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白昼夢  作者: ダリー
人の月を見る
13/54

落ちる砂、霧の紅

「底面にキレイな石があるんだ。欲しいな」

その言葉を聞いて、

一緒に見たいのかな?と

今度は、蓮の底なし沼に

自ら飛びこんだ私。


泥の中に見つけたキレイな一つの石

「なんだこれだけか、もっとないの?」

「泥水だから、これくらいしか取れないよ」

「欲しかったのに、泳ぐの得意そうだったのに、

嘘ついたの?たったこれだけ?ひどい!」

その人は、石が沢山ないと不安になってしまうみたいだった。


申し訳なくなった私は、それから毎日、泥を拭って、できるだけキレイにして、

遠くのほうにいるその人に、泥がつかないように

石が見えるようにほうり投げていた。


最近、通るようになった、

鼻歌を歌いながら歩く人が今日も、通りがかった。

今日も、転んだ人を助けている。


その歌声が綺麗で。

ヘリにしがみつきながら、

沼に浮かぶ、ゆらゆらと揺れる月を眺めながら、

のんびりと聞いていた。


私に気がついた、その優しい人は、

泥が手につくのも気にしないで、

陸に上がれるくらいまで、

私を引き上げてくれた。


「ゆっくりで、大丈夫だから、

無理しないで家まで帰りなさい。」

私の手に握られたキレイな石達をみて

「ちゃんと、見つけてこられたのだから大丈夫。疲れてたら、無理しないで休んでから行きなさい。その方が早く着くから、石が沢山あるから大丈夫。」

と言ってくれた。


私は

「ありがとう」

と心からのお礼を言うと、

いつもみたいにヘラヘラ笑いながら、

その人を見送った。


そして、鼻歌が聞こえなくなると、私は沼に戻った。

また石を探し始めた。

散々、もがいたせいか、

足は痩せ細り、沼の中を移動するためだけの足になり、もう、とっくに歩く事ができなくなっていた。

肺に入った砂は抜けないだろう。

自分でもわかっていた。

そして、陸に上がろうとは、

そもそも思わなくなっていた。

ただ、この沼に落ちてしまった、

キラキラ光るこのキレイな沢山の石たちを、

一つ残らず全部拾いあげたい。

泥水を飲んで歩けなくなってもよいから、

キラキラの石でいっぱいの陸を見たいし

色んな人に見せたいな。

そう思っていた。


陸の人に見つからないように、

誤って泥をつけてしまわないように、

キラキラ光る石だけを、

見つけてもらえるように。


今日もせっせと石を拾う。


また太陽がのぼり紅い霧。

砂が落ちていく。

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