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69 様々な試み

 ニューヨーク市警に日本の大阪府警からレツゴがやってきた。

 昼間は警察署内の案内をして、夜はさっそくニューヨークのレストランで歓迎会だ。

 レストランで歓迎会と言っても、同じテーブルの話し声も聞こえないほどうるさいレストランだし、俺とゲーリーとレツゴの三人だけだが。


「銃もまともに撃てない奴が、何しにニューヨーク市警に来たんだ?」

 ゲーリーは酒をかなり飲んだらしく、レツゴにからんでいる。


「はあ、自分でもよう分からんのです。上司から日米交流とか言われて来たんですが。」

「と言うと何だ? 交流って事は、代わりに日本に行ったニューヨーク市警の奴がいるって事か?」

「はあ、そうなりますね。」

「何だよ、俺が日本に行きたかったぜ。はぁ、ついてねぇなぁ。…トイレ行ってくる。」


 ゲーリーがトイレに行ったので、レツゴに気になった事を聞いてみた。

「そう言えば銃器の訓練をあまりしてないらしいが、日本の警察は普段何の訓練をしてるんだ。ただ街角に立ってるだけじゃないんだろ?」

「はあ、普段は柔道か剣道の練習をしてます。」


「柔道か剣道だって? 学校のクラブ活動みたいじゃないか。日本の警察がうらやましいぜ。」

「一応、警察官が犯人逮捕に必要な技術や精神力を錬磨れんまする目的でやってます。」


「ふーん。じゃあ、レツゴも柔道や剣道ができるんだ。」

「はい。一応どちらもできるんですが、どちらかと言うと剣道をメインにやってます。家が小さな剣道の道場をやってますんで。」


「道場って、剣道のスクールをやってるって事?」

「そうですね。スクールって言ってしまうと新しい感じがするんですが、かなり古くから続く道場で、多分100年以上やってます。」


 するとそこへゲーリーがトイレから帰ってきた。

「おいおい、俺のいない間に何の話をしてるんだよ。」

「レツゴの先祖がサムライだったって話をしてたんだよ。」


「ヒュー! サムライだって? 俺は知ってるぜ、サムライってすごい剣術を使うんだろ。えーっと何て言ったかな。ワギュウとか何とか…」

「多分、柳生やぎゅうの事ですね。ワギュウは日本の牛肉の事やと思います。」


「そう、それ! レツゴはそれが出来るんだろ?」

「柳生みたいなメジャーなやつでは無いですが、竜神剣という田舎道場の剣術です。」


「竜神剣だって?」

 竜神という名前に反応してつい声が大きくなってしまい、二人が驚いてこちらを見ている。


「何だよリュウ、竜神剣とやらを知ってるのか?」

「いや、初めて聞いたんだが…、ちょっと興味があって声が大きくなってしまったよ。…すまない。」


「何だよ、リュウは剣術に興味があったのか? だったらちょうど良いじゃないか。レツゴ、リュウに剣術教えてやれよ。」

「はあ、簡単な手ほどきくらいなら良いですよ。」


 そうして俺は、翌日からニューヨークの剣道場で仕事帰りにレツゴから剣術を教えてもらう事になったのだった。


………


 その後、歓迎会はお開きとなり、俺はゴードン工房に行くと、エドガーを中心に新しいゴーレムの製作が進んでいた。


「おおリュウか、遅かったな。」

 さっそくゴードンが出迎えてくれる。

 ディエゴ達は、新しいゴーレム作りの作業に忙しそうだ。


「どうだ、だいぶ進んだじゃろ。昼間エドガーとサラ君で風魔法を組み込んだ設計をしたんじゃが、今は以前のゴーレムを分解して新しいゴーレムに改造中じゃ。」

「さすがエドガーとサラだ。もうすぐ出来そうですね。ところで、そのエドガーとサラの姿が見えませんが。」


「ああ、サラ君が何でも異世界に知り合いが居たとかで、顔を変えてほしいとか言い出してな。セバスやディエゴが止めたんだが、今は3Dプリンターでの整形も終わって、オペ室で最後の仕上げをしとるところじゃ。」

 ああ、メアリーの事だな。まあ、今のままではメアリーの前に出た時に困るからな、しょうがないか。


 ゴードンとそんな話をしていたら、オペ室の扉がガチャリと音を立てて開き、エドガーやニキが白衣を着て出てきた。

「ふぅ〜終わった、終わった。」

「さすがにこれだけ数をこなすと、かなり早くなってきたね。」


 エドガーやニキのその後ろには、髪が青く日焼けした少年のような少女が続いて歩いている。

「えっと、エドガー達の後ろにいるその子はもしかして…。」


「ああ、リュウお帰り。こちらサラさんよ。」

 やっぱりというか、ニキから紹介された子がサラだった。


「リュウ様、メアリーにバレないように顔を変えました。いかがでしょうか?」

 サラは、目がブルーアイから鳶色の瞳になり、栗毛の髪が青い髪になっていて、肌の色も以前は透き通るように白かったが、今は日焼けした小麦色の肌になっていた。

 

「ああ、これで冒険者の服装をしたら、冒険者の少女に見えるだろう。メアリーにも気付かれないと思うよ。」

 俺がそう言うと、セバスやディエゴ達が集まってきて、明らかに残念そうな顔をしている。


「サラお嬢様にこんな冒険者のような姿をさせるなど、死んだ旦那様に顔向けできません。」

「セバス、そう言うなよ。これはお嬢様が考えてなさった事だ。」

 なげくセバスをディエゴがなだめている。


 セバス達を横目に見て、俺は話題を変える事にした。

「そうだ、それでサラの名前はどうするんだ?」


「それについては、すでに考えています。これから私は冒険者のサシャです。」

「サシャ? それって男の名前なんじゃ…」

「そうです。冒険者なので男の人の名前にしました。皆んなも、これからはサシャと呼び捨てでお願いします。」


 セバスやディエゴ達は、かなり不満そうであったが、サラが反論は認めないという意思を込めた目で見るので、誰からも反論は無かった。


「そうか、それじゃあサシャ、これからよろしくな。」

「これで私もゴーレムから降りれるです。」

 これで、メアリー達の前でゴーレムから降りれないのは、俺だけとなってしまった。


………


 異世界の翌日、ダリル神父達はサターン神教の教会に集まっていた。


「あの黒いゴーレムも、搭乗していた連中もどこにも見当たりません。」

 一人の神父がダリル神父にディエゴ達がいなくなった事を報告している。


「そんなバカな! リオの港には船は一隻も無いし、夜中に魔境に行くはずがない。この街のどこかにいるはずだ。」

 他の神父が声を上げるが、街を捜索していた神父は顔を伏せるばかりだ。


「仕方ありませんね。あの黒いゴーレムに乗っていた連中の捜索は続けてお願いします。」

 ダリル神父が助け舟を出すと、追求されていた神父はホッとした表情を見せた。


「しかし、奴らの動きが分からないとなると、うかつには動けませんね。皆さん、我々が逆に見張られている可能性がありますので、各自の言動にはくれぐれも注意してください。」

 ダリル神父の注意に、その場にいた五人の神父が頷くのだった。


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