歩く。
ぽつぽつと、朧月夜に翳る道を歩く。
街灯は暗い空間に、仄かな光を与えて、まるで俯いた人の様。
顔も見れなければ、あえて見る必要もない。
そんな風に思う中で、整備された灰色の歩道を歩いて行く。
薄明りの新月は、私にはとても曇天には思えない。
ただ、平坦に整備された道を歩く。
夜の帳の上に、明かり刺してく電柱も、とっくのとうに見慣れた光景で、何ひとつ代わり映えはしない。
私の前を、黒い猫が横切った。
あぁ、車が通った所なのに、ぐちゃりと潰されていった。
鳴き声も圧殺されて、轢死した猫の残骸を通り抜けていく。
腕に血はついてないかな、と思うぐらいで、何一つ感じる事はない。
道は続く。
ただひたすらに、長い長い道が。
あとどれだけ足を動かせば良いのだろうか。
この整い過ぎた現代のインフラに、まるで逆に利用されている気すらしてくる。
冷たい夜風だけが、今は私の共。
そういえば、どこへ向かうんだっけ。
もう、長い間歩いている。
意味も無く、ただ進んでいるのだったか。
進む意味はない。
けれど、停止させる意味も無い。
もう、肉体という枷、疲労という鎖は無いのだから。
もう、朝日を見れる訳でもないのだから――――。