発展を願い医師団に寄付を続けている。

私達親子は法律が追加される高校生まで隠れ母子家庭だった。

それが意味する、お金の重み。

7万円は超えている。




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