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IQ141のトリセツ  作者: オバケのボス
9/10

依怙贔屓とイジメ

 少年が高学年になると、担任が母親の近所の先生だった。

何故か少年は苦労もせずに良い成績を取っていたので、その江口先生から良く可愛がられた。

 そんな扱いを受けた事のなかった少年は戸惑ったが、直ぐにそれを感受し始めた。

学級委員(級長)、生徒会、運動会など、何かイベントがある度に前に出され代表にされた。

卒なくこなしてはいたが、面白くないと感じていたのは、少し頭の良い同じクラスの松山だった。

 松山は事あるごとに、

「おまえは依怙贔屓されていいな。」

「また、おまえか。」

「何もかも全部、おまえがやればいいじゃないか。」

と、ここまで言われると流石にバツが悪く、それを言われる度に嫌な気分になった。

 少年は誤魔化すために態と失敗したり、変な意味で松山に媚び諂ったりして2年が過ぎ、中学校へと進学した。

 中学に入ると運悪く、松山と同じクラスになった。

小学校の時の担任の江口先生がいないから問題ないと思っていたが、少年にとってはそれが誤算だと、すぐに気付かされる事になる。

 運動部に入った松山は体格も良くなり気が荒くなっていった。

少年の松山に変に下手に出ていた事が松山を助長させていたのだ。

それは後に、少年に対して殴る蹴るのイジメと変化していったのだ。

 周囲の馬鹿な生徒たちの目には、非力な少年が松山に逆らえないと写ったらしく、松山に同調して本格的なイジメが始まった。

 登校時は決まった場所で待ち合わせをする。

松山たちは同じ町内の連中合わせて5人くらいといつも登校してくる。少年が遅れようでもしたら頬にビンタが飛ぶ。逆に早く来て冗談で松山に文句を言うと蹴りを入れられる。

 そして、少年が負けるように仕向けられるジャンケンによるカバン持ち。流石に5人分のカバンは重い。

 しかし、少年には見栄があったので、松山に命令されているとか、イジメられてきるとか他人に思われたくないので、いつもニコニコしながらやっていた。

嘸かし滑稽であったに違いない。

 教室に入ると、また次のイジメが始まる。

 元々、人を笑わせるのが好きな少年の別の一面が命取りになった。

少年が流行の歌手の歌や踊り、面白い芸人のマネなど、自分から進んでやって皆を笑わせると、それが面白くないのか、松山は休憩時間中に同じ事を少年に何度も繰り返し強要するのだった。断るとまた、殴る蹴るの応酬が始まる。

 そんな壮絶なイジメが毎日続いた。特に女の子の前でやらされるのがキツかった。

 誰にも相談できなかった。家庭環境にも問題があったから家でも母親に相談ができず気が滅入っていった。

 少年は何度も何度も泣いた。

こんな恥ずかしく苦しい生活が続くなら、いっその事と思った事もあった。

 余談だが少年は呪いの本を買って松山を呪ったこともある。

勿論、そんな胡散臭いものが効くわけもなく、次の日も登校してきた宿敵松山を見て肩を落とていたものだ。

 少年にとっての地獄の一年が過ぎ、2年生になった。

クラス変えがあり、松山とやっと離れることができた。

少年は心から喜び神様に感謝した。

 松山と言うと性懲りも無く、他のクラスでも次のターゲットを見つけてイジメをしていたようだ。

 きっと、奴も家庭環境に問題があったのだろう。

 しかし、これを機に、少年は良くも悪くも、逞しく成長していくのであった。




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