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67 勝利の宴と新しい力

 リオの街を地龍アースドラゴンの群れから救った俺達は、スミス男爵達から熱狂的な歓迎で迎えられた。

 ただ、メアリー達に顔を見せられないサラと俺は、出来るだけサラ達から離れた場所でゴーレムを降りると、後はディエゴ達に任せて人混みにまぎれた。


 サラは送還リターンし、俺はセバスと入れ替わるべく整備場に行くと、都合の良い事にセバスが一人ポツンと整備場の掃除をしていた。


「セバス! 一人だったんだな。ちょうど良かったよ。」

「これはリュウ様。もうあちらは大丈夫ですか?」

「ああ、皆んなの働きのお陰で、地龍の群れは魔境に追い返した。それで、こっちは大丈夫だったか?」

「はい、問題ありません。私とリュウ様が入れ替わっていると疑ってる者はおりません。」


 俺は、セバスの働きをねぎらうと、ニューヨークに送還した。

 そのタイミングでニキが肩を落として整備場に戻ってきた。


「ニキ、何か久しぶりだな。えっと、どうしたんだ? 何か元気が無いようだが。」

 俺がそう言うと、ニキが疑わしげに俺の顔を見て、ため息を吐いた。


「はぁ〜、リュウか。いつものリュウに戻ったようだな、良かったよ。」

「おい、どうしたんだよ。ニキらしくないぜ、元気出せよ。」


 俺がそう言うと、ニキは元気の無い理由を話し出した。

 どうやら、地龍の幼体ようたいを気に入って飼いたかったが、親龍に返さざるを得なかったようだ。

 そう言えば、地龍の幼体を「クーちゃん」とか呼んでたな。


「あ〜、ニキのお母さんはニキが子供の頃に亡くなったんだよな。」

「…。」


「子供は、いつだって親と一緒にいたいもんだろ?」

「…。」


「もうニキは、クーちゃんにとって何が大切か分かってるよな?」

 ニキは頷く。


「それにさ、ニキがクーちゃんを可愛がったから、地龍達にもそれが伝わって、大人しく魔境に引き上げたんじゃないかな。そう考えたら、今回の影の功労者はニキだぜ!」

「ヘッ、リュウはなかなか分かってるじゃないか。そうだ、今から領主の館で宴会するらしいから行こうぜ。」


「その意気だぜニキ。主役がいなきゃパーティは始まらないからな。」

 そうして俺達は領主の館に向かうのだった。


………


 領主の館では、リオの街に残った人々や獣人達が大勢詰めかけ、先程までの戦闘の興奮冷めやらぬ様子で宴会の開始を待っている。

 スミス男爵がワインを満たした杯を手に持ち、壇上に立った。


「リオの街の危機は去った。一時は、城門も壊され、警備隊のゴーレムも破壊された。しかし、どこの誰かは分からんが、リオをおとしいれようとしても俺達は負けん! 勝ったのは俺たちだ!」

 集まった人々からも「そうだー!」という声が上がる。


「そして、この勝利を引き寄せたのは、冒険者のニューヨーク・ドラゴンズの皆んなと、保安官のメアリー殿達だ。リオの街を代表してお礼を言いたい。ありがとう!」

 会場は大歓声に包まれた。


「それでは、この勝利を皆んなで分かち合おう! 乾杯!」

「乾杯!」


 それからは、メアリー達やディエゴ達を囲んでの大宴会となった。

 ディエゴ達も久しぶりの酒に上機嫌の様子であったが、しばらくすると俺を宴会場の外に呼んで人目を避けて話しかけてくる。


「なんだよ、パーティの主役がこんな場所に来て?」

「リュウ殿、できれば早くパーティを抜け出してニューヨークに帰りたい。」


「何だって?」

「サラお嬢様を置いて、俺達だけパーティを楽しむなんてできない。」


 なるほど、酔っているように見えて意外にまじめな奴だ。

「分かった。でも、このパーティが終わるまではダメだな。ここで皆んないなくなると、不自然だから我慢してくれ。」

「そうか…。しょうがない、パーティが終わったらニューヨークに送還してくれ。」


 ディエゴはそう言うと、また宴会場に戻って行った。


………


 リオの街のサターン神教の中では、ダリル神父と五人の神父が集まっていた。


「いま一歩のところで、あの黒いゴーレム達にやられましたな。」

 一人の神父がダリル神父に言うと、ダリル神父も頷いて口を開く。

「早急にあの黒いゴーレムに乗っている奴らの素性を調べる必要があるようですね。何か情報は?」


「奴ら、ニューヨーク・ドラゴンズとかいう冒険者のチームらしいですが、あんな強力なゴーレムの冒険者など聞いたことがありません。」

 すかさずほかの神父が説明する。


「うむ、まるで軍隊のゴーレムのようですね。特に最後に私のゴーレムの右腕を破壊した攻撃は、どういう攻撃だったかも分からない。謎が多すぎます。」


「まさか、保安官達を守るサマル王国の兵士では?」

「しかし、これまでそんな報告はされてない。」

「ブルーノ保安官などの報告など当てにならん。」


「黒いゴーレムがサマル王国の軍隊のものという可能性も含めて確認する必要があるでしょう。奴らの動きから目を離さないように。」

 神父達が言い争いを始めたので、ダリル神父が話をまとめると、その他の神父達が頷き教会を出て行った。


………


 俺は領主の館での宴会が終わると、それぞれ宿に帰るタイミングをみてディエゴ達を送還した。

 そして、今夜も領主の館で宿泊することになり眠りにつくと、ニューヨークの朝が始まった。


 今日は警察の仕事なんだが夕べの事が気になって、朝のうちにゴードン工房に顔を出す事にした。


「皆んなおはよう!」


『ゴォ〜〜〜! ゴォ〜〜〜!』


 ディエゴ達が両手を前に突き出して、風を起こしている。


「えっと〜、何してるの? ていうか、それ風魔法だよね?」

「おはようございます、リュウ様。風魔法が使えるようになったので、工房の匂いを排気しているところです。」


 そういえば、リオの街の城門前の広場で嗅いだアロマオイルの匂いがかすかにしている。

「もう、あの匂いはこりごりだからな。」

 ディエゴがニヤリとして言う。


 なるほど、あの匂いはやっぱりニキか仕組んだものだったんだな。

 とはいえ、最初はあれで地龍アースドラゴンを撃退できたのだから、文句は言えまい。


「いやいや、それより風魔法の事だよ。何で使えてるの?」

「それはリュウ様が使えるようになったからです。」


 サラが当たり前の事をなぜ聴くのか、という顔で答える。

 俺は慌てて上着もシャツも脱いで、胸のあたりを確認すると、ディエゴ達が「背中、背中」と指差している。


「リュウ様、背中に新しい竜紋りゅうもんが出てるです。」

「背中か、どうりで分からなかったよ。しかし、どうしてサラ達は新しい魔法に気付いたんだ?」


「私達は、いつリュウ様に新しい竜紋が出てもいいように、毎日魔法の確認をしているです。」

 どうやらサラ達は毎日交代で、まだ出てない魔法を唱えて確認していたようだ。ありがとう。


「しまった、仕事に遅れる。皆んないろいろ助かったよ。ありがとう!」

 俺はそう言うと、今日の仕事に向かった。


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