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65 群れとチームの攻防

 ・・・ニキ視点へ・・・


 リオの整備場では、警備隊のゴーレムの修理が夜通し行われていた。

 全体の指揮をリオの整備場の責任者であるトビーが行い、俺もリュウも大忙しである。


 そこへ、城門の方へ行っていた複数の警備隊員が台車に白い魔獣を乗せてやって来た。

「ここにリュウ殿はいないか!」

 台車の上の魔獣は、元は白い毛に覆われていたようであるが、今や血で真っ赤に染まっている。


「はい、何でしょうか?」

 リュウが作業の手を止めて返事をすると、警備隊員達が台車を押しながらリュウのとこへ駆けてきた。


「リュウ殿、頼む! この魔獣に回復魔法をかけてくれ! 絶対に死なせてはならんのだ。」

 いったい何の魔獣か分からないが、警備隊員の慌てている様子を見ると、この魔獣が大切な何かなのだろう。


 リュウがチラリとこちらを見てきたので、俺が頷いてやると、リュウは右手に魔石を巻いて魔獣にその手をかざした。


「ヒール!」


 魔獣の傷の辺りが激しく光ると、みるみる血が止まり、魔獣の息が穏やかなものになった。

 どうやら魔獣は一命を取り留めたようだが、相変わらずぐったりしている。


 そこへ遅れてメアリーがやって来た。魔獣が心配だったようだ。

「魔獣はどうなった?」

「リュウが回復魔法をかけて一命を取り留めたようだが、まだぐったりしているよ。なぁ、これなんて魔獣なんだ?」


 メアリーは、魔獣の傷跡を確認しながら、とんでもない事を言い出した。

「これは、地龍アースドラゴンの幼体だ。これを地龍の群れに無事に返せるかどうかで、このリオの街が助かるかどうか決まる。リュウ、よくやった。」


「ええ〜? こ、これが地龍だって?こんなにモフモフでかわいいのに。」


 地龍の幼体は、全身を真っ白いふわふわの毛で覆われていて、大きさは俺より少し小さいが、丸々とした魔獣である。


「ニキ、幼体をお湯で濡らしたタオルで拭いて、きれいにしてくれ。誰か、ヤギの乳を桶一杯もらってきてくれ!」

 メアリーがテキパキと指示を出していく。


 俺は、今だ血だらけの幼体の身体を濡れたタオルで拭いていく。

 幼体は、くすぐったいのか「クワー」と鳴きながら身をよじるので、「ほらほら、動くときれいにならないだろ」とあやしながらきれいに血を拭き取っていく。


 そのうち桶一杯のヤギの乳が届いたところで、メアリーが水魔法で乳を温めて地龍の幼体にあげると、地龍の幼体は「クワー」と鳴きながら、桶を抱えて美味しそうに飲みだした。


 ぺたんと尻をついた地龍の幼体が、桶を両手で抱えてヤギの乳を飲んでいる姿は、ふわふわでコロコロで、一言で言えばかわいい。


 俺は地龍の幼体の頭や背中をなでながら「そんなに慌てて飲まなくてもいいんだぜ。お前はかわいいなぁ。」と言うと、桶から顔を上げて「クワー!」と嬉しそうに鳴く。


 さらに「なんならうちの子になるか?」と聴いてみたら、やっぱり「クワー!」と鳴く。

 どうにかして、飼えないだろうか。


………


 場面は変わり、ここは城門前の広場を一望できる魔境の横にある岩場の上である。

 すぐ後ろは海が迫っており、普段から誰も近付かない場所となっている。


 霧がかかって見えにくいが、そこには一台の真っ白なゴーレムがいた。

 テッドのゴーレムのように大型のタイプであるが、背中と足には空気の吹出口があり、風魔法にも対応しているようだ。

 そして、そのゴーレムの中にはダリル神父がいた。


「さあ、最高の舞台を作ってあげましたよ。もはや逃げ場はありません。せいぜい足掻いて、みんな死になさい。クックックッ、アーッハッハッハッ!」


………


・・・リュウ視点へ・・・


 俺達は城門前の広場で、全員がゴーレムに乗って円陣を組んでいる。

 リオの街のミゲル警備隊長達やテッド達も一緒にやると言い出したが、まずは俺達に任せてほしいと言って断っている。


 円陣の真ん中にディエゴのゴーレムが立ち、これからハドルを始めるところだ。

 ハドルってのは、アメフトの試合中に行われる作戦会議の事で、ここで情報共有やプレイの指示を行う。


 ディエゴが無線機を使って話し始めた。

「いよいよ俺達の力を見せる時がきた!」

「オウ!」


「相手は地龍の群れだ。こんな強力な敵は本場アメフトでも無いだろう! 普通はちびる。」

 笑い声が起こる。


「だが、勝つのは俺達だ!」

「オウ!」


「リオの街を守れるのは俺達だけなんだ!」

「オウ!」


「今は、全員でディフェンスだ。セバスが治療をしてる地龍の幼体が来るまで持ちこたえるぞ!」

「オウ!」


「さあ行くぞー! ニューヨーク・ドラゴンズ!」

「オーウ!」


 そうして俺達は、広場の真ん中辺りで横に広がった。

 地龍達は、広場に立ち並ぶ杭が邪魔なのか、何かを待っているのか、ウロウロしているばかりで、なかなか前に出てこない。


 俺達は、杭を避けながらジリジリと地龍に近付いていく。

 すると、魔境からひときわ大きな地龍がのっそり出てきた。


「地龍のボスだ!」

「ゴーーーアーーー!」

 ディエゴが叫ぶと同時に地龍のボスが咆哮ほうこうを上げた。


「ゴーーーアーーー!」

「ゴーーーアーーー!」

「ゴーーーアーーー!」


 他の地龍も一斉に咆哮を上げて、いよいよ広場に進みだした。

 どうやら地龍のボスを待っていたらしい。

 俺達のゴーレムも盾を前にして地龍と激突する。


『ドゴーン!』


 地龍は杭が邪魔な上、俺達のゴーレムが盾で押し返すものだから、なかなか前に進めずもがいている。


 もちろん杭は地龍によって徐々に破壊されていくが、ディエゴ達ゴーレムの持つ巨大なハンマーによって、また新たに作られる。


「そうらよ!」

『ドン、ドン、ドン!』


 そうして、地龍達は魔境からなかなか広場に出れずに、俺達のゴーレムと押し合いをしている状況となった。

 とりあえず、最初の地龍の攻撃(ファーストダウン)は俺達の勝ちだな。


「ゴーーーアーーー!」

 地龍のボスが咆哮を上げる。


 地龍達が、ニ〜三頭でかたまって攻めだした。

 こちらも三台のゴーレムで対応するが、地龍に押し負けている。


「あのボスは、群れに指示を出してるぞ! 群れも統率された動きをしていてヤバい。」

「リュウ様、私がボスを撃ちましょうか?」

 俺が無線で言うと、サラが物騒な事を言い出して対戦車ライフルを地龍のボスに向けた。


「サラお嬢様、ボスを撃つのは待ってください。まだやれてます。」

「しかし、このままではジリ貧なのです。」


「仕方ない。いったん広場の真ん中まで引くぞ!」

 ディエゴの指示で、俺達は広場の真ん中までゴーレムを移動した。


 俺達は、城門から魔境までの500メートル程の広場の全部に杭を作ったのではなく、真ん中に100メートル程の空き地を作ってある。

 ここを越えられたら、押し返すなどと悠長な事は言ってられず、全力で地龍を倒しにいかなくてはならない。


 地龍達は、魔境側の杭を一つずつ押し倒しながら、ゆっくり進んでくる。

 どうやら突進のために助走をつけられる場所を確保しているようだ。

 なお、地龍のボスは、相変わらず群れの一番後ろにいて、地龍達の指示に徹するようだ。


 そこにメアリー達がやってきた。

「地龍の幼体を連れてきたぞー!」


 そこには、ジャイアントパンダくらいの大きさの真っ白い地龍の幼体がいた。

 なぜかニキが幼体にしがみついている。


「クーちゃんは、俺が飼うんだ〜!」

「クワー!」


 ニキはいったい何をしてるんだ? いつの間にか名前も付けてるし。

 あ、ニキがセバスとメアリーに引き離された。

 俺は気を取り直して、無線で指示を出す。


「とりあえず地龍の幼体が戻ってきた。ディエゴ、マーティンを呼んでくれ。」

「分かった。いよいよ作戦開始だな!」


 さあ、今度は俺達の攻撃オフェンスだ。


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