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白昼夢  作者: ダリー
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14/54

戻る砂

砂時計をひっくり返す


沼は、村のはじっこにあった。


その人と母は石が好きで見つけてあげると、

とても喜んでくれた。

その人は、インドアな私を毎週、他の村や話題の場所に連れて行ってくれた。そして私が話す話を沢山聞いてくれた。

ある日、石が少なくなってきたから、今回は私は行けないよ。と話すと。

「そっか、来週でも難しい?そうか。」

としょんぼりしてしまった。


帰ってから私が一人でどうしようかと考えながら沼にいると村の人々は口々に言った。


「こんなヤツを連れてくなんて、あの人は優しい人だな。」

「わがままばかり言うと逃げられちゃうわよ!」

「感謝しなさいよ」


逃げる?嫌な言い方するな。ふん。

誰も無理矢理捕まえてないし。

その時は、本気でそう思っていた。


「でも、しょんぼりしてたな。」

胸がチクンとした。


それから、一晩中石をかき集め行く事にした。


知らない村に着くと、また、その人の友人夫婦達がいた。

風呂に入り、なんとなく綺麗な服を着た。

話題の場所に行った話を自分が感じたかのように話す、その人の話に皆が興味しんしんだった。

一方で私は、

あれ?私が言ってなかったっけ?あれ?

話を合わせつつ相槌をうった。

そして、いつも、空にオリオン座が見えるくらいの夜になると、その人は何も言わずに知らない人の輪に私一人を残して眠ってしまう。

優しい人達で気を使ってくれたが

私は、居た堪れなくなり、しばらく相槌を打つと、

眠くなったから寝るね!

と一人になった。

そして、夜空を眺めながら流れる音楽を聴いていた。


それを毎週繰り返していた。


沼は、人気がないわりに色々な人が入れ替わり立ち替わりで現れた。


外国の本を読んでいる姿を誇らしげに私に見せに来てくれるかわいらしい子。

私の石を探る道具を治してやるから出せと言って、結局ぶっ壊して行く人達。

キラキラの石を笑いながら池に投げ戻す狂気美な友人。

コソコソと来て役に立ちそうな石の図鑑や採掘の本を私に貸してくれて返さなくても怒らない

怒りん坊と呼ばれている政治家のおじいちゃん。

砂は体は大丈夫かしきりに心配して、安全な道具を教えてくれる広く嫌われ者で通っているはずのおじいちゃん。

石がキレイだねとニコニコと話かけに来てくれる働きものの優しい親子。

音楽が好きなんだよね!?僕も好きなんだよ!とスピーカーを持って来てくれるパリピなお坊さん。

一緒にご飯たべよう!と落ち込んでる時に何処かから高級なお弁当をゲットして持って来てくれる本当は繊細で可愛いらしい元気な餌付け上手な女の子。

その子と仲が悪いような、いいような、ちょっと捻くれ者で優しい不思議な話をしにくる歌がうまい少年。

口が悪い!顔の泥が汚い!といいながら毎日ハンカチで顔を拭きにきてくれる、本当は自分が一番疲れ傷ついている世話焼きな主婦。

仕事に情熱的で凄く優しいのに、仕事に関してだけ口が悪く変わった服装なのも災いし嫌われてしまっている人。

謙虚な振りが上手で陰では大人を利用する事が賢いと勘違いしている。でも、本当はいい子でそういうやり方しか知らない頑張りすぎている少年軍団

何故か私の誕生日にいい香りがするキラキラの石に似た素敵な石鹸を沢山くれた隣の村の謎の青年。

お坊さんが残念な子供時代を送った子は音楽好きなんだって言ってたよ。とクスクス笑う。人の優しさを悪用して意地悪を言う、誰もが、あの子は本当にいい子だと太鼓判を押す、愛くるしいはずの可哀想な女の子。

何も釣れないのに毎日、釣りをしに来るおじさん。

そして、そのおじさんが来た後に必ず現れては、おじさんが私を好きでここに来ていると勘違いして沢山お話をしていなくなる愛しい女性

この時代に違和感があるくらい、私にまで、紳士的な不器用な学者見習いのお兄さん

私が言った事を次の日に自分が言ったかのように私の前で部下に話し、仕上げに私を馬鹿にして話をおえるなんだか迷走中の社長

社長の話に社長を尊敬し、全てを真似して私を小馬鹿にして笑う。肝心な部分に触れる機会を奪われた素直な部下

沼の脇にある椅子に座り、疲れたおじいちゃんが来ても反応しない、空気を読む事や無難に生き残る事ばかりを習い弱い人に手をかす事を教えてもらえなかった心がキレイな優しい学生


皆、この沼の前だと本心がでてしまうようだった。

私が悲しさを感じることが多かったけど、皆、一生懸命に生きていて素敵だった。

良くも悪くも

誰一人同じじゃない石に似たキレイさだった。


私は見る事ができたのだから、

何かできることはないかといつも考えていた。

そして、手を貸すと逆にプライドを傷つけてしまうようだった。だから、いかに姿を見せずにナチュラルにお手伝いするかに頭を悩ます日々だった。


でも私は1番見てはいけないものを見てしまった。

村で1番の人格者で誰からも信頼されていて、この人に任せたら大丈夫!と言われている石売りの女性が、私に石をぶつけてきた男の子とともにキラキラの石を沢山かき集めて沼に落としていた。

私に気が付くと今度は、石売りの女性が手に持った石を私めがけて力いっぱい投げつけてきた。


「あら、当たった?ごめんなさいね。汚い石が落ちてて危ないから汚いほうに投げてしまったわ。誰かしらね。迷惑よね。あなたも拾うのだったら、こんな沼になんていないで、キレイな価値あるものだけを拾いなさい。言っている事わかるかしら?」


石売りの女性は、また手に持った石を私めがけて力いっぱい投げつけてきた。


とても怖い顔をしていた。

何が起こったのか分からない。

とりあえず、おかしい。

どうにか、何かおかしい事に気がついて欲しくて、

私は、精一杯冷静に言い返した。


「これは、本来この沼にあるものでは、ありませんでした。あるべき物でもありません。貴重な鉱物です。ステンドグラスや指輪や壁画、鉄材になるものもあります。未知数です。誰かが自分の持つ石の価値を高めるためにここに隠しているようです。」


2人は何も言わずにいなくなった。


それから数日後、石を褒めてくれる親子に呼びだされた。

私が石をぶつけられた少年に石をぶつけられたそうだ。いつも一緒にいる石屋の女性に証拠を持って相談しに行ったけどダメだった。警察に話しても何故だか相手にしてくれない。さらに、証拠もないのに、これ以上、嘘を広げると訴える。と脅され証拠まで奪われたらしい。


最近あなたの側に、あの少年がいるから石をぶつけられないように気をつけて!

という事だった。

とてもとても心配していたが

私は、違う事を考えていた。


もともと傷だらけだし泥がついてるから、当たっても石が滑って大したことないだろうな。

何故あの子は石を投げるのだろう?

いい子だったはず。

私だけではなく、何故?

そこが気になるなと思いながら

あの子は大丈夫なのだろうか?


「大丈夫!潜ればいいし。ありがとう大丈夫!

蚊がいるから早く戻ってね!」


親子は心配だ。と言いかけていたが追い返した。

なぜなら後から誰かが見ていたから。

怖い。




砂時計を戻す。


また鼻歌が聞こえてきた。

最近の密かな楽しみになっていた。


聞いている時。

それはまるで石も何もない軽ろやかな優しい世界。

その歌とお話をしているかのような。


なんと!

今日は流れ星みたいにキレイな音までついていた。


しばらくバレないように隠れて聞いていた。

気が付いたら、あの人は、また、迷いなく陸に上げてしまうだろう。

散々、転んだ人を助けてきたせいで、あの人の手や腕は疲れきってしまっているに違いなく。

歌声がキレイになればなるほど目には見えない傷も沢山増えたように思えた。

次に助ける時のためにも泥がつかない方が良いとも思った。


歌が聞こえなくなった頃、

見に行くと沼から少し離れたところにオルゴールがおいてあった。

これだ!流れ星だ!

私はそれが聞きたくて毎晩少しずつはいでた。

すると不思議なもので歩けなくなったはずの重い足も少しずつ軽くなっていった。

少しずつ川に落ちる前のように軽く。

私はヨロヨロ歩けるようになった。


今夜も、深い敬意とため息まじりにユラユラ揺れる沼の月を眺めた。


そして、とめられない落ちる砂。

また、紅い霧は私の奥深くまで吸い込まれていく。

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