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57 港町リオヘ

 俺達が海賊船を撃退した日の夜、パイシースの街のサターン神教の教会の部屋では、二人の男が向かい合って座っていた。

 一人はブルーノ保安官で、もう一人は堂々とした体格であるが、黒い神父の服に身を包んでいる白人の男である。


「…すると突然、海の中から幽霊船が出てきたんだ! 危うく海賊船もろとも海に沈んでしまうところだった。」


「…それで、商船の方はどうなったのですか?」

「分からん。多分、幽霊船のスケルトンに捕らえられて、全員死んだと思うが…。」


「もし商船が無事だとすると、あなたの話はウソになりますが。」

「ウソなもんか! 何なら海賊のロドリゴを呼んで聴いてみればいい。」


 神父は、ため息をつくと頭を左右に振って話を続ける。

「いずれにせよ、私は確認のためにリオの街に行きます。ブルーノ保安官は、伯爵にこの事を説明しに行ってください。」


「俺に一人で伯爵の下に行けと言うのか? 何の成果も無いのに、伯爵の機嫌を損ねたら…」

「消されるでしょうね。クックックッ、せいぜい上手く説明する事ですね。」


 神父はそう言うと立ち上がり、教会のステンドグラスがはめられた窓を見上げてつぶやいた。

「今度は私の番ですね。リオの街を地獄に変えてあげますから、待っててください。」


………


「リオの港が見えてきたぞー!」


 俺達を乗せたパオロ商会の商船が、ようやくリオの港へ到着した。

 リオの港町は、白を基調とした美しい街並みが広がり、港には多くの帆船が停泊していた。

 その中に、ひときわ大きな帆船が見える。


「マリオ、あの帆船は特別大きいな。どこかの大きな商会の物なのか?」

「ああ、あれはリオの領主のアーサー・スミス男爵の持ち船だな。リオでは一番の帆船だ。」


 俺とマリオがひときわ大きな帆船を指差して話していると、メアリーが話に加わってきた。

「ほう、あれがスミス男爵の船か。噂には聞いたことがあるが、見ると聞くとでは大違いね。」


「メアリーは、スミス男爵とは面識があるのか?」

「ええ、王都で何度か会ったことがあるわ。魔境に囲まれたリオの街を守っていて、住民からも慕われる人格者よ。」


 俺達がそんな話をしていると、パオロ商会の商船はリオの港に無事到着した。


「さあ到着だ。みんな長旅お疲れ様。」

「マリオ、ありがとう! こんな危険な航海を引き受けてくれて、本当に感謝しているわ。」

「君達を無事にリオに届ける事ができて、ホッとしているよ。それに礼には及ばない。俺達が受けた恩を考えれば、むしろ感謝すべきだからな。」


 俺達は、それぞれマリオや獣人達と握手やハグをして別れを惜しんだ。

 マリオ達は積荷を下ろすと、新たな荷物を載せてパイシースの港へトンボ帰りするらしい。


「さて、これからどうするかな?」

 港の桟橋からもう一度マリオ達に手を振った後、俺は今後の予定についてメアリーに尋ねた。


「まずは、スミス男爵に挨拶するわ。それから宿屋を見つけて、今日は羽を伸ばしましょう。」

「さんせーい! 美味しいもの食べて、今日こそは揺れないところでゆっくり寝た〜い。」


 ニキは、初めての航海が散々なものとなって、しばらくぐったりしていたが、ようやく海から解放されて少しは元気が出てきたようだ。

 そして俺達は、全員でスミス男爵にあいさつに行くことになった。


………


「久しぶりだね、メアリー殿。お元気そうで何より。」

「こちらこそご無沙汰しております、スミス男爵。本日は突然の訪問にもかかわらず、お時間をいただきありがとうございます。」


 俺達は、全員でリオの領主の館に行き、スミス男爵と会うことができた。

 それぞれ自己紹介を済ませると、紅茶が運ばれてきて、ここまでの旅の話となった。

 もちろんメアリーとスミス男爵の会話を横で聞いているだけだが。


「何と、幽霊船に助けられたと? それは本当かい?」

「ええ、ここの海は魔物にとって神聖な場所だとか何とか言っていました。」


「うーん、にわかには信じられんが、その場所を後で詳しく教えてくれ。今後は、その辺りに近付かないように伝えよう。」

 ああ、だんだん大ごとになっていく。全部ディエゴ達と仕組んだデタラメなのに。


「まあ、いずれにしても無事にここまで辿り着けたのは良かった。もうここはサマル王国だ。もうカサンドラの連中も妨害はできないだろう。」

「それで、スミス男爵にお願いがあるのですが、ここから王都へ向かう船を調達出来ないでしょうか?」


「それなら私の船を使うがいい。港に停泊していた大型の帆船を見ただろう? あれなら海賊などには遅れをとらないよ。」

「さすがに、スミス男爵の船を使うのは…」

「なに、遠慮は無用だ。それに、もしメアリー殿に何かあったら、お父様のシュナイダー侯爵にどんな事を言われるか。そっちの方が恐いよ。」

「ふふふ、お父様にもスミス男爵にお世話になった事を伝えておきます。」


 何やら、和やかに話は進み、次の船の手配も終わったようだ。

 ところで、メアリーが侯爵家のお嬢様だとか聞こえたが、かなり高位の家柄いえがらなのではないだろうか?


「あと、獣人達の様子も見ておきたいのですが、獣人達はやはり街の外れに住んでいるのでしょうか?」

「いや、このリオは魔境からの魔獣が侵入しないように城壁で囲っているから、獣人達も壁の内側で暮らしているよ。後で警備隊長のミゲルに案内させよう。」


 その後、俺達はスミス男爵からミゲル警備隊長を紹介され、ミゲル警備隊長にリオの街を案内してもらう事になった。

 ミゲル警備隊長は、年齢は50代中頃だが、がっしりとした体格をしており、いかにも軍人という雰囲気を漂わせていた。


 俺達は、ミゲル警備隊長の案内で、リオの街の魔境に向かって立てられている高さ5メートル程の城壁の上に来ている。


「獣人達には、魔境へ行く冒険者のポーターの他に、警備隊の任務である魔境の監視の手伝いをしてもらっています。」

 ミゲル警備隊長はそう言うと、城門をくぐって魔境に向かう冒険者達や城門の上で監視している獣人達を指差した。


 リオの街では、獣人達もしっかりとした仕事を得て暮らしているようだ。

 俺達が獣人達の様子を見て頷いていると、城門の内側に神父らしき黒い服を着た五人程の一団がこちらを見上げているのが見えた。


 メアリーも神父の一団に気が付いたようでミゲル警備隊長に「あの神父達は?」と聴いている。

 ミゲル警備隊長も「さあ? 初めて見る者たちのようですが。」と言いながら、城門の方に降りていくので、俺達もついて降りる事にした。


 俺達が城門の前まで降りていくと、神父達の先頭にいた堂々とした体格の神父がにこやかに近付いてきた。まるでローマ時代の彫刻を思わせるような彫りの深い顔で、金髪の髪を後ろにでつけている。


「私はサターン神教の神父のダリルと申します。ミゲル警備隊長様でしょうか?」

「いかにもミゲルだ。サターン神教の神父との事だが、何用があってここに?」


「私達はサターン神教の布教の為に各地を旅して回っている者です。本日リオの街に到着したのですが、この街の教会の神父にミゲル警備隊長の話を聞いていたので、ご挨拶したいと思ってました。どうぞよろしくお願いします。」


 俺達は、サターン神教と聞いてギョッとした。

 ダリル神父は、終始にこやかで言葉遣いも丁寧であるが、その目は相手を値踏みしているような油断ならないものにも見える。


 するとダリル神父は、こちらに目を向けてきた。

「ミゲル警備隊長様、こちらは?」

「こちらは、サマル王国のメアリー保安官達だ。」


「メアリー保安官様ですか。神父のダリルです。どうぞよろしく。」

「保安官のメアリーです。」


 ダリル神父は、メアリーへのあいさつを済ませると、「それでは、これで」と言いリオの街の方へ歩いて行った。


 そしてメアリー達に声が届かない場所まで離れると、「見つけましたよ。このリオの街ごと消してあげます。」とつぶやくのだった。

 

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