まあるい碧い御池の鯉 【WEB】
まあるい御池の鯉
おおきな おおきな
まあるい 御池に
おおきな おおきな
天雲橋という名の
御橋が かかっていました
おおきな おおきな
まあるい その御池
世界の栓を ポ〜ンと抜いて
全部 全部
御水を 抜いて
ゴシゴシ ゴシゴシ
次の世代の 準備をしましょう
誰かが わたしの おらぬ間に
そ〜っと そっと こっそりと
大きな 大きな 碧い まあるい御池に
ニュルリと 入れた
あの忌々しき 黒き魚影
ある時 既に 遅しと
気付けし 時に
訳の分からぬまま
ポツリ 一匹
ポツリ ポツリ
水面に 体躯を晒し
白くなって 浮いていく
ポツリ ポツリ ポツリ ポツリ
パクパク パクパク 浮いていく
パクパク パクパク 浮いていく
私は決して あの悪夢を……
決っして けして
忘れる事は 無いでしょう
おおきな おおきな
まあるい その御池に
一つの時代が 終わりヲツゲテ
また 新たな稚き モノたちが
もう直ぐ やって参ります
今度の世代は 失敗しなき様に
余所から 異物が入らぬよう
頑丈な 立派な 柵を張りました
目の届かぬ時の 警備も付けました
綺麗な御水も 絶やしません
葉っぱや 水面のお掃除 怠けません
どれ程の 繁栄と衰退
始まりと 終わりの始まり
終わりから 改な始まりを
幾度も 幾度も 幾度も 幾度も
幾度も 幾度も 幾度も 幾度も……
刻を 重ね重ねて 刻み刻んで……
繰り返して 来た事でしょう……
いっその事 全部終わらせて
埋めてしまえば どんなにどんな
どんなに 楽な事でしょう
埋めてしまって 花や木々を
上から植えれば どんなにどんな
どんなに 楽な事でしょう
それでも かれらは わたしにとって
どんなにどんな どんなに
愛おしい ものなのです
どんなにどんな どんなに
周りから見れば 誹謗中傷
嗤われても
どんなにどんな どんなに
手間が掛かって 面倒臭い事すらも
全てが 愛おしき
わたしの心の 糧なのです
今度は ちゃ〜んと
喧嘩など 致さずに
大きな 碧い御池の 小さな世界
仲良く みんな暮らしておくれ
終わりを 知らない モノたちよ……
わたしたちは 細やかな露払いと
祈り 見守る事しか 出来ません
大きな大きな まあるい 碧い御池の
小さな小さな コミュニティ
みんな 一匹 一匹の 心模様が
この世界を 担うのです
貴方がた 一匹 一匹 次第なのです
全てが全て……
これは 大きな 大きな
碧いまあるい御池の
小さな世界の物語……